【目次】

大山町の「読み方」と「場所」「最寄り駅」「治安」

大山町の「読み方」

渋谷区大山町は高台にあるので坂道が多いのが特徴的。
渋谷区大山町は高台にあるので坂道が多いのが特徴的。

大山町は東京都渋谷区の西部に位置し、丁目のない単独町名で、読み方はそのままシンプルに「おおやまちょう」です。

大山町の「場所」、新宿と渋谷までの距離は?

大山町の住宅街。頂上付近には、敷地面積が大きくて優美な一戸建てや外壁の美しい低層マンションが並んでいる。
大山町の住宅街。台地の上には敷地面積が広い優美な一戸建てや、外壁の美しい低層マンションが並んでいる。

大山町は、高級住宅街である「代々木上原地区」に属していて、大山町の北東側にある西原や、南西側にある上原と共に「大豪邸が並ぶ住宅街」として知られています。エリアの西側は世田谷区に接し、東南側には「代々木上原駅」があります。東西に並木通りが美しい「井の頭通り」が通っていて、その上り坂の途中にあるのが2000年に再建された伝統的なオスマン様式のモスク「東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター」。繊細な幾何学模様などが描かれ、ステンドグラスの装飾が美しい礼拝堂がありSNSの「映えスポット」としても有名です。また、この辺りには大使館も多く点在し、国際色豊かなエリアといえます。

「東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター」内にはハラールショップがあり、トルコの雑貨屋食材なども購入できます。
「東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター」内にはハラールショップがあり、トルコの雑貨や食材なども購入できる。

大山町は、渋谷駅や新宿駅まで電車でおおよそ5~10分と、都心に近いにもかかわらず、とても静かな環境が整う優雅な高級住宅街です。渋谷区の超高級住宅街として知られる松濤や広尾に比べて、ぐっと標高が高いため、見晴らしがよいのもポイントです。

お隣の高級住宅街「西原」も同じ高台にある。坂を下っていくと代々木上原駅に出る。
お隣の高級住宅街「西原」も同じ高台にある。坂を下っていくと代々木上原駅に出る。

大山町の「最寄り駅」

代々木上原駅には商業施設「アコルデ代々木上原」が入っているので便利。
代々木上原駅には商業施設「アコルデ代々木上原」が入っているので便利。

大山町の最寄り駅は大山町エリアから東南側に坂を下っていった場所にある「代々木上原駅」で、徒歩10分程度です。代々木上原駅には小田急小田原線が通っていて快速急行も停まります。快速急行や通勤急行、急行を利用した場合は新宿駅までは1駅5分。都内の高台にある高級住宅街で、これほど通勤・通学に便利な場所はないと言ってもいいでしょう。 また、代々木上原駅は小田急線と東京メトロ千代田線の連絡駅にもなっています。千代田線は、代々木上原駅を始発として、表参道駅や赤坂駅、日比谷駅、大手町駅などの主要駅を通ります。大手町駅までは20分程度です。

幡ヶ谷駅から新宿駅までは4分です。
幡ヶ谷駅から新宿駅までは4分。

大山町エリアを北側に坂を下っていくと京王線・京王新線の通る「幡ヶ谷駅」や「笹塚駅」があります。京王新線は都営新宿線に接続しているので、市谷や九段下へも乗り換えなしで行くことができます。

大山町の「地図」

大山町の「治安」

大山町は一戸建て前の道路幅も広く真っ直ぐで見通しが良い。
大山町は一戸建て住宅前の道路幅も広くまっすぐで見通しがよい。道路がきれいだと街中も美しい。

渋谷区内の犯罪発生状況によると、令和4年(1月〜12月)で大山町は7件。例えば、安全といわれる高級住宅街の松涛でも24件、お隣の上原は31件ほど。高台にある住宅街の大山町は、渋谷区内屈指の「安全な街」と言えるでしょう。

大山町の「歴史」と「由来」

大山町の「歴史」

この辺りは第一種低層住居専用地域なのでマンションも低層だ。
この辺りは第一種低層住居専用地域なのでマンションも低層だ。

都心にも近く、見晴らしのよい大山町は江戸時代から人気が高く、武家の屋敷がたくさんありました。明治時代になると、お取り潰しになった武家屋敷はどんどん買い取られ、農園や牧場になりました。代々木上原の土地を購入したのは維新の三傑として有名な木戸孝允です。木戸も、まずは農園経営を考えたそう。当時、牛乳消費量の拡大から、牧場経営はビッグビジネスのひとつだったのです。

