「阿婆擦れ」という言葉をご存じですか? ヒップホップのタイトルで知ったという人もいるかもしれませんが、リアルでこの言葉が使われることは、ほぼありません。とはいえ、自分では使わなくとも、言葉の意味は押さえておきたいもの。今回は「阿婆擦れ」の意味や由来、使い方を解説します。

「【目次】

口にすべき言葉ではありません。
口にすべき言葉ではありません。

【「阿婆擦れ」の「基礎知識」】

■読み方

「阿婆擦れ」は「あばずれ」と読みます。

■意味

「阿婆擦れ」は「悪く人擦れしていて、厚かましいこと。また、そういう女。すれっからし」といった意味をもっています。品行の悪さを指摘する言葉ですが、具体的には主に異性関係にだらしない人を指します。「婆」という字のためか、もっぱら女性に対する蔑称(べっしょう)、罵(ののし)り文句として使われますが、「阿婆」は当て字で、古くは男女の区別なく使われていました。

■由来

「阿婆擦れ」の「擦れ」は、「擦れっ枯らし」や「人擦れ」などの「すれ」からきています。「擦れっ枯らし」とは、「さまざまな経験をして、悪賢くなったり、人柄が悪くなったりしていること」です。ただ、「阿婆」については語源が明確ではありません。「暴(あば)れ者」から出た語とも、中国語の、父母と同列以上にある血族関係の「婦人」を指す「阿婆」から、とも言われています

『楽屋図会拾遺(がくやずえしゅうい)』(享和3年〈1803年〉刊)の流行語の項に「あばつれ」があり、また『大阪繁花風土記(おおさかはんかふどき)』(大正12年〈1923〉〉刊)の「今世はやる詞遣ひ」のひとつに挙げられていることから、「阿婆擦れ」が江戸時代後期ごろからの流行語であることはわかっています。当時は男女いずれに対しても、性格や人格のみならず、その行為について用いられました。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

「阿婆擦れ」は女性蔑視のニュアンスを強く感じさせる言葉です。そして、激しい憤りとともに女性を罵る際にも使われます。例文をあげますが、たとえ使い方を理解したとしても、実際に口にするのはやめましょう。

■1:「とっとと出ていけ! この阿婆擦れ女!」

■2:「あんな阿婆擦れ、別れて正解だったよ」

■3:「派手な見た目から、周囲からは阿婆擦れ呼ばわりされていたけれど、本当は身持ちの堅い人だった」

■4:「最悪な阿婆擦れ女とわかってはいても、忘れられない」


【「類語」「言い換え」表現】

■男たらし

「たらし」とはだますこと。男性をだます女性を「男たらし」、女性をだます男性は「女たらし」と言います。

■莫連( ばくれん)

「莫連」は「擦れていてずる賢いこと。また、そのような女性」を意味します。

■性悪

「性悪」は性格が悪いことや浮気性のことを言います。


【「対義語」は?】

■箱入り娘

「箱入り娘」は「めったに外へも出さないようにして、大事に育てられた娘」という意味です。

■初々しい

世間慣れしておらず、若々しく新鮮に見える様子を「初々しい」と表現します。「擦れていない」という意味で「阿婆擦れ」とは反対の意味になります。

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人気ヒップホップ・ユニットの「Creepy Nuts」の曲に『阿婆擦れ』という曲があり、男性を次々にもてあそぶ女性に片思いしている男性の心理が語られています。この楽曲の中の女性は、その男性にとって魅力的であるという大前提があり、振り向いてもらえない嫉妬から思わず出た言葉と読み取れますし、それがわかるからこそするっと耳に入ってしまう面もありますよね。しかし、「阿婆擦れ」は女性に対する強い軽蔑や罵りの言葉です。差別的なニュアンスも多大に含まれているため、気軽に口にすべきではない言葉のひとつ。類語も含め、使用には厳重な注意が必要です。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :