「隠岐」への島旅で地球のエネルギーを感じた私ですが、この秋はもうひとつ大地を感じる場所へ旅していました。それはオーストラリアのウルルです。ウルルという場所をご存じない方でも、エアーズロックと言えばおわかりでしょうか。はたまた映画『世界の中心で愛を叫ぶ』(2004年公開)で、大沢たかおさんが愛を叫んだ場所と言えばもっとわかりやすいかも? が、この両者とも正確に「ウルル」を表しているとは言えません。

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朝陽に染まるウルル。どのくらい大きいのかこの写真ではわかりにくいですが、高さは348メートル。つまり東京タワー(333メートル)が固まって立っている、といえばイメージがつきやすい?

まず、エアーズロックという呼称ですが、これはこの世界で2番目に大きい巨岩を“発見”した英国人のAyersにちなんだ名前です。2000年代初頭まで一般的に使われていましたが、現在ではもともとこの巨岩とともに暮らし、信仰の対象としてきた先住民族(アボリジナルの人々)に敬意を表し、彼らの言葉で「Uluru(ウルル)」と呼ぶようになりました。今でもエアーズロックと呼ぶのが間違いというわけではないと思いますが、少なくとも私の滞在中、「Ayers Rock(エアーズロック)」という呼称はリゾートなどの固有名称を除けば、一回も見聞きすることがありませんでした。

また、『世界の中心で~』についても、実はあの有名なシーンはウルルではなく、同じノーザンテリトリー州内のアリス・スプリングス周辺で撮影されたのだそう。その理由については、ウルルがアボリジナルな人々にとって神聖な場所であるため、さまざまな条件や規制が設けられており難しかったのだとか。同じ理由で、以前は登れたウルルも2019年10月より入山禁止になっています。

さて、ウルルを旅する上でもっとも大切なことを最初にお伝えさせてください。

「ウルル(岩)は、ウルル(地名)に着いても見えません」

実は、宿泊したホテルで若い日本人女性に聞かれたんです。「ウルルにはどうやって行けばいんですか?」と。このウルル(岩)のあるウルル - カタ・ジュタ国立公園は大変広大でその面積はなんと1,300平方キロメートル超。一片が1,000キロ以上もある四角を想像してください。どれだけ広いんだろう……。

そのウルル - カタ・ジュタ国立公園のなかに外周9.4キロメートルで高さ348メートルの一枚岩ウルルがあり、それを取り囲むように複数のホテルやキャンプ場から成る村のような「エアーズロック・リゾート」や、アボリジナルな人々の居住区などがあります。つまり、広すぎて、ほぼ自力での移動は無理だと思ったほうがよさそう(レンタカーは除きます)。

前述の女性はとりあえずウルルに来れば独りで見に行けると思ったようですが、タクシーは一台もいませんし……そんなときはまずはホテルやショッピング・センターなどでウルルを楽しむためのオプショナル・ツアーに申し込むことをおすすめします。オプショナル・ツアー専門の旅行会社「AAT KINGS」には日本語で開催されるツアーもあります。

空から、大地から、ラクダの上から、ウルルを感じる

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上空からウルルを眺めるヘリ遊覧飛行に挑戦。空も青く、なんだか宇宙を感じました。

ではどんなツアーがあるか? 私はまずヘリに乗って、ウルルやカタ・ジュタを空から拝見。上空から眺めると、ここオーストラリアの内陸部がレッド・センターと呼ばれる赤土の大地であること、またウルルやカタ・ジュタがどんなに圧倒的に大きいか、そのダイナミックな自然を目の当たりにすることができます。

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同様にヘリから、カタ・ジュタ。カタ・ジュタはウルルのように一枚岩ではなく奇岩が群なして林立しています。
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セグウェイ、初めて乗りましたが、丁寧な講習もしてくれるので意外にイケました!

