ビジネスシーンで「当人」という言葉を聞いたり見たりすることがあると思います。「そのことに直接関係する人」を表すのですが、「当人」は丁寧語なのでしょうか? 上司や目上の人のことも「当人」でOK? 「ご当人の意向」は正しい言い方? 今回は「当人」の使い方をスッキリさせましょう!

【目次】

クライアントに上司のことをいう場合は「当人」でOK?
クライアントに上司のことを言う場合は「当人」でOK?

「当人」とは具体的に誰のこと?「読み方」や「意味」など基礎知識】

■読み方

「とうにん」と読みます。

■意味

「当人」とは「そのことに直接関係する人」を表します。

「当」という字は、「ちょうどそのことにあたること、ちょうどその時の問題の対象になっていること」を意味します。名詞の上に付けば、「この」「その」「現在の」「さしあたっての」などの意味になるので、「当人」は「その(この/現在の)事柄に関わっている人」になるわけです。同じような使い方としては、「当社」「当日」「当時」「当地」などがあります。

■丁寧語?

「当人」は丁寧語でも尊敬語でもありません。むしろ目上の人を指して「当人」と言うのは少々不躾な感も…。その場合には、「発表会には教授など、開発チームのご当人たちも出席されるようです」というように、接頭語の「ご」を付けて丁寧語にして使うといいでしょう。ただし、外部の人に対して、上司など社内の目上の人を言う場合には「当人」で問題ありません。


「本人」と「当人」の違いと使い分け】

「当人」と「本人」はほとんど同じ意味で使われていますが、微妙にニュアンスが違います。

「当人」は「そのこと直接関係する人」を表しますが、「本人」は「当事者」のこと。つまり、「ズバリ、その人」ということですね。

たとえば2台の車同士の事故の場合、ドライバーは「事故の本人」。同乗者がいたら「事故の当人」と言ったらわかるでしょうか。事故を起こした人と起こされた人が「本人」、事故の関係者は「当人」となるわけです。

ビジネスシーンで想定してみましょう。

「本人」は、外部からの電話での問い合わせに対し、「その件は〇〇の担当ですが、あいにく不在にしております。戻りましたら本人よりご連絡申し上げますので…」といったように使います。一方、「当人」の場合は特定の人物を示すだけではないので、「異動希望と能力査定を鑑みたうえで、当人の希望に沿うよう配慮した人事が求められている」などと使います。


「当人」を使った「ビジネス例文」6選】

■1:「その件は当人同士で解決させたいので、もう少しお時間を頂けませんでしょうか」

■2:「このたびはご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。当人も猛省しておりますが、上司である私にも指導責任がございます」

■3:「新人を配置するにあたり、当人の能力不足を補うベテラン従業員を指導者として参加させます」

■4:「当人たちの話によると、非があるのはこちらだけではなさそうだ」

■5:「この件は最後まで当人に任せることにしたので、みんなも口出しや手助けは無用、そっと見守ってほしい」

■6:「お客様ご当人の意向を第一に、修正案を練ってください」


【「当人」の「類語」「言い換え」表現】

■該当者

特定のある条件や資格、指定などにあてはまる人物を指します。例)「該当者がいない」

■対象者

行為の目的となる人、目あての人のこと。「ワクチン接種の対象者」などと使います。

■当の人物

「該当する人物」という意味で「当人」の類似語になります。

■渦中の人

話題や問題のただ中にいる人を指します。「彼が渦中の人だ」


【「当人」の「反対語」はある?】

「当人」の反対の意味となると、「直接かかわりのない人」ということで「第三者」が挙げられます。少々乱暴な言い方になりますが、「部外者」「外野」や「野次馬」なども同様のニュアンスで使われます。

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「当人」でも「本人」でも、「当事者」や「該当者」でも意味が通じることはありますが、より正しいニュアンスで伝えたいものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :