「貴店」は「あなたのお店」という言葉の丁重度を上げた、正しい敬語表現です。同じような使い方に「貴社」「貴国」「貴兄」などがありますね。今回は「貴店」の成り立ちや意味、貴社との違い、そして言い換え表現について解説します。

【目次】

接頭語「貴」の働きを理解しましょう。
接頭語「貴」の働きを理解しましょう。

【「貴店」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「貴店」は「きてん」と読みます。

■意味

「貴店」は相手を敬い、その店を示す敬語表現「あなたのお店」の丁重度を高めた表現です。

「貴」には「身分が高いさま」「上品で美しいさま」という意味があります。「お」や「御」と同様、貴婦人、貴賓など、人や人の集団を表す言葉に付いて、「身分・位・家柄などが高いこと」を表したり、相手または相手に属するものを表す語について、敬意をもって「あなたの」の意を表す接頭語です。「貴店」と同じような使い方をした言葉には、「貴国」「貴社」「貴校」「貴兄」などがあります。いずれも敬語表現ですから、「様」を付けた「貴店様」「貴社様」などの表現は二重敬語となり誤用です。気を付けてくださいね。


【「貴社」との違いと使い分け】

■個人経営か法人経営かを見極めて!

取引先へのメールなどで、「貴社」とするか「貴店」とするか、迷ったことはありませんか? 「貴社」は相手を敬って、その人が属する会社などを表す敬語表現です。「貴店」との違いは、その店が個人経営の店舗であるか、あるいは法人経営の店であるか、という点です。チェーン展開されているお店に対しては「貴社」とするのが適切です。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

接頭語「貴」を用いた「貴店」は、基本的に文章中で使われる書き言葉です。会社を例に挙げると、メールや文書では「貴社」を使い、口頭では「御社」と使い分けます。では、「貴店」は会話の中で「御店(おたな)」に言い換えるかというと…「御店」はもともと奉公人や商人などが使っていた言葉でもあり、現在では一般的に使われていません。口頭では「お店」「こちらの店舗」などが自然です。

■1:「○月△日□時に貴店に伺いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

■2:「時下、 貴店におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます」

■3:「予約購入した商品の受け取り方法については、貴店の規約に従います」

■4:「〜という経験から〜という思いを強くし、貴店を志望いたしました」

4の例文は、入店希望の履歴書やエントリーシートで使われます。


【「類語」「言い換え」表現】

上で挙げた例文は、書き言葉として「貴店」を使用しています。話し言葉に言い換えてみましょう。

■1:「○月△日□時にお店に伺いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

■2:「ますますご繁盛されているご様子、素晴らしいですね」

■3:「予約購入した商品の受け取り方法については、こちらのお店の規約に従います」

■4:「〜という経験から〜という思いを強くし、こちらの店舗を志望いたしました」


【「貴店」の「対義語」は?】

■弊店

■当店

■小店

相手の店に敬意を払い「貴店」と書くの対して、自分の店は「弊店」「当店」あるいは「小店」と書きます。いずれもへりくだることで相手を立てる謙譲表現です。

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接頭語「貴」の意味を理解していれば、「貴校」「貴兄」などの意味も間違えることはありませんね。ちなみに、「貴校」は小学校、中学校、高校、大学、専門学校など、すべての教育機関について使える言葉です。特に「あなたの大学」という意味で使いたいのなら、「貴学」となりますよ。敬語表現は「大人の語彙力」の基本中の基本。正しい知識を身につけたいものですね!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『敬語マニュアル』(南雲堂) :