【目次】
- ■1:「頭が下がります」を使うと敬服の意が伝わる
- ■2:「恐れ入ります」を使うと恐縮する気持ちが伝わる
- ■3:「痛み入ります」を使うと改めて感謝の気持ちが伝わる
- ■4:「お心にかけていただき」を使うと目上の人に感謝の気持ちが伝わる
- ■5:「ひとかたならず」を使うと長年の感謝の意が伝わる
- ■6:「お骨折りいただいた」を使うと関係者に感謝の念が伝わる
お礼や感謝の気持ちを伝えるとき、同じ言葉をいつも使っていませんか? なかなか「ありがとうございます」以外、パッと出てこないもの。しかし、どうせなら相手から「さすが!」「あの人は違う!」と思われるような感謝の言葉を使いたいですよね。そんなとき、心に留めておきたいのが大和(やまと)言葉。定義は専門家によって変わりますが、一般には、中国から入ってきた漢語や欧米由来の外来語に対して、日本古来の和語を大和言葉と呼びます。これをビジネスシーンで使うと印象はワンランクアップ! 心からの感謝が伝わり、相手との距離も縮まります。
今回は編集者・ライターの神垣あゆみさんに、お礼や感謝の気持ちを伝えるときに使うといい大和言葉を6つ教えていただきました。これらの言葉で相手への感謝の気持ちを際立たせ、自身を印象づけていきましょう。
■1:「頭が下がります」を使うと敬服の意が伝わる
相手をうやまう気持ちが沸いたときに、「たいしたものだ」という言葉を使うことがあります。敬服の意を伝える言葉で、人知れず努力を重ねている様子や、地道に取り組む姿勢に対して用います。ただ、相手が目上の人の場合、「たいしたものだ」では失礼にあたります。そんなときは、「頭が下がる」を使いましょう。
×:「業務外にもかかわらず清掃活動を続けていらっしゃる佐藤専務は、たいしたものだ」
〇:「業務外にもかかわらず清掃活動を続けていらっしゃる佐藤専務には、頭が下がります」
「頭が下がる」は、「感心して、相手に対して自然にうやまう気持ちになった際に使う言葉で、人を敬う気持ちから自然に起こる動作を言葉にしたもの。類義語には、「敬服する」「感服する」などがあります。相手の行動を称賛するとき、「すごいですね」が多く使われますが、単に褒めそやすだけでなく、相手の行いを尊ぶ言葉が「頭が下がる」です。人に対して、素直に敬意を払うことのできる謙虚な心を表す言葉でもあるので、使いこなせるようになりたいですね。
■2:「恐れ入ります」を使うと恐縮する気持ちが伝わる
何かをしてもらったときに、思わず「すみません」と言ってしまうことはありませんか?「すみません」は感謝の気持ちを伝えるときにも使われる便利な言葉ではありますが、目上の相手や、社外の方からの厚意や配慮に対する言葉としては不十分です。
目上の相手に感謝して恐縮する気持ちを伝えるときは、「恐れ入る」を用いたほうが、ていねいで真意が伝わります。
×:「私には過ぎたお褒めの言葉をいただき、どうもすみません」
○:「私には過ぎたお褒めの言葉をいただき、誠に恐れ入ります」
「恐れ入る」は、「誠にありがとうございます」という気持ちを伝える言葉。類義語は「痛み入る」、「恐縮する」など。また、同僚や後輩、部下に何かをしてもらって申し訳ない、悪いな、と思うときも「すみません」の代わりに「ありがとうございます」を使うことをお勧めします。相手に対して申し訳ないという気持ちから「すみません」を使いがちですが、謝るより感謝の言葉を返す方が好ましいです。
■3:「痛み入ります」を使うと改めて感謝の気持ちが伝わる
「恐れ入る」と同じく、感謝以上に恐縮する気持ちを伝える言葉に「痛み入る」があります。会話ではほとんど使われていない言葉ですが、心に染みるような相手の気遣いを知ったときや、感謝の気持ちを改まった言葉で伝えたい場合に用います。メールや手紙などで使うとよいでしょう。
△:「急なお願いにもかかわらずご対応いただき、ありがとうございます」
○:「急なお願いにもかかわらずご対応いただき、痛み入ります」
