もしも「あなたは礼儀正しい人ですね」と言われたら、それはほめ言葉です。「礼儀」とよく似た言葉に「作法」がありますが、「お作法に詳しいですね」と「礼儀正しいですね」では、そのニュアンスに違いがあります。今回のテーマは「礼儀正しい」。意味や使い方はもちろん、「礼儀正しい人」の特徴まで詳しく解説します。

「【目次】

対人関係における気配りや敬意、慎みの気持ちも含まれています。
対人関係における気配りや敬意、慎みの気持ちも含まれています。

【そもそも「礼儀正しい」ってどんな意味?】

まずは「礼儀正しい」の「礼儀」について説明しましょう。「礼儀」という言葉は「人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式」や「敬意を表す作法」を意味します。そして「礼儀正しい」とは、「礼儀をわきまえており、態度がきちんとしている様子」のことです。また、「礼儀正しい」は個人について使われるだけでなく、「礼儀正しい国」のように、大きな主語に対しても使うことができますよ。


【「類語」「言い換え」表現は?】

「礼儀」の意味をもう少し正確に理解するために、「類語」である「作法」という言葉について知っておきましょう。ふたつの言葉の違いを知ることで、「礼儀」への理解が深まります。

■作法とは?

「物を食べながら人に会うのは礼儀(あるいは作法)に反する」のように、人と接するときの態度という意味では、「礼儀」と「作法」は同じように用いられます。ただし、「礼儀」は対人関係での気配りや敬意、慎みの気持ちに基づく行動の規範であるのに対し、「作法」は対人関係に限らず、礼儀に適った一定の行動の仕方を言います。

OK:「年賀状をもらったら返事を出すのが礼儀だ」
NG:「年賀状をもらったら返事を出すのが作法だ」

OK:「お茶の作法を覚える」
NG:「お茶の礼儀を覚える」

「礼儀」は精神的なものがその根底にありますが、「作法」は形式的な言語や動作の決まりに重点を置いた言葉です。そのため、「作法を知らない」であれば、単にその知識がないだけである場合も多いのですが、「礼儀を知らない」には、知識のみならず敬意や慎みの気持ちがなく、常識に欠けることを非難する意味が含まれてきます。

■エチケット  

「エチケット」は、社会習慣として決まっている、人としての正しい態度を指します。「礼儀」よりも具体的な動作や心遣いについて使われることが多い言葉です。

■マナー

「マナー」は人に接するときの態度に限らず、食事などの行動一般について用いられます。

■行儀

「行儀」は、「立ち居ふるまい」のこと。通常、「行儀がよい」「行儀が悪い」のように用いられますね。


【「礼儀正しい」人の「具体的な特徴」は?】

あなたの周囲に「礼儀正しい」人はいますか? 「礼儀正しい」と感じさせるその人は、どんな特徴をもっているのでしょうか。

■挨拶やお礼など、基本的な作法やマナーが身についている。

■敬語を含め、正しく美しい言葉遣いができる。

■相手の立場になって物事を考えられる。

■身の程をわきまえて、出すぎたことをしない。

「礼儀正しい人」は挨拶や言葉遣いなど、基本的な「作法」を身につけているだけでなく、対人関係での気配りや敬意、慎みの気持ちをもって行動できる人のこと。好感度が高いことにも納得です!


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「あのレストランはスタッフが礼儀正しくて、食事をしていてとても気持ちがいい」

■2:「彼は多分、内心では気を悪くしていたはずだが、最後まで礼儀正しくふるまっていた」

■3:「彼女の礼儀正しい態度は心の距離を表しているようでもあり、なんだか少しさびしく感じられた」

■4:「彼はどんなときでも礼儀正しい態度を崩さない」


【「英語」で言うと?】

「礼儀」に相当する英単語は、「丁寧な言動」という意味の[courtesy ]、「作法」を意味する[manners]、「社交上のルール]という意味の[etiquette]が挙げられます。

Courtesy should not be forgotten even between close friends.
(どんなに親しくとも礼儀を守る必要がある)

・He has no manners.(彼は礼儀を知らない)

・Such behavior is a breach [violation] of etiquette.(そのような行いは礼儀に反する)


【「礼儀正しい」人と言われるためにはどうしたらいい?】

■正しい言葉遣いで穏やかに話す。

■「微笑み」を忘れない。

■感情的にならず、不機嫌を顔に出さない。

■他人との間に適度な距離感を保つ。


【「対義語」は?】

■礼儀知らず

「礼儀知らず」は「礼儀をわきまえないこと。また、そのさまや人」という意味の言葉です。

■不躾(ぶしつけ)

「不躾」は「礼儀や作法を知らないこと」。

■無礼

■欠礼(けつれい)

「無礼」とは「著しく礼を欠くこと」。「欠礼」は「礼儀を欠くこと」です。

■非礼

■失礼

「非礼」や「失礼」は「礼儀に外れること」を表します。

■失敬(しっけい)

「失敬」は「ちょっとした非礼」や「敬意を欠くこと」。

礼儀に外れる度合いは、「失敬」<「失礼」<「無礼」の順に重くなります。

***

「礼儀」という言葉には、人間関係における気配りや敬意、慎みの気持ちが含まれています。「作法」や「マナー」よりも深い、含蓄のある言葉なのですね! そのため、「礼儀正しい人」と言われるためには、内面の動揺や不快感を表に出さない、自己コントロール力が必要です。もちろん、大人の語彙力が必要なのは言うまでもありません。一緒に学びましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :