【目次】 

【「よろしかったでしょうか」になぜ違和感?「基礎知識」】

■「よろしかったでしょうか」の意味

「よろしかったでしょうか」は、「よろしいでしょうか」過去形にした表現で、相手に対して「過去の事柄を確認」するときに使います。言葉としては間違いはありません。

例えば、次のような使い方をします。

OK:「(先ほどご注文されたのは)ペペロンチーノでよろしかったでしょうか?」

OK:「ご注文書にあった通りに贈答用にお包みしましたが、よろしかったでしょうか」

この2例は、過去の事柄を改めて確認しようとしているので、過去形の「よろしかったでしょうか」を使っても違和感がありません。

■ここが違和感!

ところが、現在進行形の事柄の確認するときに「よろしかったでしょうか」が使われると、言われた側は違和感を感じてしまいます。

NG:「いらっしゃいませ。2名様でよろしかったでしょうか」

NG:(注文を取りながら)「かしこまりました。ご注文はオムライスふたつでよろしかったでしょうか。」

この場合は、次のように言うのが正解です。

OK:「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか」

OK:(注文を取りながら)「かしこまりました。ご注文はオムライスふたつでございますね」

NHK放送文化研究所は、2002年という早い段階でこの「よろしかったでしょうか」という言葉についての調査を行っています。それによると、全体の半数近くの人が「よろしかったでしょうか」「変な言い方」だと答えているそうです。また、「よろしかったでしょうか」を連発すると、「自分はこう考えているから、それでいいよね」というやや押し付けがましい印象を与えかねない、問題点を指摘しています。

■どうして浸透したのか?

「よろしかったでしょうか」は、「バイト敬語」と呼ばれる独特な言い回しのひとつです。コンビニエンスストアやレストランなど、比較的若い従業員が多いサービス業界での接客時によく使われているようです。過去の事柄を確認をするために正しく使われていた「よろしかったでしょうか」という言い方が、シーンを問わずに使われるようになってしまったと考えられます。

「バイト敬語」にはほかに、「お会計は1000円になります」の「なります」や、「こちらのほうにご記入ください」の「ほう」、「1万円からお預かりします」の「から」などがあります。

■シーンに応じて使い分ける

「よろしいでしょうか」「よろしかったでしょうか」は、状況に合わせて使い分ける必要があります。確認したいのは「現在」のことなのか、「過去」のことなのか、言葉を使う前にちょっと考えるそのひと手間が、大人の語彙力の分かれ目になりそうです。


【ビジネスで使えない「NGシーン例」と「言い換え」表現】】

改めて、「よろしかったでしょうか」のNG例と、正しい「言い換え」表現を見てみましょう。

■1:×「お支払いは現金でよろしかったでしょうか」
   〇「お支払いは現金でよろしいでしょうか」

■2:×「窓側のお席でよろしかったでしょうか」
   〇「窓側のお席でよろしいですか」

■3:×「新しい商品をお持ちしました。こちらでよろしかったでしょうか」
   〇「新しい商品をお持ちしました。こちらでお間違いありませんか」

3つの例は、いずれも現在の事柄を確認しようとしていますね。この場合、「よろしかったでしょうか」は間違いです。「よろしいでしょうか」「よろしいですか」「間違いありませんか」「構いませんか」「差し支えありませんか」などに言い換えましょう。


【ビジネスで使える「OKシーン例」】

過去の事柄や、相手が承知している事柄について確認する場合には、「よろしかったでしょうか」正しい問いかけの敬語です。「よろしかったでしょうか」が使えるシーン例を挙げてみます。

■1:「本日は、13時にお待ち合わせということでよろしかったでしょうか」

■2:「先ほどのご注文は、〇〇でよろしかったでしょうか」

■3:「サンプル品を〇〇様宛て発送しましたが、よろしかったでしょうか」

1や2のようにすでに交わしてある約束や注文内容の確認、3のように終了している行為に問題がないかどうか確認する場合などでは、「よろしかったでしょうか」が使えます。


【「よろしかったでしょうか」と言われたときの「正しい返答」】

■結構です

■構いません

「よろしかったでしょうか」に違和感を覚えても、「はい、結構です」「ええ、構いません」「いいえ、違います」など、通常通りの返答をするのよいでしょう。

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多くの人が違和感を感じるフレーズ「よろしかったでしょうか」を解説してきました。よく聞く表現をなんとなく使ってしまう、惰性で使い回してしまう…ということは誰にでもあることです。でも、ビジネスシーンでは正しい言葉遣いができているかどうかが、相手からの印象を大きく左右します。状況に応じた正しい表現ができるように、“大人の語彙力”を磨いていきましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社) /NHK放送文化研究所 (https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/060.html) :