ほかにもウルルの麓をセグウェイでめぐるツアーや、朝焼けに染まるウルルを見られるキャメルライドまであるので、乗り物のバリエーションは豊富です。

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ラクダももちろん初めて乗りました。前のラクダと数珠つなぎになっているので安心。

そしてもちろんウォーキングでもウルルを満喫。写真は撮影できませんでしたが、アボリジナルの人々が残した壁画を見たり、この土地固有の花々をガイドさんに教えてもらいました。

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日本人ガイドがアボリジナルの人々の神話や生活慣習を教えてくれました。

エンタメやアートからウルルを感じる

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23年5月にスタートしたばかりのプログラムである「ウィンジリ・ウィル サンセット・ディナー」。

さらには、アートや展示、ワークショップなどでウルルを感じることもできます。砂漠に設置されたオープンエアのシアターで上演されるのは、1,000機のドローンとレーザー、プロジェクションマッピングで生き生きと再現される古代アナング族(この地に住んでいたアボリジナルの人々)の物語。

献辞:土地の管理者であるアナング族は、カルトゥカジャラからウルルまでのマラの物語を所有しています。彼らのストーリーを共有するために、ラムス社はドローン、光、音を使った芸術的なプラットフォームをデザイン、制作し、没入型ストーリーテリング体験を作り出しました。
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砂漠にイルミネーションの花が咲く「フィールド・オブ・ライト」。

英国のアーティスト、ブルース・マンローによる「フィールド・オブ・ライト」は5万個もの電球がきらめくインスタレーション。この日は朝5時に出発して日の出を見る予定でしたが、なんと私、寝坊して起きたら5時30分! 慌ててガイドさんに迎えに来てもらいましたが、焦った~。

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伝統的なアボリジナルのシンボルを学び、アナング族のガイドがピチャンチャチャラ語で物語を語り、通訳が英語で説明してくれます。

個人的に一番楽しかったのが、この「ドットペインティング体験」。文字を持たないアボリジナルの人々は飲み水や狩猟場のありか、そして民話をドットペインティングで表してきたことはみなさんご存じかと思いますが、このワークショップでは実際にアナング族の先生の作品をお手本にペインティングに挑戦。私の作品はどれだか、わかりますか?

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「タリ・ウィル サンセット・ディナー」

ディジュリドゥ(アボリジナルな人々の伝統楽器)の音色とともに、サンセット・ディナーも楽しみました。オーストラリアのブッシュフードを中心とした食事も、砂漠にいるとは思えないほど洗練されたコースだったのですが、何分砂漠の真ん中のオープンテーブルでライトがないので写真がうまく撮れず……すみません。食後には文字通り降るような星空に言葉を失いました。

「ウルル」を旅するためのヒント

……とまあ、ご紹介してきたようにウルルを楽しむならオプショナル・ツアーが必須となります。1日にひとつかふたつのツアーに申し込みながら、残りの時間をホテルでゆっくりと過ごすのがいいんじゃないかな。私の宿泊したホテル「Sails in the Desert」は大きなプールもあってとても快適でした。

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宿泊はエアーズロック・リゾート内のホテル「Sails in the Desert」。

最後に、旅の途中で購入してとても重宝したものをご紹介。10月のオーストラリア内陸部は気候的に過ごしやすかったのです(それでも昼間は30度を超えます)が、ひとつだけ困ったのはコバエが多いこと。噛んだりしないので害はないのですが、顔の周りを飛ばれると少し気になる……そこで、ショッピング・センターでFly Net(ハエ除けネット)を購入。10AUD(約¥1,000)くらいでした。

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遠くから見ると手に乗せたケーキのようなウルル。

最新の調査では6万5000年ほど前にアボリジナルの人々はオーストラリア大陸に到達していたのだとか。現生人類では最古の継続文化をもつ民族であるアボリジナルの人々に改めて敬意を表し、本記事では差別的なニュアンスを含むアボリジニではなく、“アボリジナルの人々”という表現を用いました。

問い合わせ先

オーストラリア政府観光局

ノーザンテリトリー政府観光局

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この記事の執筆者
女性ファッション誌や富裕層向けライフスタイル誌、グルメマガジンの編集長を歴任後、アマゾンジャパンを経て独立。得意なジャンルに食、酒、旅、ファッション、犬と馬。
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秋山 都
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秋山 都