「慈悲深い人」に接すると、心に感謝と尊敬の気持ちが湧き上がってきませんか?「慈悲」は「慈(いつく)しみの心」「憐(あわ)れみの心」を表し、仏教用語に由来します。今回は「慈悲深い」の意味や語源、使い方がわかる例文や言い換え表現を解説します。
【目次】
【「慈悲深い」の「読み方」と「意味」、「語源」】
■読み方
「慈悲深い」は「じひぶか-い」と読みます。
■「慈悲」とは?「語源」は?
「慈悲深い」を理解するために、まずは「慈悲」の意味について学びましょう。「慈悲」の語源は、菩薩の心を表現した仏教用語。「慈」はサンスクリット語の「maitrī(マイトリー=友情)」にあたり、深い慈しみの心を指します。そして「悲」は「karunā(カルナー=同情)。深い憐 (あわれ) みの心を指します。仏典では、生きとし生けるものに幸福を与える「与楽 (よらく)」が「慈」であり、不幸を抜き去る「抜苦 (ばっく)」が「悲」であるとされ、「慈」と「悲」はほとんど同じ心情を表します。
では「慈しみの心」とはどんな心でしょう。「慈しみ」とは「愛しみ」とも表し、「目下の者や弱い者に愛情を注ぐ。かわいがって大事にする」という意味をもちます。例えば、泣いている子どもに対し、悲しみや不幸を取り除き、幸せを与えたいと願う気持ちが「慈悲の心」。「慈悲深い」は「深い愛情で人をかわいがり、大切にする気持ちが強い状態」のこと、「万人に対する深い愛をもった状態」を表す言葉なのです。
【「慈悲深い」の「使い方」がわかる「例文」3選】
■1:「この記事を読むまで、『慈悲深い』はキリスト教由来の言葉かと勘違いしていた」
■2:「○○氏はとても親切で慈悲深いと、昔から近所でも評判の人だった」
■3:「彼女ほど慈悲深い人は見たことがない。穏やかで、常に微笑みをたたえたその姿は、まるで仏さまのようだ」
【「慈悲深い人」の特徴は?】
「慈悲深い人」とは、具体的にどのような人を指すのでしょうか。
■困っている人に、損得抜きで救いの手を差し伸べる
■言葉使いに他者への気遣いが溢れている
■優しい笑顔を絶やさない
■感情の起伏をコントロールできるので、常に穏やか
■誰に対しても平等な態度で接する
■他人の失敗を咎めることがない
■ボランティア活動など、献身的な生き方をしている
■周囲から慕われ、周りには自然と人が集まる
【「類語」「言い換え」表現】
「深い愛情で人をかわいがり、大切にする気持ち」である「慈悲深い」と似た意味の言葉をいくつかご紹介しましょう。
■情け深い
■深く愛おしむ
■慈しみ深い
■深い恩情を寄せる
恩情とは、情け深い心、慈しみの心のことです。
■アガペー
アガペーとは、新約聖書における神の人間に対する愛。人間の、神や隣人に対する無私なる愛。無償の愛のことです。
【「英語」で言うと?】
英語で表現する際は「慈悲深い、哀れみ深い、情けに富んだ」といった意味をもつ[merciful]が使われます。
・a merciful God(慈悲深い神)
・a merciful death(安楽死)
・She is merciful toward others.(彼女は他人に慈悲深い)
また、「思いやり」や「深い同情」を表現するのであれば、[compassion]が使えます。
・compassion for the refugees.(避難民に対する哀れみの念、思いやり)
・out of compassion(哀れに思って、同情心から)
・show [demonstrate, display] compassion(同情・思いやりを示す)
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「慈悲深い」の「対義語」は、「無慈悲」あるいは「冷酷」「冷血」「無情」「非情」といった言葉が当てはまります。また、「ずるい」「狡猾」「残酷」「残虐」も「慈悲」の真逆にあるものといえるでしょう。「慈悲深い人」は、困った人を見れば無条件で救いの手を差し伸べます。自分ができる限りのことをして、何とか助けてあげたいと自然に心が欲するのです。「慈悲深い人」は仏のような人ですから、一般の人間が努力して到達できる域ではないかもしれません。とはいえ、「慈悲の心」「慈悲の気持ち」を意識して過ごすことで、少しでもその領域に近づきたいもの。新年を迎え、最も清々しくピュアな心であろう今こそが、慈悲の心を育てる絶好のチャンスかもしれません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :