同じ読み方をする複数の漢字表記、同じ漢字表記で異なる読み方、同じ意味だが漢字表記は異なる…など、日本語はとても複雑で難しい言語。今回の「目途」もそのひとつかもしれません。漢字を見て正しく意味を理解できるでしょうか? 耳で聞いて瞬時に漢字で書けるでしょうか? 「目途」のあれこれについて、解説していきます。
【目次】
【「目途」の読み方、意味、使い方…基礎知識】
■読み方
「目途」と書いて一般的には「めど」と読みますが、実は「もくと」と音読みしても正解。「もくと」は「めど」より改まった言い方で、「もくと」と読むのは政治家や役所などが多いようです。また、パソコンなどで「めど」と入力すると、「目途」だけでなく「目処」という表記も予測変換されますね。それについては次の「意味」で解説します。
■意味
『デジタル大辞泉』では、【目途/目処】として「目指すところ。目当て。また、物事の見通し」と説明されています。「目処」で調べてもで同じです。『日本国語大辞典』での「目処」は、「目ざすところ。だいたいの見当。めあて。目標」や「近い将来に決着、解決がつく見込み。予定。また、その期限」とあります。「目途」のほうは、「もくと」と読ませて「めあて。目的。めど」。このことから、意味は「目指すところ」「見当」「見込み」などで、表記は「目途」でも「目処」でも構わないことがわかります。間接的で柔らかな表現と捉えることもできるので、取引先などへの連絡に重宝する言葉です。
■使い方
私たちがビジネスで使うなら、スケジュールや時間管理のシーンが多いでしょう。次の例文を参考にしてください。
【今すぐ使える「例文」3選】
■1:「この仕事は明日の午後3時を目途にお願いします」
「目途」を「目標」の意味で使用した例文ですが、この場合は「締め切り」というニュアンスも。「~を目途にお願いします」は、「~までに終えてください」と同義と心得て。
■2:「進捗状況から次のステップへ移行する目途を立てよう」
■3:「車両故障で電車が動かず、お約束に遅れてしまいそうです。運行の目途が立ちましたら改めて連絡いたします」
■2と3の「目途」は、予定や見込みを意味します。「目途を立てる」は、見込みのある目標を立てることです。
■「目途」+「動詞」で…
「目途」は単体で使うより、動詞と組み合わせて使用したほうが使いやすい単語です。下記の例からも、使用シーンがイメージできるのではないでしょうか。
・目途を立てる ・目途が立たない ・目途がつく ・目途がつかない ・目途をつける ・目途にする
【「目途」と「目処」の使い分け】
「目途」も「目処」も基本的に意味は同じで、どちらの漢字を使用しても間違いではない――とはいうものの、「より的確なのはどっち?」と、メールなどでの使用は気になりますよね。あえて使い分けるなら、下記を参考に考えてみてください。
■「目途」=「目標」の場合
「目標」に置き換えられる場合は「目途」と表記する、と覚えておけばわかりやすいですね。
例:来期売り上げの目途を立てる
■「目処」=「見通し」「予定」の場合
「見通し」や「予定」など、実現の可能性や見込みがある場合は「目処」がしっくりきます。
例:作業終了の目処がついた
【「目途/目処」の「類語」「言い換え」】
「目途」も「目処」も、どちらかといえば少々曖昧で柔らかな表現です。取引先に「いつまでに!」と強く言いたくないときなどに重宝しますが、相手に間違いなく伝えたい場合には、下記の単語に言い換えるほうが適切な場合も。
■目標 ■予定 ■見込み ■見当 ■目安 ■締め切り ■まで
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「目途」も「目処」も、ビジネスシーンではよく使用する言葉です。ちょっと言いにくいシーンなどでも使われますが、さまざまに言い換えながら使用して“大人の語彙力”を高めてくださいね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『現代用語の基礎知識』自由国民社/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :