冷え込みが激しくなるにつれて、恋しくなるものといえば温泉。温泉旅行は冬のレジャーの定番ですが、ただ湯に癒されるだけでなく、同時に雪景色を楽しむことができれば、旅の感動はよりいっそう大きくなるのではないでしょうか。そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、雪見風呂を満喫できる名宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、福島県・飯坂温泉にある「御宿かわせみ」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

日本庭園も建築美も見事!料理自慢の宿で雪景色の情緒にも浸る

東京駅から東北新幹線で約2時間半。福島市の北西部に位置し、奥州三名湯のひとつに数えられる飯坂温泉。その温泉街の喧騒から隔絶された自然林の中に佇むラグジュアリーな湯宿が、今回ご紹介する「御宿かわせみ」です。約3000坪の広大な敷地に客室はわずか12室。「御食事を召し上がるために泊りがけで出かけてみる」をコンセプトに掲げ、全国から食通が集まる美食の宿として知られています。

御宿かわせみの玄関。
御宿かわせみの玄関。

「私が御宿かわせみを知ったきっかけもお料理の評判。人気でなかなか予約がとれず、ようやくブッキングできたのが冬という巡り合わせで、もともと雪見をお目当てとしていたわけではありませんでした。ですが、実際に訪れてみて、食事だけでなく雪景色にも感動! 宿泊したのはかなり以前ですが、今でも鮮明に記憶に残るほどです」(植竹さん)

御宿かわせみのロビーからの雪景色
ロビーからの雪景色。

「大浴場には内湯と露天風呂があり、手入れの行き届いた日本庭園が眼福。木々がうっすらと雪化粧した光景はまるで水墨画のようで、いつまでも眺めていたくなります。

内湯からも窓ごしに雪見気分を楽しむことはできますが、やはり露天風呂の風情は格別。飯坂温泉の高温の源泉を、御宿かわせみではちょうどいい湯温に調整しており、温泉でじわじわと体の芯から温まりながら雪景色に魅了されるという冬ならでは醍醐味を堪能できました」(植竹さん)

御宿かわせみの大浴場・露天風呂
大浴場・露天風呂からの雪景色。
御宿かわせみの大浴場・内湯
大浴場・内湯からの眺め。右手のかまくら型の設備は、低温サウナ。

「また、温泉からの眺めだけでなく、館内の建築美も見ごたえがあります。小窓や組子細工の障子など造作のひとつひとつが凝っていて、そこから垣間見える雪景色にも心がときめきました」(植竹さん)

御宿かわせみの玄関の小窓
玄関の小窓からもさりげなく雪景色が見える。
御宿かわせみの畳廊下
畳廊下の障子戸の美しさも目を引く。

客室は、1階に6室、2階に6室の全12室。1階の6室は、庭園や竹林に面した客室専用の露天風呂付きです。また、4室はロビーから畳廊下を渡った先にある離れのような造り。一番広い「侘助」は、茶室もある落ち着いた佇まいで、露天風呂から池を眺められるなど、とびきり優雅な寛ぎ時間を過ごすことができます。

一方、温泉好きな人には大浴場近くにある「小萩」「海棠」も人気。12室はそれぞれ間取りや設えが異なるため、いろいろなタイプの部屋を試したくてリピーターになる人も少なくないようです。

離れの特別室「侘助」。
離れの特別室「侘助」。
御宿かわせみ客室の露天風呂
客室の露天風呂から池を眺める。
御宿かわせみの客室「海棠」
客室「海棠」の窓際カウンターは雪見の特等席にもなりそう。

全国の美食家が足を運ぶ!一期一会のおもてなしコース料理に感動

2023年12月の吟味特撰「天然九絵と帆立と九条葱 黒大蒜みぞれ仕立て」。
2023年12月の吟味特撰「天然九絵と帆立と九条葱 黒大蒜みぞれ仕立て」。

冒頭でもお伝えしたように、御宿かわせみは料理にひときわこだわりのある宿。献立は月替わりで、“前段料理→前菜→椀→吟味特撰→後段料理”とストーリー性のある料理はどこを切り取ってもぬかりがありません。

メインの吟味特撰は、旬の食材を吟味・厳選し、御宿かわせみ流にアレンジした一皿。2023年12月の特撰は「天然九絵と帆立と九条葱 黒大蒜みぞれ仕立て」、そして2024年1月の特撰は「ずわい蟹と生雲丹の菜花グラタン」です。いずれも冬の味覚を主役に据えつつ、シェフのインスピレーションが冴えわたった独創的なメニューで、ほかでは決して味わえません。

2024年1月の吟味特撰「ずわい蟹と生雲丹の菜花グラタン」。
2024年1月の吟味特撰「ずわい蟹と生雲丹の菜花グラタン」。

「料理は私の訪問時からさらにブラッシュアップされているかと思いますが、当時から食材の豪華さが群を抜いていたのが印象的です。思い出せる範囲でも、牡蠣、ふぐ、のどぐろ、ずわい蟹など、冬の味覚が目白押し。しかも、主役級の素材が複数組み合わさって、ひとつの芸術的な料理に昇華されているのに感服しました。

例えば、ずわい蟹とのどぐろの鍋。高級食材はそれぞれ旨味が強いので、ややもすると味が喧嘩してしまいますが、私が食べた鍋では、両者が見事に調和していたんです。出汁のとり方なのか、アレンジの妙なのかわかりませんが、これぞ御宿かわせみ流。宿のコンセプトに違わず、全国どこからでも料理を食べるためだけに足を運ぶ価値のある宿だと思います」(植竹さん)

御宿かわせみの料理
器や盛り付けの美しさで目でも楽しめる。写真は2023年1月の料理の一例。

以上、「御宿かわせみ」をご紹介しました。四季折々の風景を楽しめる一流宿にて、雪見風呂も美食も満喫したい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 御宿かわせみ
  • 住所/福島県福島市飯坂温泉翡翠の里2-14
    客室数/全12室
    料金/1名 ¥46,970~(税込)
  • TEL:024-543-1111

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)