「朝早くからご苦労さま」「いつもありがとう」、こんな言葉をかけられたら、誰だってうれしいものですよね。きつい仕事や、やりがいをもてないことでも、誰かが認めてくれていると感じられれば頑張れるのではないでしょうか。今回は、ほんのひと言でもやる気が出る「労い」の言葉の力について解説します。

【目次】

「労い」は相手によって使い分けるのが正解!
「労い」は相手によって使い分けるのが正解!

「労い」ってどういうこと?「読み方」と「意味」などをおさらい 】

■読み方

「労い」は「ねぎらい」と読みます。

■意味

「労(ねぎら)う」という動詞の連用形が名詞化したのが「労い」です。動詞の「労う」の意味は「苦労や骨折りに感謝していたわること」。自分と同等、または目下の相手に対して行うものです。名詞化した「労い」は、「いたわり、大切にすること。特に相手の労苦を慰めること」です。目下、同等、目上など、相手によって掛ける言葉などの使い分けが必要です。この解説で出てきた「いたわる」とは、気遣ったり思いやったりすること。「労い」「労う」と同じ「労」という漢字を使って「労わる」と表記しますが、読みづらいので「いたわる」と平仮名のほうが親切ですね。


「労い」はなぜ必要?ビジネスで効果絶大な理由

まず心しておきたいのは、仕事のシーンでもプライベートでも、人とのコミュニケーションがとても重要だということです。IT化や働き方改革などが進み、顔を突き合わせてする仕事が激減した業種・職種もありますが、社会に関わっている以上、“0(ゼロ)コミュニケーション”というわけにはいかないでしょう。コミュニケーションをとる機会が減った現代こそ、「労い」の力は絶大だと言えるかもしれません。

■「労う」とはどういうこと?

言葉の意味は前述しましたが、具体的にはどういう効果があるのでしょうか。

例えば、仕事帰りに夕食のための買い物をして帰宅した際、「お帰りなさい、疲れているのにありがとう」と声を掛けてもらったらどうですか? もしかしたら「今日も1日忙しかった。荷物も重たいし、疲れているのにこれから夕食つくるのか…」とぐったりしていたとしても、家族からの労いの言葉で心が晴れ、もうひと踏ん張り頑張ろうという気持ちになるのでは?

これが仕事のシーンだとしたら、その効果はもっと顕著でしょう。特に上司や目上の人からの「労いの言葉」は「ほめ言葉」として受け取れるはず。仕事ぶりだけでなく、自分の存在意義も認めてもらえたようで、その嬉しさが頑張りにもつながるのです。モチベーションの維持にも、ビジネスシーンでの「労い」は必要不可欠だと言ってもいいかもしれません。


【「労いの力」はこんなシーンで!具体例で見る「労いのポイント」】

では、どんな場面でどんな「労い」をするとよいのでしょうか。具体例で見てみましょう。

■1:「(1)雨のなか、ご苦労さまでした。(2)あいにくの天候でしたが雨対策もしっかりできていたので、(3)お客様にも喜んでいただけました。ありがとう」

■2:「(1)いつも遅くまでありがとう。(2)残業もいとわず頑張ってくれてとても助かっているけれど、(3)体がキツイときには遠慮なく言ってくださいね」

■3:「(1)今日は手伝ってくれて本当に助かった!(2) パワーポイントでの資料づくりは苦手だから、ひとりだったら終わらなかったよ。(3)次回、私にできることがあったらサポートするからね!」

1と2は上司や先輩、チームリーダーなど、上の立場の人からの「労い」、3は同僚や後輩、チームの仲間など、対等、あるいは下の立場の人を労った例です。いずれも、まずは(1)労いの言葉や感謝の言葉を。続いて(2)労う対象となる行動などを、そして(3)結果どうだったかや今後のサポート体制など――のように続けると、相手に「しっかり見て評価してくれている」ということが伝わって、ますます「労い」は効果的に!

仕事量が多い、急な依頼がくる、予定外の勤務の発生、悪天候や寒い・暑い、出張先が遠い、納期までの時間がない…など、通常とは異なる事態が発生した際にはいつもにも増して苦労が伴うもの。そんな時に掛けられた「労いのひと言」は身に染みるでしょう。


【相手によって使い分ける!「労い」のバリエーション】

労い合って、気持ちよく仕事や家事がはかどるのは大歓迎ですが、注意したいのは目上の人への対応です。「お疲れさま」や「ご苦労さま」は本来目上の人には不向きなワード。ではなんと声をかけるべき? 相手によって使い分けたい「労いの言葉」をご紹介しましょう。

■「上司」「先輩」「社外の人」など目上の相手へ

付き合いの長い上司や気の置けない仕事相手なら、「お疲れさまでした」や「ご苦労さまです」など、敬語表現にすれば問題ないでしょう。そうでない目上の相手なら、「お疲れではないでしょうか」「お疲れの出ませんように」「ゆっくりお休みになってください」というように、いたわりを強調した表現で。

■「部下」「後輩」など目下の相手へ

「いつもありがとう」「毎日ご苦労さま」などのフレーズを使い、「常にあなたのことを気にかけている」ということを発するのがポイントです。努力しているのに成果が出ない部下には「いつも一生懸命だね」「次はきっとうまくいくよ」と励ますこともお忘れなく。

■「同僚」や「仲間」など対等な相手へ

「労い」に共感性は欠かせませんが、それが最もわかり合えるのが同等な立場の相手ではないでしょうか。喜びも悔しさも、苦労も分かち合える間柄こそ、労い合って高めていきたいもの。「とても勉強になりました」や「次回もご一緒したい」といったフレーズは、上司からのほめ言葉よりもうれしいかもしれませんね。

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高く評価されるのはうれしいことですが、苦労を理解して掛けてもらった言葉は染みるもの。結果だけでなく過程に対しての評価でもある「労い」は、“仕事のやる気スイッチ”を入れてくれますね!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :