雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、障がい者雇用を促進する「Talento Incluir」の代表を務める、カロリーナ・イグナラさんの活動をご紹介します。
「障がいのあり/なし」ではなく「個人」に合わせた雇用をサポート
「私は白人で、髪は少しカールした茶色のミディアムヘア、目は茶色、紫色のシャツ、緑のパンツをはいて、車椅子に座っています」
これこそ、彼女ならではの自己紹介スタイル。障がい者雇用(※)をサポートする会社を起業したときからの基本姿勢である「個人としての尊重」に通じるアプローチだ。
「’01年に事故に遭い、車椅子生活になりました。そのとき、個人の状態に合わせたリハビリがどんなに大切かを身をもって知ったのです。障がい者、とひとくくりにされがちですが、そもそもひとりひとりは異なる存在。だから障がい者雇用も『法律で従業員の何%と決まっているからそうする』という考え方ではなく、『それぞれの個人を尊重して働く機会を与える』ことが必要なんです」
「障がい者を雇ったがどうしたらいいかわからない」という企業にアドバイスするところから、カロリーナさんの挑戦は始まった。’08年に起業し、現在、従業員は32人。これまで7000人の障がい者雇用を援助してきた。有識者として講演に招かれることも多く、国内外を飛び回っている。笑いを交えながらの親しみやすい語りは聴衆を惹きつけ、講演後もたくさんの人が彼女の周りに集まってきては、談笑していく。
「私は、優しさで人とつながっていきたいと思っています。だから自分の弱点を話す。偽らず、いつでも、本当の私を見せます」
目指すのは、法律がなくても障がい者が雇用される社会。「企業の義務から、人間としての義務へ、意識を変えていきたい」と微笑む。「車椅子になったことは人生でのいちばんの困難でしたが、いちばんよかったことでもある。おかげで、人間として成長できました」
【SDGsの現場から】
●障がい者仲間と共に演劇のグループ活動も
●困難と喜びに満ちた17歳の娘の子育て
※(ブラジルの)障がい者雇用とは…ブラジル地理統計研究所によると、ブラジルの障がい者は人口の約8%強である約1720万人。そのうち雇用されている人は1%未満。
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- PHOTO :
- Naoko Takahashi
- WRITING :
- 剣持亜弥(HATSU)
- 取材 :
- Naoko Takahashi