ショッピングを楽しむ日の候補として外せない、私たちが大好きなデパート、伊勢丹。そんな伊勢丹の代名詞ともいえる、タータン柄が施されたショッピングバッグは、それ自体が垢抜けた存在感を放ち、持っていてもサマになりますよね。ショッピングバッグとして使い終わった後も、自宅で大切に保管しておいて、誰かにちょっとしたものを渡すときに利用する…なんて方も多いのではないでしょうか。
今回は、「伊勢丹タータン」とも呼ばれ親しまれているタータン柄について、歴史から最新事情までのお話を、三越伊勢丹の宣伝部に伺いました。前編となる今回は、伊勢丹タータンの変遷についてご紹介します。
■ 始まりは60年前のティーンエイジャーショップから
伊勢丹タータンの原点は、1956年に伊勢丹新宿店にオープンしたティーンエイジャーショップ。当時は中学生・高校生の女の子たち、いわゆる「ティーン」が買い物できる既製服店がなかった現状があったのだそう。そこにいち早く目をつけた伊勢丹が、ティーンにターゲットを絞った売り場をスタート。
売り場で展開されたタータン柄のスカートやマフラーが大人気となり、オープンから2年後の1958年、同柄のショッピングバッグを導入することになりました。このときショッピングバッグに起用されたタータン柄は「洋服としては派手でなかなか売れないであろう」と判断された最も目立つ「マクラミン/アンシェント」だったというのもおもしろいエピソード。
当初は伊勢丹全体ではなく、この伊勢丹新宿店のティーンエイジャーショップ専用のショッピングバッグとして使用されました。これが伊勢丹タータンのショピングバッグの始まりです。
■ ショッピングバッグ自体がステイタスに
ティーンエイジャーショップで導入されたショッピングバッグは、またたく間に人気を博します。
そもそも当時、アメリカでは当たり前に使われていた持ち手付きのショッピングバッグ自体が、まだ日本では使われていなかったそう。ショッピングバッグ自体が注目されたことやタータンチェックが大流行していたこと、ファッションの最先端を発信する伊勢丹がそれをつくったこともあいまって、誰もが持ち歩きたくなる憧れのファッションアイテムとしてのバッグになったのです。
そしてその人気をうけ、2年後の1958年ごろから伊勢丹全館で使用されるようになりました。1968年には「男の新館」がオープンするにあたり、タータン柄の中で一番人気があり、ベストセラーとなっていた「ブラックウォッチ」柄のショッピングバッグの使用が開始。
世間へ拡散したもうひとつの理由には、当時ターゲットとしていた東京の山の手に住む良家の子女にファッションとして受け入れられたこともあります。彼女たちはサブバッグとしてランチボックスを入れて学校に通ったり、ショッピングバッグの紙を使ってブックカバーを作ったりとそれぞれ工夫して使っていたのだそう。
そして、これらの伊勢丹のショッピングバッグ自体を目当てに、遠方より買い物にくる人が続出するほど人気になりました。さらにはバッグを持ち歩くこと自体がステイタスとなり、「伊勢丹といえばタータン柄」を連想されるほどシンボルにまで発展。紙袋にプリントされた「ISETAN」のロゴは時代によって変化しますが、「マクラミン/アンシェント」と「ブラックウォッチ」、ふたつの柄は約50年に渡って使用され続けました。
■ スコットランドの「タータン・アワード」を受賞
こうして多くの人に愛され続けてきた、伊勢丹の象徴ともいえるタータン。2012年11月には、スコットランド・タータン協会より、長年にわたり日本におけるタータンのプロモーションに貢献したとして、タータン・アワード全6部門のうち、「Best use of tartan in packaging(パッケージ部門)」を世界で初めて受賞しました。
■ 新生「伊勢丹タータン」の誕生!
タータン・アワードでの受賞を機に、伊勢丹のオリジナルのタータンを考案するにいたりました。2013年、伊勢丹で使われ続けていたタータン柄「マクラミン/アンシェント」がリニューアル。オリジナルの「マクラミン/イセタン」が誕生し、スコットランドが国として管理するスコットランド・タータン登記所に正式に登録されました。さらにその1年後、イセタンメンズの象徴として親しまれてきた「ブラックウォッチ」がリニューアル。オリジナルの「ブラックウォッチ/イセタンメンズ」として生まれ変わりました。こうして、新生「伊勢丹タータン」の歴史の幕開けとなったのです。
約60年にわたり愛され続けている「伊勢丹タータン」のショッピングバッグ。そんなタータン柄には、ファッション界に君臨し続けてきた伊勢丹のファッションへのこだわりが詰まっていました。普段何気なく使っているアイテム、ちょっとした裏話を知ることができると、愛着もひとしおですね。リニューアルして5年が経とうとしているこれからもなお、ファンを増やし続けていくでしょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 松崎愛香
- EDIT :
- 高橋優海(東京通信社)