ビジネスメールで「その旨、上司に伝えます」などと使われる「その旨」。「話の内容や趣旨」を端的に表すことができる便利な表現です。今回は「その旨」の意味に加え、もっと丁寧な表現にする方法や使い方について、例文を挙げてご説明します。
【目次】
【「意味」は?「基礎知識」】
■「その旨」とは「今、話している内容や趣旨」のこと。
「その旨」とは「そのむね」と読みます。「旨」には「文章や話で述べようとしている内容。趣旨」という意味があります。「主旨」「論旨」「要旨」などの熟語に使われ、それぞれ「話の中心となる内容」「話の主要な部分」「話の要点」といった意味で、いずれも「話の内容」に言及した熟語であることがわかります。つまり「その旨」とは、「そのような内容」つまり「今、話していた(話題にしていた)内容」ということになります。
A氏「来週月曜日の打ち合わせですが、14時より弊社1階の会議室でお願いします」
B氏「承知しました。その旨、スタッフに伝えます」
上記のような会話があったら、「その旨」は「打ち合わせがA氏の会社1階の会議室で行われる」ということになります。A氏に対し、B氏が「承知しました。打ち合わせは御社1階の会議室で行われることをスタッフに知らせます」と答えるよりも、言葉の重複もなく、スムーズに会話が進行している印象になりますね。
【「その旨を伝える」を「敬語」にすると?】
「その旨」という言葉自体は敬語ではありませんが、改まった表現であるため、対面でもメールでも、取引先や目上の方に対して使って問題ありません。敬意を高めた表現にしたければ、「その旨」の前後の文章を敬語表現にしましょう。無理に「旨」を敬語表現にしようと、接頭語の「ご」や「お」を付けて「そのご旨」とするのは誤用です。
■「その旨、お伝えいたします」
文法的には「その旨、お伝え申し上げます」でも間違いではありませんが、少々仰々しい印象になりますね。
■「その旨、申し伝えます」
「その旨」を伝えるのが社内など、身内の人間である場合、相手を立てることはしませんので、「申し伝えます」が正しい表現です。
【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」5選】
「その旨」を使った例文をご紹介します。
■1:「宅配便は○月△日午前中着をご希望ですね。その旨、承知いたしました」
■2:「明日の会議は中止となりました。○○部長にその旨、お伝えいただけますか?」
■3:「先日、ご案内状を送らせていただきました。出欠がお決まりになりましたら、その旨、お知らせいただけますと幸いです」
■4:「申し訳ございませんが、今回はご期待に添えない結果となってしまいました。その旨、ご了承くださいませ」
■5:「何かほかにご要望がございましたら、その旨、ご連絡くださいませ」
【「その旨」の「言い換え」表現】
「その旨」は少々改まった表現であるため、もう少しカジュアルな言い方が似合うシーンもありますよね。言い換え表現をご紹介します
■この(その)件について ■今の話の内容
例文をひとつ、言い換えてみましょう。
例文「その旨、承知いたしました」
■言い換え1:「その件について、承知いたしました」
■言い換え2:「今のお話の内容で承知しました」
【「その旨」を英語で言うと?】
■[(to) the effect ]
[effect]には「趣旨」という意味があります。[(to) the effect ]で「その旨」「その趣旨で」という表現になります。
・They answered to the effect that they were ready to reopen negotiations.
→交渉再開に応じる用意がある旨の回答があった。
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「その旨」には、言葉の重複を避け、会話をスマートな印象にする効果があります。ただし、状況次第では、「その旨、承知しました。スタッフに伝えます」ではなく、あえて「打ち合わせの場所は御社1階の会議室、ですね。承知しました。スタッフに知らせます」と、確認を取りつつ話を進めたほうがよいシーンもあるはずです。また、複数の話題が出たあとでは、「その旨」が「どの旨」なのかわかりにくくなり、誤解を生みそうです。臨機応変に使い分けてくださいね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :