【目次】
- ■1:怒ってもいい場面でも「穏やかな態度」でいる
- ■2:その場にいる全員の立場や気持ちを「慮る」
- ■3:「起きてしまったこと」は前向きに受け止める
- ■4:いろんなことに「完璧を求めない」
- ■5:価値観や感じ方の違いを認める
■1:怒ってもいい場面でも「穏やかな態度」でいる
「怒り」は、コントロールするのがなかなか難しい感情のひとつです。カチンとくることがあると、職場であっても、つい表情に出てしまったり、直情的な性格の人だと、思わず声を荒げてしまったりします。こうした「怒りのコントロール」をどうすればいいのか、石原さんからはこんなアドバイスが。
「怒りがこみ上げた場合、それを自分の中でいったん消化せず、ストレートに吐き出してしまうのはNGです。もし自分のなかに、“ハッキリと直情的にものを言うのがカッコイイ”といったキャリアウーマン像のようなものがあったとしたら、それは修正すべきでしょう。もちろん、相手のミスは正すべきなのですが、怒りに任せて正そうとしても、相手にはその怒りに対する反抗心が芽生えますので、結果として相手の心には届きません。そこで怒りを抑え、冷静な口調で相手のミスを指摘してあげるのです。すると相手は自分より大人であることを痛感し、素直に心を入れ替えるでしょう。
また、相手から怒りが湧くような言動をされたら、すぐに怒りで反応をせずに、なぜそんな言動をとったのか、その真意を相手に聞いてみることです。すると、そこから相手への理解が生まれるような事情が聞けることもあります」
一目置かれるためには、怒りがこみ上げても冷静になりましょう。そして、より相手の改心を引き出すための物言いをする、もしくは相手の言動の背景にある事情を聞くようにしてみてください。
■2:その場にいる全員の立場や気持ちを「慮る」
怒りのコントロールが重要なのは、会議などのシーンにおいては、その場の空気を一変させてしまうこともあるからです。同様に、仕事でもプライベートでも、自分の思いだけを優先した言動をとり、周囲を置いてけぼりにしてしまうと、「つきあえない」と、疎遠にされてしまう可能性があります。自分の思いや意見の主張も大切ですが、同時に、自分も含めて周囲を客観的に見渡せることも、大切な大人の条件のひとつ。では、そうした周囲を俯瞰して、気持ちを察する能力はどうすれば高められるのでしょうか?
「会議や集まりの場など、大勢がいる場面で自分の言動を認識する能力を、心理学では“メタ認知能力”と言います。メタ認知能力とは”自分の思考や行動そのものを対象化して認識する能力。周囲から自分がどう見られているかを冷静に判断できる能力”のこと。
これがない人が(死語かもしれませんが)KYと呼ばれていました。このメタ認知能力のない人の特徴は、“自分が言いたいことを言えればそれでOK”という思いが強いことで、いわば、どんな場でも“主役は私”という大きな勘違いをしてしまっているのです。
そうではなく、“複数の人間がいれば、主役はその場にいるすべての人”と考えるようにすることです。そして、むしろ“その場に自分はいない”“自分は意見を控える記録係”くらいの思いで、自分の主張をまずは抑え、他の人たちの言動を観察し、思いを察してあげるようにするといいでしょう。もちろん意見を言わないのでいいということでありません。しかるべきタイミングで、しっかりと自分自身の意見を述べればいいのです」
一目置かれるためには、複数の人間がいる場では、常に自分の言動をチェックし、周囲から浮いていないかを認識しましょう。そして他の人たちの意見を聞き、その思いを察する努力をして、自分の意見をしっかりと発言してみてください。
■3:「起きてしまったこと」は前向きに受け止める
大人の人間関係の中でも、いちばんその真価が問われるのが、「ミスやトラブルが発生したとき」です。こうした際の対応は、その人の真の人間性が表出しやすいからです。意図せず起きてしまった他人のミスを、いつまでもネチネチと指摘し、相手の仕事へのモチベーションを削いでしまってはいませんか? もちろん、相手が自分のミスの根本原因に気づこうとしなければ、それを指摘するのも教育の一環でしょう。ですが、十分に反省し、問題点を把握しているとすれば、「次回に向けた前向きな取り組み」を考えていくのが大人の人間関係です。失敗からしっかりと学んだら、気持ちを過去に引きずられずに、前を向く。そのためには、どうすればいいのでしょうか?