やがて渋谷地域にも都市化の波が押し寄せ、木戸が所有していた農地は、外務大臣の青木周蔵に譲られます。さらに大正2年、青木から土地を手に入れた実業家の鈴木善助が「大山園」という和風庭園の遊覧施設を建設しました。これは一般公開され、人気の観光スポットになっていたようです。現在の「大山町」の名はこの名残と言えます。そのあとに紀州徳川家第15代当主で貴族院議員だった徳川頼倫が所有し、一時期「徳川山」と呼ばれていたこともありましたが、その名称は廃れてしまったようです。とにもかくにも、渋谷の中で最も標高が高いといわれるこの場所は、「高み」を好む要人たちに人気だったことがうかがえます。

大規模なマンション開発も進んでいる。この場所なら、見晴らしの良い低層マンションができそうだ。
現在も大規模なマンション開発が進んでいる。高台にあるこの場所なら、見晴らしのよい低層マンションができそうだ。

大山町はなぜ高級住宅街になった?

「古賀政男音楽博物館」が大山町のお隣の上原3丁目にあります。
「古賀政男音楽博物館」が大山町のお隣の上原3丁目にある。

大山町エリアの大規模な宅地開発が行われたのは昭和初期のこと。昭和6年、第一次分譲が始まりました。当時は山下汽船(現在の商船三井)社長の山下亀三郎が自宅建設のために土地を所有していましたが、それをやめて、市民に分譲する方針に変更しました。ちなみに分譲を担当したのは、現在の西武グループである箱根土地株式会社です。しっかりと広い区画がとられ、立派な洋風の家が並んでいた大山町はその後の戦災を逃れました。 洋風住宅が多く建っていたことから、戦後は数多くの洋風住戸がGHQにより接収されました。

昭和の時代の著名な居住者として、美空ひばりの「悲しい酒」などを作曲した作曲家の古賀政男氏がいます。彼は、昭和13年に代々木上原に移り住んできました。古賀氏は、音楽創造にまい進する同志を集めて音楽村をつくろうという構想をもっていたそうで、没後は、その遺志が受け継がれ、邸宅の一部が再建され博物館「古賀政男音楽博物館」になっています。

「朧月夜(おぼろづきよ)」の作詞家高野辰之氏はお隣の代々木八幡に邸宅があった。歌詞が代々木上原の駅の壁画として飾られている。
「朧月夜(おぼろづきよ)」の作詞家・高野辰之氏は代々木八幡に邸宅があった。歌詞が代々木上原の駅の壁画として飾られている。

大山町の「由来」

上でも少し紹介した通り、このエリアが大山町となった理由は、大正2(1913)年に広大な土地を実業家の鈴木善助氏が「大山園」という遊覧施設にして一般開放したことによります。当時、園内には池や滝もあったようです。

区立代々木大山公園内には少年野球場が2面もあります。子供用遊具もそろい、ファミリーには嬉しい公園だ。
区立代々木大山公園内には少年野球場が2面もあります。子供用遊具も揃い、ファミリーには嬉しい公園だ。

渋谷区が成立する前は、大山町の住所は代々幡町(よよはたまち)の大字代々木字大山でした。そして、渋谷区が誕生した昭和7(1932)年以来、この場所は「代々木大山町」と呼ばれていましたが、昭和38(1963)年に施行された住居表示では「代々木」が取れて渋谷区大山町になります。それまで「代々木」が付いていたのは現在の松濤2丁目あたりに「大山町」という同じ町名が存在していたため。その町名がなくなったことにより、この場所が単独で「大山町」となったのです。大山町のすぐお隣の西原2丁目にある「代々木大山公園」には「代々木」という冠が付いたままなのは、開園が昭和25年だったから。渋谷区は小さな公園ばかりなのですが、ここはその渋谷区の中ではいちばん大きい公園です。

