スポーツやエンターテインメントへの賞賛の言葉として多く用いられる「圧巻」という言葉。ビジネスシーンでは得意先へのプレゼンなど、なんらかのパフォーマンスを含んだ行為に対しても使われます。厳密な意味はわからなくても、なんとなく「素晴らしい!」という褒め言葉のつもりで使っている人も多いのでは? 今回は「圧巻」の詳しい意味と使い方を解説。言葉の意味を正しく理解すれば、褒める場面も褒められる場面も、自信をもって対応できますよ!

【目次】

「全体でもっとも優れた部分」を表す故事成語です。
「全体でもっとも優れた部分」を表す故事成語です。

【「意味」「読み方」は?「圧巻」を深く理解するための「基礎知識」】 

■「読み方」 は?

「圧巻」は「あっかん」と読みます。

■「圧巻」の「由来」は「故事」にあった!

「圧巻」の「巻」は、中国の「科挙」の答案を指します。「科挙」とは隋・唐の時代から、清末の1905年まで、約1300年間にわたり行われた官吏登用試験です。漢字の「圧」には「崩す」「上から押さえる」のほかに「相手より勝る」という意味もあります。科挙の合格者のうち、最優秀者の答案をほかの答案の上に乗せたところから、「圧巻」という言葉が生まれました。遙か昔のことでありながら、現在でも由来がはっきりしている事件、事項、主に中国の古典にある逸話を指して「故事」といいます。つまり「圧巻」の由来は「故事」。「圧巻」は「故事成語」です。

■「圧巻」の「意味」は?褒め言葉なの?

上記の故事から、「書物の中でいちばん優れた箇所。ほかを圧倒するほど優れた詩文」や「全体の中でもっとも優れた部分」を「圧巻」というようになりました。そして、「圧巻」は褒め言葉です。「君の○○、圧巻だったよ!」と言われたら、喜んでいいのです!


【「圧巻」の理解を深める「例文」4選】 

上記で説明した通り、「圧巻」は「全体の中でもっとも優れた部分」を指す言葉です。ビジネスシーンよりも、どちらかといえばスポーツや演劇、映画などのパフォーマンスに対して使われることが多いかもしれません。

■1:「君の企画書、後半の費用対効果について解説した部分、圧巻だったよ」

■2:「白熱した試合でしたね。特に勝負を決めたPK選は圧巻でした」

例文1、2のように、本来は「全体を通して特に秀逸だった点」についての褒め言葉でした。ただし現在では「圧巻の演技」「圧巻の景色」「圧巻のプレイ」など、「これまで経験した中でもっとも素晴らしい」「飛び抜けて素晴らしい」といったニュアンスで用いられることも多いようです。

■3:「全日本での○○選手の演技は圧巻のパフォーマンスだった」

■NG:「プレゼンでは彼の迫力に圧巻された」

「圧巻」は名詞ですが、「圧巻された」「圧巻する」などの用い方はできません。「圧倒」は「際だって優れた力をもっていること」と、「力を見せつけてほかを恐れさせること」という意味があります。しかし、「圧巻」にはこのような「威圧」のニュアンスはありません。例文のように、「圧倒された」と混同している人もいるようなので、注意してくださいね。


【似た意味をもつ「類語」「言い換え」表現は?】  

■見どころ ■山場 ■ハイライト ■見せどころ

上記の類語は、映画や舞台などエンターテイメントにおいて、「全体でもっとも優れた部分」を表す言葉です。「見どころ」と「見せどころ」の違いは、「見どころ」が「特に見る価値のあるところ」であるのに対し、「見せどころ」は「人に見せたい得意なところ」という意味です。

■出色(しゅっしょく)

「出色」は、「ほかより特に優れていること。際立って見えること」。多くは「出色の出来」として使われます。

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「圧巻」は、「全体でもっとも優れた部分」「これまで経験した中でもっとも素晴らしい」「飛び抜けて素晴らしい」など、なんらかの比較対象を念頭においた褒め言葉です。ちなみに「ダントツ」は「断然トップ」の略だって、ご存じでしたか? 知ってるようで知らない単語って、たくさんありますよね。これからも一緒に学んでいきましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) :