年末恒例の、京都・清水寺貫主の揮毫(きごう)により発表される”今年の漢字”、2023年は「税」でした。この漢字が選ばれたのは、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年以来、2回目です。1年を通して増税の議論がなされたり、インボイス制度の導入やふるさと納税のルール厳格化など、確かに今年は「税」についてあたふたした年だった…と感じている人も多いのでは? そんな「税」のなかでも、今回は「内税」について解説します。

【目次

「内税」と「外税」いまだに混乱しませんか?
「内税」と「外税」いまだに混乱しませんか?

「内税」とは?「意味」など基礎知識】

■読み方

今さら…ですがおさらいしましょう。「内税」は「うちぜい」と読みます。ちなみに「外税」は「そとぜい」で正解です。

■意味

「内税」とは、「商品やサービス本体の価格」に「消費税分の金額」を含めた価格表示の方式です。

■「内税」と「外税」の違い

「外税」は、本体価格(商品やサービスそのものの価格)の表示方式で、たとえば「本体価格1,000円・消費税100円」や、「1,000円」とだけ表示して、会計時に消費税分を足した「1,100円」を支払ってもらう、というもの。対する「内税」の表示は「1,100円」となります。支払う金額は同じでも、確かに「内税」のほうがわかりやすいですね。


「内税」は「いつから」?導入した「理由」】

■いつから?

消費税込みの「内税」表示が義務化されたのは2021年4月1日です。「内税表示」は「総額表示」とも呼ばれています。

■導入した理由

「内税」は、「プライスタグなどに記されている価格と、実際支払う金額が異なるのは、消費者を混乱させかねない」という配慮もあってのこと。確かにあらかじめ税込みで表示されていれば、「消費税分を考えていなかったから、会計時に思いのほか高くて驚いた」といった事態を減らせるでしょう。現在、内税表記が義務化されていますが、実は、外税表示のままでも罰金などのペナルティは課せられません。個人商店などで、以前のままの外税表示を見かけることがあるかもしれません。また、一方で、インボイス制度の対応として、外税表示に戻した、という個人商店もあります。


【何が10%で何が8%?軽減税率についてもおさらい!】

日本で初めて消費税が導入されたのは1989(平成元)年4月1日。その際の税率は3%で、1997(平成9)年に5%、2014(平成26)年に8%と段階的に引き上げられ、2019(令和元)年10月に消費税10%時代に突入。この際「人間が食べる飲食料品と定期購読契約の新聞は軽減税率として8%に据え置き」という、ちょっとややこしいことになりました。消費税は物品購入だけでなく、飲食などのサービスに対しても課せられるので、「店内で飲むコーヒーは消費税10%だけど、持ち帰りのサンドイッチは8%」などという事態が起こり、適用開始当初は、提供する店側も、消費者側も混乱したものです。

消費税率の違いの単純な覚え方として「贅沢品は10%で生活必需品は8%」という考え方もあるのですが、例外があったり、必需品か贅沢品かは個々人によるところがあったりと、わかりにくい面もあります。混乱しやすい物品やサービスについて挙げてみましょう。

■軽減税率8%

・人間が食べる食材(つまり飼育している動物などのエサは正確にはNG)や飲料水などの飲食料品

・テイクアウトのファストフードや弁当、デリバリーの料理

・定期購読契約の新聞

■消費税10%

・店での飲食(コンビニエンスストアやイベント会場の飲食スペースも「店」に分類され、10%)

・酒類

・ペットフード

・ケータリングサービス

・駅売店やコンビニなどで購入する新聞

同じ飲料カテゴリーですが、ペットボトルの水は8%、酒類には10%が適用されます。また、食品を届けるだけのデリバリーは8%、届け先で調理をしたり盛り付けたりなどのサービスを含むケータリングは贅沢品とみなされ10%に。新聞も、定期購読なら生活必需品で、割高な店舗販売は贅沢品、ということになります。


【「内税」から「本体価格」を知る方法

価格に見合う価値があるかどうか、あるいは価値の割にお手ごろなのかどうか…など、本体価格を知りたいこともあるでしょう。「内税」から「本体価格」を割り出す計算方法は「内税価格÷(1+税率)」です。例を挙げてみると、消費税10%の5,500円の化粧品は「5,500円÷1.10=本体価格5,000円」、軽減税率8%の130円のペットボトルの水は「130円÷1.08=本体価格120.3703…円」ということに。

逆に、本体価格に税金分を足して内税表記する場合の計算式は「本体価格×(1+税率)」です。本体価格10,000円のセーターは消費税10%なので「10,000円×1.1=内税表示11,000円」、本体価格3,000円の牛肉は軽減税率8%で「3,000円×1.08=内税表示3,240円」となります。

ここでおさえておきたいのは、計算上どうしても出てしまう小数点以下は厳密に四捨五入されるわけではないということ。本体価格が3,515円で消費税10%であれば、「3,515円×1.1=3,866.5円」になります。小数点以下は四捨五入するという法則なら3,867円になるわけですが、小数点以下は切り捨てて3,866円としたり、一の位も切り捨てて3,860円とするケースも。端数は売り手側の良識や良心で…ということのようです。


【「内税」は外国人にこう説明しよう

「内税」は「税込み価格」ということなので、英語では[tax-inclusive priceing][price inclusive of tax][price including tax]などと表します。

・All the prices in our store include consumption taxes.(当店の価格表示はすべて内税です)

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2023年10月から適用された「インボイス制度」により、経費精算などで消費税が10%なのか、軽減税率8%なのかを明確にしなければならない…というシーンも。「内税」や「本体価格」を、より意識するようになったのではないでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/政府広報オンライン/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :