日常会話ではあまり使う機会がない言葉ですが、「克己心」は「自己に打ち勝つ心。欲望を抑制しようとする意志」を表す言葉です。強い精神力を連想させますね。実際、この言葉を座右の銘とするアスリートは多いんです。今回は「克己心」を深掘りし、その意味や由来、使い方、英語表現について解説します。

【目次】

故事成語が由来です。
「論語」が由来です。

【「克己心」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「克己心」は少々読み方が難しいですね。「こっきしん」です。

■意味

「克己心」は「自己に打ち勝つ心。欲望を抑制しようとする意志」のことです。「克」という漢字には「打ち勝つ・抑制する」という意味があり、「克服」や「下剋上」といった熟語に使われています。「己」は「その人自身。自分」。従って、「克己」で「自分の感情や欲望、邪念などに打ち勝つこと」という意味になります。

■由来は?

「克己心」という言葉は、孔子の教えを記した「論語」に由来します。この中に記された「子(し)曰(いわく)、己(おのれ)に克(か)ちて、礼に復(かえ)るを仁となす」の「克己復礼(こっきふくれい)」は、「私欲に打ち勝ち、人間生活の基本である礼の道に立ち返ること」と解釈され、この考えが「克己心」の語源と考えられています。


【「克己心」の「使い方」がわかる「例文」5選】

「克己心」は、「強い」「弱い」と表現され、「鍛える」「養う」「培う」などの語と共によく使われます。自分自身を厳しく制する、ストイックな人を連想させますね。

■1:「克己心の意味を考えれば、この言葉を座右の銘とするアスリートが多いことも頷ける」

■2:「新しい職場では厳しい状況に追い込まれ、自ずと克己心が鍛えられた」

■3:「時間を無駄にしないためにスマホを見る時間を減らすには、強い克己心が必要だ」

■4:「克己心が強い人は、自分の目標を達成するための努力を惜しまない人だ」

■5:「ビジネスにおいて、克己心は困難に挫(くじ)けず目標に向かってまい進する強い気持ちを表している」


【「克己心」の「類語」「言い換え」表現】

■克服

■超克(ちょうこく)

どちらも「困難や邪念などに打ち勝つこと」という意味ですが、「克服」「超克」は「困難や重い病気などに対して、努力をして闘い、それに打ち勝つこと」です。一般的には「克服」が使われます。「克己」は、「己に克(か)つ」ことですから、打ち勝つ対象が異なります。

■自制心

「自制心」は「自分の欲望や感情を抑える心、コントロールする力」のことです。「自分に打ち勝つ」強い気持ちである「克己心」は座右の銘に選ばれることの多い言葉ですが、「自制心」を挙げる人をあまり見ないのは、「自制心」には「我慢する」という消極的なイメージが強いからかもしれません。

■ガッツ

■根性 

「ガッツ」は、「頑張る気力や根性」を意味する言葉です。カジュアルな表現ではありますが、「克己心」と似た意味がありますね。


【「英語」で言うとどうなる?】

「克己心」を英語で表現すると[self-restraint][self-control]が使われます。「克己心のある人」は[a person of self-restraint]です。

・He has 〔has no〕 self-control.(彼は克己心がある[ない])

***

「克己心の強い人」は、自分を律する強いメンタルと、目標に向かい努力を継続する力を備えた人です。ビジネスシーンにおいても、頼りがいのあるリーダーとして、活躍が期待できそうです。人は誰でも「目覚ましい進歩」を望んでしまいがちですが、「克己心を鍛える」ことを念頭に日々を送れば、少しずつでも確実な成長を遂げることができるはずです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『広辞苑』(岩波書店) :