パリで日曜日に営業するお店が増えた理由
パリジェンヌのファッション業界関係者と雑談していて、「パリは変わる途上にあるよね」という話になりました。パリを見ていると、大きく変化している最中であるのをひしひしと感じます。その変化のひとつが、日曜日に営業する店が増えていること。以前、パリの日曜日といえば、ブティックは完全に休みで、郊外の蚤の市や朝市に行くくらいしか楽しみはなかったものですが、現在は日曜営業する店が目に見えて増えています。
観光客にはうれしい「日曜営業」
滞在日数が限られた観光客にはうれしいはず。とはいえ、規制はされています。いくつかの例外以外は営業を認められていないのです。例外とは、大衆にとって必要であること、レストランや映画館のようにどうしても営業しなくてはならない場合、パリ市によって認められた個人的なそして一時的な例外など。
シャンゼリゼ大通り、マレ地区など、指定された国際的な観光地については日曜営業並びにウィークデーの21〜24時の営業が許可されています。例えば、百貨店の「プランタン」、「ギャルリー・ラファイエット」、「ル・ボン・マルシェ」はどこもこのエリアに入っていますので、日曜営業しております。昨年オープンしたばかりの「メゾン ルイ・ヴィトン ヴァンドーム」も同様です。
「ル・ボン・マルシェ」の食品館である「ラ・グランド・エピスリー・ド・パリ」は昨年、16区に2号店をオープンしましたが、1号店がある7区は観光エリアに入っているので日曜営業していますが、16区は入っていないので2号店は日曜営業していない、という具合です。
解決しない「日曜営業」の問題点
しかし、日曜営業する場合は、給料において従業員にその分の代償を払う(つまり給料上乗せをする)、ベビーシッターの料金を払うなど、雇用者と従業員の間で、仕事と私生活の折り合いをつける措置をしなくてはならないとされています。いくら上乗せするかに関して、○パーセント上乗せしなくてはならないなど国も市も指定しておらず、労働者側と雇用者との話し合いとなっております。大企業になると、労働組合と雇用者側の同意が必要です。日本に比べて労働者が強く守られていますよね。さすがフランス革命を起こして国家を転覆させただけのことはあります。
フランス人にとってはどうでしょうか。日曜営業に関して、「確かに、以前日曜は“家族の日”だったわけだけど、フランスだって変わるわ。今女性たちは昔より自由になっているから日曜にショッピングしたりする。日曜営業に全然問題はない」と、国際観光地に指定されているマレ地区に店を持つオーナー。働いている場合、土曜日しかお買い物できる日がなかったわけですが、いまでは日曜日に落ち着いてお買い物が楽しめるようになったので実際に日曜営業のお店は盛況です。しかし、それは店がある場所にもよります。同じマレでも日曜に人通りが少ない通りに店をもつ別のオーナーは、「店を開けるメリットがないから」と開けません。また、一方で、道1本の違いで日曜営業が認められない店は不公平感をもっています。
日曜営業拡大の立役者はエマニュエル・マクロン大統領です。彼が経済相だった2015年に、日曜・深夜営業の規制緩和を含む通称「マクロン法」を成立させ、また、労働市場改革は大統領選での公約の柱でもありました。
フランスの将来を考えると、労働市場を活性化させるのは不可欠と考えるのがロジックだと思いますし、日曜営業のエリアは徐々に拡大していくのではないでしょうか。
2030年にはフランスのGDPは現在の世界6位から10位に転落すると予想されていて(ちなみに我らが日本はインドに抜かれて4位という予想)、そのうち主要国首脳会議に呼ばれなくなってしまうのではないかという体たらくぶり。ストライキやデモしている場合か! ですが、自他共に認める「働くのがキライな怠け者」である彼らを働かせるのは容易ではありません。
ロスチャイルド銀行の幹部であったビジネスマン出身の政治家・マクロンの手腕にフランスだけではなく世界から注目が集まっています。
- TEXT :
- 安田薫子さん ライター&エディター