「痛み入る」は、人の親切や好意に恐れ入るという意味です。類義語は、「恐縮する」「恐れ入る」など。例文は、無理なお願いをしたにもかかわらず、対応してくれた相手に対して「ありがとうございます」だけでは表現しきれない思いを伝えています。メールなどで感謝の気持ちを伝える際のポイントは、感謝の言葉を多様しないこと。「ありがとうございます」に限らずお礼やお詫びの言葉は一度使えばよく、気が済まないからと1通のメールに多用するほど、自分が伝えたい気持ちが相手に伝わりません。「痛み入ります」は感謝を伝える言葉の中でも、とっておきのもの。相手の厚意や配慮が自分にはもったいなくて、恐れ多いほどだという気持ちを表す言葉なので、ここぞというときに使うといいですね。
■4:「お心にかけていただき」を使うと目上の人に感謝の気持ちが伝わる
「お世話になっております」は定型文としては便利なのですが、目上の人や、自社をひいきにしてくれているお客様に感謝の気持ちを伝えるときは、「心にかける」を使いましょう。
△:「会長にはいつもお世話になっており、感謝しています」
○:「会長にはいつもお心にかけていただき、感謝しています」
「心にかける」は、「覚えておいて」「気にする」という意味の言葉。「気にかける」が類義語になります。目上の相手や客先以外でも、何かと自分のことを気にかけてくれている相手に対しては「いつも気に留めていただき、ありがとうございます」をお勧めします。「いつもお世話になり」という定型句で済まさず、「○○の件ではお気遣いいただき、ありがとうございます」と具体的に書き、相手の配慮に対する感謝の気持ちを伝えるとよいでしょう。
■5:「ひとかたならず」を使うと長年の感謝の意が伝わる
取引先への定番フレーズで覚えておきたいのが、「ひとかたならず(ぬ)」。通り一遍ではない世話や恩恵を受けている相手に対して、感謝の気持ちを伝える言葉です。「尋常ならざる」と同じですが、大仰さがなくスマートに使えます。
△:「尋常ならざるご支援をいただき、心からお礼を申し上げます」
○:「ひとかたならぬお引き立てをいただき、心からお礼を申し上げます」
「ひとかたならず(ぬ)」は、「ひと通りでなく」「はなはだしい」という意味。「大変な」「格別な」「この上なく」などが類義語になります。覚えておきたいのは、「ひとかたならぬお引き立てをいただき」「ひとかたならぬお世話になり」は、相手が自分や自社に対して、長く継続した関わりを持ってくれていることへの感謝の意を伝えるフレーズだ、ということ。関係が途切れ、疎遠になっている相手に連絡するときに「当時は、ひとかたならぬお引き立てをいただき、心からお礼を申し上げます」という使い方はしません。
しばらく会ってない相手に連絡する場合は「その節は大変お世話になり、ありがとうございました」とするのが適切です。
■6:「お骨折りいただいた」を使うと関係者に感謝の念が伝わる
改まった席や文書で、力を尽くしてくれた関係者やメンバーに感謝の念を伝えるときにふさわしい言葉が「骨を折る」です。「骨折り」は、相手のことを思い、力を尽くすこと。労苦をいとわず精を出して仕事に励むことや、面倒がらずに努力することを「骨を折る」といいます。
△:「これまで協力してくださったすべての方々に、この場をお借りして、お礼を申しあげます」
○:「これまでお骨折りいただいたすべての方々に、この場をお借りして、お礼を申しあげます」
「骨折り」は、人のために力を尽くすことで、「尽力」、「手数をかける」、「骨身を惜しまず」などが類義語。自分のことではないにも関わらず、自分のことのように力を尽くしてくれたことを意味する「骨折り」は、社外や目上の相手に使うことが多い言葉。対して、自社の同僚や部下、関係者へは、「プロジェクトメンバーには大変苦労をかけましたが、心から感謝しています」のようにねぎらいの言葉とともに感謝の意を伝えます。あるいは、感謝の対象を強調する「ひとえに~のおかげ」を使い「プロジェクトの成功はひとえにメンバーのおかげです。本当にありがとう」とするとよいでしょう。
以上、仕事で使えると周囲と差がつく6つの言葉を紹介しました。やわらかい言葉を使いこなせれば、やさしい印象を与え、相手との関係がより親密になること間違いなし! さっそく今日できるものから試して、徐々に自分の習慣にしていきましょう。
『仕事で差がつく言葉の選び方』神垣あゆみ・著 フォレスト出版刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 竹内みちまろ