ビジネスメールや対面での会話でも、資料や計算書、さらには風景にも使われる「ご覧ください」という言葉は、取引先や目上の方にも使える正しい敬語表現です。では「ご覧ください」の敬意をいっそう高めた表現はご存じですか? 本日は「ご覧ください」を使い方がよくわかる例文と、言い換え表現をご紹介します。
【目次】
- 「ご覧ください」を深く理解するための「基礎知識」
- さらに丁重度を高めた「敬語表現」にしたいときは?
- 「ご覧ください」の「使い方」がわかる「例文」3選
- 「ご覧ください」の別の言い方は?「言い換え」「類語」表現
【「ご覧ください」を深く理解するための「基礎知識」】
■「意味」は?
「ご覧ください」は、「見る」の尊敬語である「ご覧」+動詞「くれ」の尊敬語「くださる」から構成された言葉です。「ください」は「くださる」の命令形。つまり、「ご覧ください」は敬語表現である「見てください」を、より丁寧にした正しい敬語表現となります。
■「使い方」は?
「ご覧ください」は正しい敬語表現ですから、上司はもちろん、取引先や目上の方など、幅広い対象に使うことができます。
【さらに丁重度を高めた「敬語表現」にしたいときは?】
■「ご高覧ください」
「ご覧ください」をさらに丁寧な表現にすると「ご高覧ください」となります。でも、行為の対象を立てる(尊敬語)の「ご」と、相手を敬いその人が見ることを表す「高覧」、さらに尊敬語の「くださる」で構成された「ご高覧ください」は、「二重敬語、三重敬語では?」と思う人もいるかもしれませんね。大丈夫! 「ご高覧ください」は二重敬語ではありません。
文化審議会答申「敬語の指針」によれば、「ご(お)〜くださる」という構成は、「ご指導くださる」のように使われる尊敬語の「一般形」に分類されています。そして名詞を尊敬語として扱う際、 「ご高配」「ご尊父(様)」「ご令室(様)」のように、 「ご」と共に「高」「尊」「令」などを加え、尊敬語として使うことが認められているのです。「高覧」はむしろ、「ご高覧」として使われることのほうが多い言葉です。ただし、「ご高覧ください」は多く書き言葉に使用される、改まった尊敬表現です。公式の文書で目上の人に対して使われる言葉であり、同僚や部下など、同等以下の相手に使うのは不適切です。親しい上司に「ご高覧ください」では、慇懃無礼に感じられてしまう場合もありますから、ご注意くださいね。
■NG「ご覧になられる」
「ご覧になる」に用いられた「ご(お)〜になる」という構成は、「ご利用になる」「お出かけになる」のように、このかたちで尊敬語の「一般形」とされています。「ご覧になられる」には、さらに尊敬の助動詞「られる」が使われており、二重敬語となります。同様に「お越しになられる」「お話になられる」「お戻りになられる」なども二重敬語。表現が回りくどくなるだけで敬意自体が高まるわけではありません。すっきりとした美しい言葉遣いを心掛けましょう。
【「ご覧ください」の「使い方」がわかる「例文」3選】
前述の通り、「ご覧ください」の「ください」は、「くださる」の命令形です。正しい敬語表現ではありますが、なかには「上から」あるいは「強制」といったニュアンスを感じる人もいるようです。特に目上の方に対しては、「何卒〜」「どうか」「どうぞ」と添える、あるいは語尾に丁寧の助動詞「ます」の命令形「ませ」を付けて、相手への敬意を表しましょう。
■1:「ただ今お配りした資料をご覧ください」
■2:「サンプルをご用意しました。どうぞお手にとってご覧くださいませ」
■3:「添付の資料をご覧くださいますようお願いいたします」
【「ご覧ください」の別の言い方は?「言い換え」「類語」表現】
「ご覧」は「見ること、眺めること」を意味する言葉です。見積書や資料など、「しっかり見て確認してほしい」もののときは、「ご確認ください」「ご査収ください」など、意図が伝わりやすい言葉に置き換えた方が確実です。「査収」は「よく確認して受け取ってください」という意味の書き言葉です。
■見てください ■ご高覧ください ■ご確認ください ■ご査収ください
■お目通しください
「お目通し」は文字通り「目を通すこと」「ひと通り見ること」という意味です。
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「覧」という語には、特定のものを「意識して見る」というニュアンスのほか、景色など「自然と目に入ってくるものを眺める」という意味も含まれます。「ご覧ください」は柔らかな印象を与える言葉ではありますが、正確性を要求されるビジネスシーンでは、状況に応じた使い分けが必要といえそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/文化審議会答申「敬語の指針」/『敬語マニュアル』(南雲堂) :