みなさんは「堅気」という言葉にどんなイメージをもっていますか? 昭和の時代に流行った任侠映画の影響か、「堅気の人間」という言葉から、例えば「暴力団などに属していない人」や「まっとうな仕事に就いている人」を連想する人も多いようです。でも実は「堅気」には別の意味もあるのです。詳しく解説します!
【目次】
【「堅気」を正しく理解するための「基礎知識」】
■読み方
「堅気」は「かたぎ」と読みます。
■意味
『日本国語大辞典』によれば、「堅気」には3つの意味があり、今回は一般的に使われている、1と2の意味を取り上げます。※以下、辞書の原文そのまま。
1) 心がしっかりしていて、真面目であること。浮薄でなく、物堅い性格であるさま。
2 )従事している仕事が地味で、堅実であること。また、そういう職業。客商売やばくち打ち、やくざなどに対していう。
3)型にはまって堅い感じがするさま。
1のように人の性格を指して使われる場合、「真面目でしっかりした人、礼儀を重んじる人」を指します。「頭が固い」という言葉の印象が強いためなのか、「堅い」という言葉から、融通が利かないとか、相手に対して頑なな態度をとる人といったイメージをもつ人もいるかもしれませんね。でも「堅気」の「堅」には、生真面目で堅実といった意味があるのです。
2の意味で使われている例が、任侠映画などで「暴力団や半グレ組織などに属している人」の対義語として定着した「堅気」です。いわゆる「反社組織だけでなく、水商売などに関係のない一般の人」のことです。
【「例文」で使い方をチェック!】
■1:「彼女はいまだに高校時代にお世話になった方々への年始の挨拶を欠かさないそうだ。今どき珍しい堅気な人だね」
真面目な人、礼儀正しい人という意味で「堅気」が使われています。
■2:「結婚を機に行き当たりばったりの生き方は止め、堅気の仕事を見つけるつもりだ」
この場合の「堅気の仕事」とは、一般的にいう組織に属した勤め人、いわゆる会社員を指します。
■3:「彼は投資に失敗し巨額の損失を出してしまったようだ。『これからは堅気に生きるよ』と言っていた」
地味に手堅く、真面目に生活することを「堅気に生きる」といいます。
■4:「私の彼はIT関係のフリーランスエンジニアとして活躍している。先日、父に彼を紹介したところ、『堅気じゃない男に娘を嫁にだすつもりはない』と言われてしまった。父の頭の中は昭和の時代で止まっているようだ」
昔の価値観だと、フリーランスはいまだに「堅気じゃない」ということになるのでしょうか?
■5:「任侠映画にでてくるヤクザは“堅気に迷惑をかけるな!”と言ったものだが、今どきの半グレにそんな理屈は通用しないよ」
この場合の「堅気」は「暴力団関係者でない一般の人」。
■6:「近所の下駄屋の親父さんは、ちょっと無愛想な感じがいかにも“昔堅気な職人さん”という風情で好感がもてる」
「昔堅気」とは「古くから伝わるものを頑固に守り通そうとする気風」のことで「昔気質」とも書き、どちらも「むかしかたぎ」と読みます。
【「堅気」の「類語」「言い換え」表現】
■「性格」について用いる場合
・律儀
「律儀」とは「義理堅いこと」。「約束を破らない律儀な人」のように使います。
・実直
「実直」は「誠実で正直な性格」を指します。
・堅実
「堅実」は「手堅く確実なこと」。
・真面目 ・生真面目
「生真面目」には「非常に真面目なこと」という意味のほか、「まじめすぎて融通の利かないこと」という意味もあります。
■一般論として職業について用いる場合
・公務員
・普通の会社員
・手堅い職業
【「対義語」は?】
「堅気」の「対義語」をいくつかご紹介しましょう。
■無頼、無頼漢(ぶらい、ぶらいかん)
「正業に就かず、無法な行いをすること。また、その様子やそのような人」を「無頼(ぶらい)」もしくは「無頼漢」」と言います。
■ならず者
「定職にも就かず、乱暴を働いたりする、どうにもならない悪者」を「ならず者」といいます。
■破落戸(ごろつき)
「破落戸」は「無職・住所不定で人をゆすったり、嫌がらせをしたりする悪者」のこと。
■溢(あぶ)れ者
「世間や仕事からはずれた者。浮浪者。ならず者。無法者」を「溢れ者」といいます。
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「堅気」は「律儀で礼儀正しい人」という意味で、ほめ言葉としても使えます。とはいえ、言われた相手が「堅気」の正確な意味を知らなかったら、戸惑ってしまいそうです。言葉への知識を得たうえで、どんな状況で、誰に対して使うのが適切であるか判断できるのも、“大人の語彙力”ですよ。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『さりげなく、折り目正しく「こころ」を伝える 美しい「大和言葉」の言いまわし』(三笠書房) :