仕事相手から送られてきた資料について「お届けくださいました資料、確認いたしました」や、上司からの頼まれ事に「先ほどの件、確認いたしました」など、ビジネスシーンで使う頻度が高い「確認いたしました」。丁寧で感じのいいフレーズですが、本来の意味とは異なるケースで使っていませんか? 今回はこの「確認いたしました」について、改めて確認しましょう。

【目次】

「確認いたしました」より「確認させていただきました」を用いるべき?
「確認いたしました」より「確認させていただきました」を用いるべき?

「確認いたしました」は「できました」の敬語?基礎知識】  

■「確認いたしました」ってどんなフレーズ?…意味

「確認」は、漢字が示すとおり「確かに、はっきり認めること」。「いたしました」は、補助動詞「する」の謙譲語「いたす」と、丁寧語の「ました」による語です。要するに「確認した」ことの敬語表現なのです。「できる」と「確認する」は似ているようで異なる言葉なので、「確認いたしました」は「できました」の敬語とはいえません。指示された仕事ができ上がった際に上司に「できました」と言うのは、社会人としては拙く、また上司への敬意も足りないように感じるかもしれませんね。そんな場合には「完了いたしました」や「終了いたしました」などを用いては?

■「確認いたしました」は部下にも?…使い方

へりくだることで相手への敬意を表す謙譲表現なので、自分と同等以下の人には使用しません。ビジネスシーンなら上司や取引先など、目上の相手に使います。

■「確認いたしました」「確認致しました」どっちが正解?…表記

「私がやりました(しました)」という意味では「私が致しました」と漢字表記も用いますが、「確認いたしました」の場合の「いたしました」は、「確認」に付く補助動詞。それ単体では意味をもたないため、ひらがな表記が正解です。「いたしました」は、「(するの)意味をもつ場合は漢字もOK」「補助動詞として用いられる場合はひらがな表記」と覚えましょう。


「使い方」がひと目でわかる「そのまま使える例文」3選

■1:「ご提案いただきましたプランについて確認いたしました。部内で検討を重ねたく、1週間ほどお時間を頂けますでしょうか」

■2:「スケジュールを確認いたしましたが、あいにく今週は時間をつくることができません」

■3:「納品された商品を確認いたしました。問題ありませんので、予定どおり週末から販売を開始します」

1と2は社外の人へ、3は上司など社内の目上の人への例文です。社外の人には「確認させていただきました」のほうがより丁寧な敬語表現ではないか、と思われるでしょうか? 「~させていただく」という表現についてはこの連載でもたびたび取り上げていますが、基本的にはこれは相手の許可が必要な事柄について用いる敬語。提案されたプランの確認や、時間調整のためのスケジュール確認などはそれに相当しないので、一般的なビジネスシーンでの最上級敬語としても「確認いたしました」が最適なのです。


【語彙力アップのための「言い換え」表現

“大人の語彙力”とは、相手や状況にフィットする言い回しやフレーズを用いること。「確認いたしました」の言い換えも確認しておきましょう。

・拝見いたしました 資料などを確認した、見とめた、という意味。「確認いたしました」に近いケースに。

・拝読いたしました 「拝見」より「拝読」のほうが、より確認度が高い表現。内容を詳細に確認したり、読み込んだりした際には「拝読」を使ったほうが、相手に安心感や好印象を与えるでしょう。

・拝受いたしました 「確かに受け取りました」という意味。内容を確認したかどうかは「拝受しました」だけでは読み取れません。

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メールでも会話でも使うことが多い「確認いたしました」ですが、重宝なあまり口癖のようになってはいませんか? 「確認したと言っていたのに、今ごろになって添付ファイルが開かないと連絡してくるとは!」なんてことにならないように、しっかり確認してから使用するようにしてくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』南雲社/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書) :