街なかで見かける注意書きの張り紙や、ビジネスメールや断りの挨拶など、さまざまなシーンで使用されている「ご理解のほどよろしくお願いいたします」。これひとつで、荒波立てず穏やかに収まるイメージがありませんか? 今回はこの重宝なフレーズの、正しい意味や効果的な使い方を見ていきましょう。

【目次】

「ご理解のほど」の「ほど」って?
「ご理解のほど」の「ほど」って?

「ご理解のほどよろしくお願いいたします」の基礎知識

■意味

「理解」は「了解」同様、他人の気持ちや物事の意味などを受け取ることですね。

「ほど」には複数の意味がありますが、「~のほど」という形になると断定を避け、表現を和らげる効果が。相手に何かを依頼する際に使う、かしこまった表現です。ということから「ご理解のほどよろしくお願いいたします」は、理解してほしい、了解してほしいということを柔らかい口調でお願いしているフレーズといえます。

■使い方と漢字表記

口語では、スピーチやアナウンスなどの改まったシーンで使用します。

メールや案内状などの文章で、「御理解の程宜しくお願い致します」という漢字表記を見ることがあります。ひらがなより漢字のほうが改まった印象ですが、「宜しく」は常用漢字ではないので「よろしく」を、このフレーズでの「いたします」は補助動詞なのでひらがなで。「ご(御)理解のほど(程)よろしくお願いいたします」が正解です。


【こんなシーンで使える!「ビジネス例文」5選】

■1:「来週は出張で不在にしております。電話やメールなどの確認・連絡が不十分になることもございますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします」

■2:「平日の12時から13時の間は大変混み合いお待たせする場合もございますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします」

■3:「ただいま多くのご注文をいただいており、発送までのお時間が通常より1週間程度かかる見込みでございます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」

■4:「色味や質感などが現物と少々異なることがございますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」

■5:「このたびはご期待に沿うことができず誠に恐縮ですが、あしからずご理解のほどよろしくお願いいたします」


「目上の人」にも使える「言い換え」表現

理解してもらうことを「ご理解」という尊敬語にして、断定を避ける「〜のほど」を使うことで柔らかい表現に、文末に「いたします」という謙譲語を使うことでより丁寧な印象に仕上げた「ご理解のほどよろしくお願いいたします」。立派な敬語表現ではありますが、少々こちらの事情を押し付けるようなニュアンスも…。相手が目上の場合の使用は、社内の上司程度にとどめたいものです。

取引先や外部の目上の人には、次のように言い換えたり言い足したりして使いましょう。

■文頭にクッション言葉を用いて

・誠に申し訳ございませんが~ ・恐れ入りますが~ 

■「ご理解のほど」を言い換えて

・ご理解いただけますよう ・ご理解賜りますよう 

■「よろしく」に足して

・何卒よろしく ・どうぞよろしく

■「お願いいたします」をもっと丁寧に

・お願い申し上げます ・お願いできますと幸いに存じます


【「返答・返信」「類似表現」もチェック!】

■返答・返信

会話やメールなどでこのフレーズを受け取ったら? 「承知いたしました」や「かしこまりました」という短い言葉で十分ですが、了解・納得したことをすぐに相手に伝えることが重要です。

■類似表現

「ご了承のほどよろしくお願いいたします」は、これから始める段階のことに対し、あらかじめ許しを請う際に。「ご容赦のほどよろしくお願いいたします」は、相手にとって都合が悪いことが起こりえる場合、前もって謝罪する意味で使用します。また、事情を理解して心にとどめておいてほしい場合には、「お含みおきください」というフレーズも効果的です。


「失礼」と思われないために…注意点まとめ

■目上の相手への使用は社内の上司まで

■目上の相手にはクッション言葉を足す

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あらかじめ理解(了解)を求めるシーンで便利に使える「ご理解のほどよろしくお願いいたします」について、ご理解いただけましたでしょうか? 今回は、角を立てずに失礼なく収めたいシーンで活躍するフレーズを学びました。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』南雲社/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :