【目次】
【「人徳」の「読み方」「意味」など基礎知識】
■「人徳」の「読み方」 は?
「人徳」は「じんとく」と読みます。古風な読み方として辞書には「にんとく」も載っていますが、近年はあまり見かけなくなっています。
■「意味」
「人徳(じんとく)」は「その人が生まれながらに備えている徳や人柄のよさ」という意味の言葉です。
では、「徳」とは何かといえば、「修養によって身に付けた優れた品性や人格」のこと。「徳」のひと文字でも「人徳」と同じような意味をもっています。
「徳」にはほかに、「めぐみ。恩恵。神仏などの加護」という意味や、「富。財産」「生まれつき備わった能力・性質。天性」、さらには「得」という意味もあります。
つまり、「人徳」とは「その人に備わった品性や能力」など、「性格」やそれに伴う「言動」「行動」が優れたものであること。人柄がよく、人望を集める人に対して使われる言葉です。ですから、よいことが起きたときに周囲から「ご人徳ですね」と言われたら、それは最高のほめ言葉。「あなたに備わった品性やお人柄が素晴らしいから、よいことが起こるのですね」と言われているのです。
■「英語」で言うと?
人徳を英語で言うと、[a natural virtue][an inborn virtue]がしっくりきます。たとえば、
「彼女には人徳がある」と英語で言う場合には、She has a natural(an inborn) virtue.となります。
そのほか、やや異なる意味になりますが、[a personal grace(人を惹きつける美点、という意味)][an innate grace(天賦の才、という意味)]などとも表現できるでしょう。
【「人徳」の「使い方」がわかる「例文」5選】
■1:「困難に陥ったとき、いつも自然と周囲から支援の申し出が集まるのは、彼の人徳ゆえに違いない」
■2:「彼は人徳に恵まれているから、困難な局面にはいつも自然と周囲から助けの手が差し伸べられる」
「人徳がある」と同じ意味で、「人徳に恵まれる」という表現もよく使われます。
■3:「このプロジェクトの成功は、ひとえにリーダーの人徳のなせる業だ」
「人徳のなせる業(わざ)」は、「人徳が備わっているからこそ、ある物事を成し遂げられたのだ」という意味で使われます。つまりこの例文では、プロジェクトを成功に導いたリーダーを賞賛しています。
■4:「難しい条件のなかでも、新製品が発売にこぎ着けたのは、彼女の人徳の賜物と言えるるだろう」
「人徳の賜物(たまもの)」という言い方も覚えておきたい表現です。ここでの「賜物」は、「〜のおかげ」という意味合いで使われています。
■5:「ときに突拍子もない話もするが、彼女の人徳でみんなが納得してしまうのです」
これは、小説家で天台宗の尼僧でもあった瀬戸内寂聴さんについて、朝日新聞紙上で語られていた身近な人の言葉です。言いにくいことも一刀両断する寂聴さんの痛快な説法は、悩みをもつ多くの人々に愛されていました。その人気は、まさに人徳によるものだったと振り返っています。
【「人徳」の「類語」「言い換え」表現】
■「有徳」
「有徳(ゆうとく)」とは、「得が備わっていること」「善行が多く、人から慕われること」。「有徳の人」といった使い方をします。
■「器が大きい」
「器が大きい人」とは、「度量の大きい人」「小さなことをいちいち気にしない人」のことです。
■「器量」
「器量」には、「ある役割にふさわしい才能や力量」という意味があります。「大臣としての器量は十分」と言えば、大臣にふさわしい能力が十分に備わっていることを表します。
■「寛容」
「寛容」には「心が広く、人の言動を受け入れること。人の罪や欠点などを厳しく責めないこと」といった意味があります。「寛容の精神をもってあたる」「寛容な態度をとる」のように使われます。
【「人望」や「仁徳」とはどう違う?】
「人徳」に似た言葉として、「人望」や「仁徳」がありますが、意味は少し違います。
■「人望」は「周囲からの人気があること」
「人望(じんぼう)」は、「人々から尊敬され信頼されること」という意味の言葉です。「人望のある人」という使い方をします。人々から尊敬の念をもって慕われているということで、周囲の態度にフォーカスした言葉です。
一方、「人徳」は、「その人が生まれつき徳を持っている」という言葉ですので、その人自身の内面に重きを置いています。言葉の重点が「周囲」にあるか、その人の「内面」にあるか、という違いがあるのですね。
■「仁徳」は「博愛の精神」
「仁徳(じんとく)」は、「弱い者、困っている者に心から援助の手を差し伸べる、博愛の徳」を意味する言葉です。すべての人を平等に愛する「博愛」の心があるということ。「仁」という字は、儒教における最高の徳のことで、常に相手の気持ちや立場を思いやる心を表します。「仁徳」は、「徳」のなかでも特に「弱い人々を助ける博愛の心があること」を表す言葉なのです。
【「人徳のある女性」と言われる人の特徴は?】
ここまで「人徳」の意味や例文、類語をご紹介していきました。では、実際に「人徳」のある女性とはどんな人物なのでしょうか? 大きな特徴を5つご紹介します。
■1:自分にも他人にも誠実である
「人徳」のある女性は、自分にも相手にも誠実な人。自分のなかに善悪の基準がしっかりとあり、正直で誠実な行動を大切にしています。損得勘定をして相手によって態度を変えるようなことは決してなく、誰に対しても誠意をもって接するのが特徴です。
■2:感情が安定している
機嫌がいいときやイライラしているとき、それをそのまま態度に出してしまうような女性は、「人徳」があるとはいえないでしょう。もちろん人間ですから、いろいろな感情が湧き起こります。でも、それを自制して、いつも安定した気持ちと態度を保っていられることは「人徳」には欠かせないことです。
■3:他人への思いやりがある
周囲の人の気持ちを思いやることができるのも「人徳」のある女性の特徴です。自分本位になってしまいそうなピンチの状況でも周りを見渡して、人々に必要な配慮や手助けができる人は、仕事でもプラベートでも尊敬されるものです。
■4:いつも明るい気持ちでいる
「人徳」のある女性は、不平不満やネガティブな感情を周囲にぶつけることがよくない結果につながることをよく理解しています。自分自身が前向きでいること、明るい気持ちと態度で物事に取り組むことで、流れがよい方向に向かうということがわかっているのです。
■5:周囲から信頼され、慕われている
誠実な態度と思いやりをもって接してもらった人は、その人に対して信頼感をもつことがきます。さらに、恩返しをしたい、自分も相手の役に立ちたいと考えるようになるでしょう。そのため、「人徳」のある人の周囲には、自然と多くの人が集まり、お互いが思いやり助け合うことができます。そんなよい循環が生まれることで、健全で素敵な環境ができていくのですね。
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ビジネスシーンで評価の対象となるのは、独創的な企画力やとっさの判断力、リーダーシップなどの有能さ。切れる人物が重用されがちなのは、ある意味当然のことですが、ではその人が窮地に陥ったとき、どれ程の人が救いの手を差し伸べるだろうかと言えば…それは「人徳」によるものが大きいのではないでしょうか? 有能な人が、イコール人望を集める人だとは限りません。もちろん、仕事がデキて人徳もあり、が理想ではありますが、ときには我が身を振り返る、心の余裕を大切にしたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館)/『三省堂国語辞典』(三省堂)/『新明解国語辞典』(三省堂)/『明鏡国語辞典』(大修館書店)/「朝日新聞」(朝日新聞社) :