「前向きになることで、マイナスをプラスに変えることができ、また大人としての”底力”が身につきます。過去にこだわってしまう人というのは、そのこだわっている姿を通して、そのときの行動に対する言い訳をして、周囲からの同情を得たいという思いも強いはずです。つまり、どこか保身につなげたいというずる賢さが働いているのです。そうした思いは捨てるべきですね。それよりも、過去の失敗から学んだぶん、次回、より多くの成果が得られるための方策を考え、それを実践することで、その人の評価はミスを挽回して、より大きなものになるはずです」
一目置かれるためには、ミスやトラブルが発生したら、問題点をしっかりと把握して反省し、気持ちを切り替えましょう。前向きになって、より成果が得られる方策を考えることに時間を使い、その方策を実践すると、成果を出すことができるようになっていきます。
■4:いろんなことに「完璧を求めない」
人間、誰だってミスやヘマをするもの。なのに、他人にはついつい完璧さを求めてしまいことがあります。そうすると相手は緊張とプレッシャーでガチガチになり、余計ミスをしてしまうことにもなりかねません。「まあ、いいか」という適度にリラックスした心の状態が、結果として物事をうまく運ぶこともよくあるのです。では、ついつい細部までに完璧さを求めてしまう、という人はその思考・性格からどう脱却すればいいのでしょうか?
「完璧さを求めがちな人は、まず、自分の人生を振り返ってみることですね。例えばテストでも、100点満点が取れた経験がいったいどれほどある?と自分に聞いてみましょう。人というのはそもそも得手・不得手がそれぞれにあります。ですから大勢が集まって協働しているわけです。もちろん、相手が不得手な部分を補うだけでなく、その人の成長のためのアドバイスをしてあげるのはいいことですが、“完璧さを求めるのは人間に対しては不可能だ”くらいに思うようにしましょう」
一目置かれるためには、人間には誰しも、得手・不得手があると認識しましょう。自分が完璧ではないように、相手も完璧ではないと考えるように心がけてみてください。
■5:価値観や感じ方の違いを認める
人それぞれにいろんな価値観や考え方があります。そうした多様性を認めることは、近年、世界的に重要視されてきています。しかし中には、例えば、自分が怒りを感じることに対して、共感されない場合、その相手にも怒りを感じるなんていう人もいます。「他人も自分と同じ価値観や感じ方を持っている」「自分の価値観や感じ方だけが常に正しい」などと、妄信してしまっている人はいませんか? では、自分の物差しだけがすべてという考え方から脱却するにはどうしたらいいのでしょうか?
「インターネットが普及したことのメリットのひとつに、“人それぞれ、いろんな意見があるんだな”と改めて、世界中の人たちが認識できたことがあげられると思います。これはリアルの場でも同様で、人に何かを聞けば意見はまさに、十人十色で当たり前なのです。他者の価値観や感じ方を認められない人というのは、“自分の中の信念体系を、揺るがされるのが怖い”というある種の恐怖心が根底にある場合もあります。
信念体系とは、”育ってきた中でその人の心にできあがった、ものの考え方・価値観・行動規範など、個人が言動をとる際の判断基準とするもの”。しかし社会の場で求められるのは、あなたの信念体系を変えることではなく、他者の信念体系も同様に認めてあげることです。その間違った思い込みを修正することで、十人十色の価値観や、感じ方を認められるようになるでしょう」
一目置かれるためには、人の意見は十人十色が当たり前と認識しましょう。社会から求められるのは、自分の信念体系を変えることではなく、他者の信念体系を認めてあげることが重要です。言われてみると、本当にスゴイ人は、どれも自然とできていることばかりですよね。自分だけでなく、周囲の人たちの安心感や居心地のよさも考えた言動を心がけ、誰からも好かれて尊敬される、”周囲から一目置かれる女性”を目指していきましょう!
“しんどい悩みが一瞬でなくなる!大人の人間関係”石原壮一郎・著 日本文芸社刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 町田光