「〇〇業界もジリ貧だ」とか、「ジリ貧生活によって支援を必要としている人をサポートする」というように、ビジネスシーンやニュースなどで見聞きすることがある「ジリ貧」。これは「じりじり貧しくなる」というフレーズを略したものですが、正しい意味を説明できますか? じりじり貧しくなるってどういう状況? 今回はこの「ジリ貧」について確認していきましょう。
【目次】
【「ジリ貧」とは?「意味」と「語源」】
■読み方
「ジリ貧」と書いて「じりひん」と読みます。
■意味
じりじりと貧しくなること。また、じりじりと悪い状況に落ち込むことを言います。また、取引相場で値が次第に安くなること。「ジリ貧状態」などと使いますね。「じりじり」は、「ゆっくりと少しずつ、しかも確実に迫るさま」や「ゆっくりと少しずつ進行するさま」を表します。つまり、「ジリ貧」は、「ゆっくりと少しずつ貧しくなること」や「徐々に悪い状態に陥ること」というわけです。
■由来
「ジリ貧」の由来は、第一次世界大戦後の1920年ごろから起きた日本経済の不況に由来するといわれます。勝利後の日本はしばらく好景気に沸きましたが、ヨーロッパ各国が市場に復帰してからは調子のよかった日本製品の輸出量が激減。対海外向けで成長してきた企業は業績悪化が著しく、株価も暴落しました。こうして、一旦は急上昇した日本経済は徐々に不況に陥ります。このよう「じりじりと(徐々に)貧しくなっていく」状況を、日本人自ら「ジリ貧」という言葉で表したのです。
【「ジリ貧」の使い方がわかる「例文」4選】
■1:「21世紀になって日本がジリ貧に陥るとは、戦後の日本経済を支えてきた世代には想像もできなかっただろう」
■2:「外食は極力せず、腹八分目以下にとどめ、間食もせず…と、ジリ貧からの食生活改善だったけれど、健康診断でほめられた」
■3:「予備テストの結果がジリ貧状態で落ち込む」
■4:「バブル崩壊後の親の経済状況を目の当たりにして育った世代は、ジリ貧だけは避けたいと経済観念がしっかりしている」
【「ジリ貧」を言い換えると?「類語」に「関連用語」もチェック!】
■類語
・ジリ安:株式などの相場がしだいに安くなっていくこと。
・右肩下がり:後になるほど数値が低くなること。後になるほど状態が悪くなること。
・困窮(こんきゅう):どうしてよいかわからないで物事の処置に苦しむこと。特に、貧乏で苦しむこと。
・窮迫(きゅうはく):行き詰まってどうにもならなくなること。特に、金銭的に差し迫って困り果てること。
・逼迫(ひっぱく):行き詰まって余裕のなくなること。苦痛や危難が身に迫ること。
■関連用語
・ドカ貧:急激に貧乏になること。
・青息吐息:困って苦しいときなどに、弱りきって吐くため息。また、そのようなため息の出る状態のこと。
【「ジリ貧」の「対義語」】
徐々に貧しくなっていく「ジリ貧」に対する対義語を、一気に貧しくなるという点から言うと、「ドカ貧」でしょう。一方、徐々に良くなっていく状態を表す言葉としては、尻上がり、右肩あがり、ジリ高、があります。この3つは、経済用語としても、でもよく使われます。また、「次第に栄えること」という意味で「末広がり」も対義語と言えます。「発展」も、「広がり、盛んになっていく」という意味ですから、「ゆっくりと悪くなる」ジリ貧とは真逆。これも対義語です。
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「ジリ貧」は本来、さまざまない事象において「じりじりと、徐々に悪化していくこと」を指しますが、「今月もあと数日、給料日まではジリ貧生活だ」などと、主に経済的に苦しい状況を指す言葉として定着しています。「貧乏」や「苦しい」よりちょっとライトに聞こえて、使いやすいのかもしれませんね。とはいえ状況が厳しいことに間違いありません。来年はじりじりとでもいいから豊かに栄えて、明るいニュースが多い年でありますように!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社) :