住みやすさは?大山町の「魅力」

■1:規模の大きな邸宅しか建てられません

大山町には大きな土地に緑がふんだんに使われた一戸建てが並ぶ。
大山町には大きな土地に緑がふんだんに使われた一戸建て住宅が並ぶ。

大山町内は広範囲で「第一種低層住居専用地域」に指定されています。第一種低層住居専用地域では、良質な住居の環境を保護するために、建てられる建物の高さに10メートルまでなどの規制があります。さらには「渋谷区土地利用調整条例」において、相続などによる将来的な土地の細分化を防ぐために「最低敷地面積」が制限されています。なかでも大山町は渋谷区の中で最も厳しく、場所によっては限度が200平方メートルとなっています。エリア内に大きな邸宅しか見当たらないのはそのためです。

■2:代々木公園が近いのでお散歩にも最適です

代々木公園は芝生エリアもあって気持ちがいい。
代々木公園は芝生エリアもあって気持ちがいい。

代々木公園は1964年に東京オリンピックの選手村となったのち、公園として整備されました。約54万平方メートルもある広大な公園です。清々しい緑と大きな青い空を感じられる公園は都心ではとても貴重。春になると桜が綺麗に咲き誇り、お花見客で賑わいます。代々木公園があるのは、小田急線で代々木上原駅のお隣の「代々木八幡駅」です。電車を使えば15分程度。のんびりお散歩をしながら30分程度です。

玉川上水旧水路の緑道は、住民の散歩やジョギングなどに利用されている。
玉川上水旧水路の緑道は、住民の散歩やジョギングなどに利用されている。

また大山町の北西側を流れる玉川上水を暗渠化した部分は「玉川上水旧水路緑道」となっていて、大きな木々が生い茂り、緑が豊かな場所となっています。渋谷区は開発によりどんどん緑が少なくなっているので、こういった場所はとても貴重です。

■3:お買い物環境が十分に整っています

代々木上原駅前にはカフェやレストランがたくさんある。気分に合わせて選べるのも魅力。
代々木上原駅前にはカフェやレストランがたくさんある。気分に合わせて選べるのも魅力。

日々のお買い物は代々木上原駅の周辺だけでも十分。代々木上原駅の中にある商業施設「アコルデ代々木上原」には、レストランやスーパーマーケット、輸入食材を取り扱うKALDIなどなんでも揃っています。 駅前には商店街も充実。カフェやパン屋、隠れ家のようなレストラン、セレクトショップなどもあって、おしゃれでとても暮らしやすい場所です。

笹塚駅前にある商業施設「フレンテ笹塚」。成城石井や無印良品、ユニクロなどが入っている。
笹塚駅前にある商業施設「フレンテ笹塚」。成城石井や無印良品、ユニクロなどが入っている。

さらには、徒歩圏内の笹塚駅周辺もお買い物に活用できます。笹塚駅周辺はスーパーマーケットがとてもたくさんあって、用途に合わせて選べるのが魅力的です。 すぐ近くには下町のような雰囲気が楽しめる商店街が複数あって、精肉店、鮮魚店、青果店など昔ながらのよいお店も揃っています。

■4:おしゃれなお店が並ぶ奥渋も近いです

奥渋にある宇田川遊歩道には、コーヒーショップが集まっていて、中には行列ができるお店も。
奥渋にある宇田川遊歩道には、コーヒーショップが集まっていて、なかには行列ができるお店も。

さらに足を延ばせば、美味しいコーヒーの飲めるカフェやサンドイッチ屋さんなどが点在する「奥渋谷」に行くことも。ここは渋谷の奥にあるので、奥渋(おくしぶ)という通称で親しまれているエリア。代々木公園の近くにあります。渋谷駅周辺のような賑やかさはなく、落ち着いた場所です。おしゃれなセレクトショップも集まっていて散策を楽しめます。朝早くから開いているお店も多いので、代々木公園とセットで訪ねてみるのもおすすめです。

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広尾や松濤に比べて大山町は高級住宅街としての知名度はそれほど高くはありませんが、とても見晴らしのよい高台にあって広々とした豪邸が並んでいて圧倒されます。大きなお屋敷がたくさんあるのは、渋谷区土地利用調整条例によって良好な住宅地を保つためのルールがあるからなのですね。ゆったりとした空気感といい、緑の多さといい、高級住宅街としてのエレガントさが備わっている街だと思いました。

参考:渋谷区ホームページ
   『住まいからみた近・現代の渋谷』(白根記念渋谷区郷土博物館・文学館)
この記事の執筆者
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PHOTO :
AC,柳堀栄子
WRITING :
柳堀栄子