あなたが「エレベーターのマナー」を知ったのは、いつのことですか? 同じマンションの住人や、取引先と一緒にエレベーターを利用するとき「こういうときは、どうすれば?」と疑問に思った瞬間はありませんか? 特にビジネスシーンでのエレベーターマナーとなると、研修で丸暗記したり、先輩の行動を見てなんとなく「こういうものなのだろう」と取り込んで身につけたもので、実際に求められている振る舞いとは、違っている可能性もあります。

そこで、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、ビジネスマナーでは教わらなかった「本当のエレベーターマナー」を教わります。

ビジネスシーンでのエレベーター「上座は?」「開ボタンを押すタイミング」は?

まずはビジネスマナーとして研修などを受けたときに、素朴な疑問を感じやすいふたつの項目「上座はどこ?」「開ボタンを押すタイミングは?」について、西出さんに教えていただきました。

エレベーターマナーの素朴な疑問
エレベーターマナーの素朴な疑問

■1:なぜ「上座」は操作盤の後ろなの?

エレベーターにも席次があることはよく知られていること。西出さんによると、一般的に「上座」は“操作盤の前に立つ案内人の後ろ”とされているそうです。なぜこの位置なのでしょうか?

「諸説ありますが、案内人は、最上位の人をお守りする、という理由からこのような位置になります。また、エレベーター内に操作盤がひとつしかない場合、メーカーの型番にもよりますが、大抵は、エレベーター内からみて右側にあると思います。日本人には右利きの人が多いため、操作しやすさを考え、右に取り付けられているといわれています。また西洋では右上位の考え方がありますので、最上位の人は、エレベーター内からみて右奥(外から見ると左奥)に位置することになります。このような理由からも、エレベーターの操作盤が、エレベーター内から見て右側にあれば、お守りすることにもつながります。もしあなたが目上の方や上長、取引先と一緒にエレベーターに乗ったとき、左右両方に操作盤がある場合は、エレベーター内から見て、右の操作盤の前に立つことを心がけるとよいでしょう」(西出さん)

上座は、操作盤の前に立つ案内人の後ろ
上座は、操作盤の前に立つ案内人の後ろ

■2:エレベーターの中で「開」ボタンを押すべきときは?

お客様をお見送りするときにエレベーターが到着したら、先に乗り込み「開」ボタンを押してお客様が乗り込むのを待つマナーがあります。でもエレベーターの中に人がいると「開」ボタンが押しづらいことも…。

「中に乗り込んで『開』ボタンを押すのは、エレベーターの中に誰もいないときです。すでにエレベーターの中に人がいる場合は、お客様が乗り込むのを外で待つのがマナーです。エレベーターは密室ですので、“安全確認”の意味で、誰も乗っていないときは先に自分が入ります。他の人が乗っている場合は、特に問題ないことがわかりますので、お客様に先に入っていただき、案内人が最後に入ります」


日常でエレベーターを使うときは「挨拶」を心がけるといい気分に

エレベーターマナーは、お客様をお見送りするときにだけ気を遣うけれど、マンションやデパートなどで普段、乗るときは何も考えていない…なんてことは避けたいもの。そこで西出さんに、プライベートでのエレベーター使用で心がけたいマナーについて伺いました。

日常的なエレベーターのマナー
日常的なエレベーターのマナー

■1:エレベーターを出るときに「開」ボタンを押してくれた相手へ…

「『ありがとうございます』と声に出して御礼を伝えると同時に会釈をして出る。もし『ありがとうございます』というのが恥ずかしいと思う方は、せめてお辞儀だけでもするのがマナー美人です」

しかし、一般的には「開」ボタンを押すことに対して「好意の押し売り」のような声もあり、賛否両論のようです。

「お客様でなくても『開』ボタンを押して差し上げるのがマナー、と思っています。私は30代前半から半ばまでイギリスで生活をしていましたが、英国ではエレベーターに限らず、普通のドアでも、誰か他の方が後ろから歩いてくれば、その方のためにドアを開けます。もちろん知らない人です。

エレベーターで『開』を押すことに賛否両論あることについては、それぞれの自由だと思います。しかし、マナーとは、相手の立場に立つこと。『開』を押さないと、ドアが閉まって身体が挟まれてしまう恐れもあります。知らない人に対する思いやりのマナーのもとに考えれば、実行していいのではないかと思います」

マンションのエレベーターに乗り合わせた人に「挨拶」はすべき?

「理想は、挨拶をすること。ただしその相手がどんな方かわかりませんし、かまってほしくないと思われる方もいるかもしれません。ただ一般的には、挨拶をされて嫌な気持ちになる人は、ほとんどいないと思います。ですから、知らない相手でも、せめて会釈をするくらいの礼儀は行ってほしいと思います。相手の存在を認め、敬意をはらう行動です。海外ではアイコンタクトをしてくれます。狭い空間を共にするのですから、挨拶をし合うほうが安心できます。

先日、知らない方と取引先のマンションのエレベーターでふたりきりになりました。『まだまだ寒いですね』と言ったら、『雪の日に九州に出張していて、欠航になって大変でした』とお話くださいました。あっという間に目的階につき『失礼します』といって私が先に降りましたが、相手も失礼しますと言ってくださり、よい気分になれました。

もちろん、このようなことは無理にする必要はないと思います。マナーは規則でも法律でもありませんので。そのときの状況や相手によって、する・しない、でよろしいと思います。ただ、挨拶をされたら、それに返すのはマナーですね」

マンションのエレベーターで挨拶をされたら、返すのがマナー
マンションのエレベーターで挨拶をされたら、返すのがマナー

エレベーターのマナーはビジネスシーンより、意外と日常的なシーンのほうが難しいかもしれません。そのぶん、大人のふるまいが試されるときであり、魅せるチャンスでもあります。ケースバイケースで臨機応変に選択し、相手の立場に立った美しいふるまいをしたいですね。

西出ひろ子さん
マナーコンサルタント 美道家
(にしで ひろこ)マナーは互いの幸せにある、という真心マナーとおもてなし礼法を伝えるマナー界のカリスマ。一流企業の人財育成、コンサルティングをはじめ、テーブルマナーや冠婚葬祭のマナーなど、マナーのすべての精通。その活躍は、海外にもおよび、多くのメディアでも紹介される。NHK大河ドラマや映画、テレビ番組などで、多くの女優や俳優、タレントにマナー指導もおこなっている。著書は国内外で80冊以上、著者累計100万部を突破。
ヒロコマナーグループ
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利