ES(エントリーシート)、履歴書、そしてエッセイ(作文)。就職活動の必需品であるこれらになじみがある人、また懐かしく感じる人も多いと思います。今回は、この“就活三種の神器”でもある「エッセイ」について。これから就活や転職に励もうとする人も、入社希望者を採点する立場となった人も必見です。

【目次】

エッセイと日記はどう違う?
エッセイと日記はどう違う?

【「エッセイ」とは?】

■意味

自由な形式で、自分の意見や感想などを述べた散文のこと。また、特定の主題について述べる小論文、論説のこと。日本語では一般に「随筆」の意味で用いられ、文学のひとつのジャンルとしても確立しています。

 ■もともとは英語?フランス語?

英語では[essay]と表記しますが、これはフランス語の「試す、試みる」を意味する動詞[essayer]から発せられた名詞です。フランス語で「随筆」を意味する[essai]は、[essayer]の名詞形というわけ。


【「就活エッセイ」の正解は…】

■どう書けばいい?

就活に必要なエッセイは「自由な形式で、意見や感想などを述べた文章」です。「志望動機」などテーマが与えられている場合はいいのですが、何もなければそれは「自己アピールせよ!」ということ。そんな場合の「エッセイ」について解説しましょう。

ES(エントリーシート)は「自分自身の人柄を企業にアピールするための書類」で、企業ごとにフォーマットがあります。履歴書は「現住所や電話番号などの個人情報や、今までの経歴、スキルを伝える書類」です。紙の市販品のほか、エクセル、ワード、PDFにもテンプレートがあります。

「エッセイ」は自由な形式でOKですから、原稿用紙に手書きでも、ワードなどを使用しても構(かま)いません。たとえ書く文字に自信がなくても、丁寧に書かれていることが重要です。 問題は何を書くか…です。採用側は会社と応募者がマッチするか否か、ESや履歴書だけではわからない人格や性格、特性を「エッセイ」から探ろうとしています。裏返せば、応募者がその会社とマッチするかどうかを判定する材料でもあるわけなので、相手に気に入られることが目的の文章では本末転倒です。

■何を書けばいい?

上でも説明しましたが、「エッセイ」は個人の感想や意見を述べたり、個人的な出来事について語るもの。それは、人気作家の「エッセイ」でも、就活時に提出する「エッセイ」でも同じです。しかし就活で求められているのは、その人の性格や適性が読み取れる「エッセイ」。

「学生時代に(あるいは過去の仕事で)頑張って成果を上げたこと」や、「感動した出来事」などは“個人”が出やすい題材ですが、日常の何気ないワンシーンを綴るにしても、なんらかの形で他人の心を動かすものであることが重要です。求められているのは上手な文章ではないので、「なるほど」「くすっ」「それは大変だ」「よくやった」などと、読み手の心にちょっとでも引っかかるかどうかがポイントです。

■書き方のコツ

文章の書き方にはコツがあります。就活時の「エッセイ」のような「読んで判定」される文章ならなおさらのこと。コツはひとつではありませんが、書く順番の一例を挙げてみましょう。

 ①結論Point):まずは何を言いたいのかを明確にします。

 ②理由Reason):その結論に至る理由を述べることで、価値観や感情が表れます。

 ③具体例Example):性格や性質が読み取れるのが具体例。

 ④結論Point):くり返しになりますが、締めも「結論」で。

各英単語の頭文字をとって「PREP法」 とも呼ばれるこの書き方は、短い文章でも言いたいことが伝わりやすいというメリットもあります。


【「エッセイ」と「コラム」は別もの?

■「エッセイ」と「コラム」の違い

「エッセイ」と「コラム」を混同している人もいるのではないでしょうか。

「コラム」とは、ラテン語の[columna]から出た「円柱」を意味する英単語[column]からきています。転じて英字新聞の紙面における縦の欄を指し、「一定の大きさを囲んで定型化した、決まりものの記事欄」を意味するようになりました。日本の新聞や雑誌では、常時定まっている寄稿記事や、紙面・誌面の同じところに連載される解説や短評欄のことを「コラム」「コラム記事」などといいます。あるいは、掲載スペースは小さいけれど目立たせたい話題や、閑話休題的な差し込み記事を「コラム」と呼ぶことも。

新聞や雑誌では「エッセイ」が「コラム」形式で掲載されることが多いため、誤解や混同が生じるのでしょう。「エッセイ」は文章の内容、「コラム」は形式のことなので別ものです。「○○新聞の連載コラム、△△さんのエッセイ読んだ?」というように使い分けます。エッセイを書く人を「エッセイスト」、コラムを書く人を「コラムニスト」と呼ぶこともありますね。

■「エッセイ」と「日記」の違い

「エッセイ」が個人的な感想や見解を綴るものであるなら、「日記」との違いはなんでしょう。そこはズバリ、「他人に見せるものか否か」です。同じ事柄を綴るのも、他人の眼を意識するかしないかで変わってくるでしょう。


【日本初の「エッセイ」は『枕草子』】

■日本初の「エッセイ」

「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは…」で始まる『枕草子』が日本初のエッセイ、随筆です。

平安中期に成立したとされる、この随筆文学『枕草子』の作者は清少納言。一条天皇の中宮定子(ていし/藤原定子)に仕えていた清少納言は、一時期、不本意ながら中宮のそばを離れることに。その期間に、中宮から頂いた「料紙」と呼ばれる美しい紙に草花や鳥、虫などの名前や、歌枕などを書き綴ることで気を紛らわせました。この『枕草子』の原初版ともいえるものは世間の目に留まって好評を得ましたが、1000(長保2)年に中宮が亡くなったあとは、3人の遺児へのその後の厚遇を願い、亡き母・定子の素晴らしい人柄を筆を尽くして書き上げたのが、長短300段を超える私たちになじみのある『枕草子』。中宮定子の後宮生活での体験や見聞、自然や出来事などを、清少納言の眼を通して綴ったエッセイ集なのです。

■ギネス世界記録は林真理子さん

作家の林真理子さんが『週刊文春』(文藝春秋)で連載している「夜ふけのなわとび」(1983年に「今宵はひとりよがり」のタイトルで連載開始)は、「同一雑誌におけるエッセイの最多掲載回数」として、2020年7月2日時点で1655回のギネス世界記録に認定されました。それ以前の記録保持者は『週刊新潮』(新潮社)での作家・山口瞳さんの連載エッセイ。いかに日本人がエッセイ好きかわかりますね。

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「エッセイ」を書かなければならない状況は、就活や昇進試験、適性検査など、特別なことでもない限り一般の人には起こりません。日記を書くのが習慣になっている人は、案外すらすら書けるかもしれませんね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『全文全訳古語辞典』(小学館) :