「あ〜、失敗した!」と頭を抱えてしまうようなシーンで、一瞬頭をよぎるのは「後悔、先に立たず」という言葉。これは「あとで悔やんでも遅いから、何か行動を起こす前に熟慮し、準備を怠らないことが大切なんだよ」という意味で、多くの人は「わかっていたけど…あのときああしておけば…」と悔やむのです。今回は「後悔、先に立たず」を深掘り! 「覆水盆に返らず」との違いや同じような意味の慣用句、使い方がわかる例文について解説します。
【目次】
【「後悔、先に立たず」を理解するための「基礎知識」】
■「読み方」
「後悔、先に立たず」は、「こうかい、さきにたたず」と読みます。
■「意味」
「後悔、先に立たず」は「済んでしまったことは、悔やんたところでり返しがつかない」ことを意味することわざです。「何か行動を起こす前に熟慮し、準備を怠らないことが大切である」という意味で用いられ、過去についてだけでなく、将来への心構えを示す言葉でもあります。
■「語源」
「後悔、先に立たず」の明確な「語源」や「由来」はないようです。
■「覆水盆に返らず」との違い
「覆水盆に返らず」は、中国の『野客叢書』を由来とする故事成語です。「一度離別した夫婦の仲は元には戻らない」ことを表すのが本来の用法ですが、現在では「一度してしまったことは取り返しがつかない」ことをたとえて用いられるのが一般的。「後悔、先に立たず」との違いは、「覆水盆に返らず」は客観的な事実を述べているのに止まり、「後悔」のニュアンスは含まれていません。
【「使い方」がわかる「例文」3選】
■1:「恥ずかしい誤字のあるメールを取引先の担当者に送ってしまった。送信前にしっかり見直しておけば…後悔先に立たずだ」
■2:「彼女と気まずい関係になって以来、ろくに話をできないまま離職してしまった。後悔先に立たずと言うけれど、本当に悔やみきれない」
■3:「後悔先に立たずというでしょ。今、頑張らなくていつ頑張るの?」
【似た意味をもつ「ことわざ」「慣用句」と「類語」「言い換え」表現】
■「ことわざ」 「慣用句」
・あとの祭り
「ものごとが、その時機をはずすと、無益なものになってしまうこと。手おくれ」を意味する慣用句です。由来は「賑やかなお祭りあとの閑散とした会場」「祭りが終わったあとの山車(だし)」「自分の死後の祭り」などの説があります。
・臍(ほぞ)を噛(か)む
へそはかもうとしても噛めないことから、「後悔してもどうにもならない」を意味するたとえ。
■「言い換え」表現
・後悔してもしきれない。
・やっときゃよかった…。
【対義語は?】
■備えあれば憂いなし
「万一に備えて、あらかじめ準備をしておけば、事が起こっても少しも心配ごとがない」という意味の故事成語。「備えあれば憂えなし」、「備えあれば患(うれ)いなし」とも。
■転ばぬ先の杖
「転ばぬ先の杖」は、「転んでから杖を用意したのでは遅い」ことから転じて、「事前に注意していれば失敗することがない」ということを意味します。同じ意味で「こけぬ先に杖突こ」もあります。「備えあれば憂いなし」と、ほぼ同じ意味の言葉ですね。
■濡れぬ先の傘
「濡れぬ先の傘」は「転ばぬ先の杖」とほぼ同義。「雨が降る前に傘を用意すること」から転じて、「失敗しないように、前もって用意しておくこと」を意味します。
■伸(の)るか反(そ)るか
「伸るか反るか」は「成功するか失敗するか、成否を天に任せて、思いきってやること。いちかばちか」という意味のことわざです。「結果は運に任せる」姿勢は「後悔、先に立たず」の反対の意味と言っていいでしょう。
【「英語」で言うと?】
「後悔先に立たず」と同じような英語の慣用表現をご紹介しましょう。
■It is no use crying over spilt milk.
「こぼれたミルクを見て泣いても無駄」を意味する慣用表現で、「覆水盆に返らず」の英訳として提示されるフレーズです。類語とも言える「後悔先に立たず」の英語表現としても使えます。
■What is done cannot be undone.
こちらも「やってしまったことは元に戻しようがない」という意味の慣用表現で、「後悔先に立たず」「覆水盆に返らず」と同じような意味で使われます。
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「後悔、先に立たず」という言葉は、過去のことがらについてだけでなく、将来への戒めとして使える言葉です。ある程度の準備をしたら、やらない後悔よりも「伸るか反るか」の人生を選ぶ人もいるでしょう。いずれにせよ、「大人の語彙力」を高めるのは、今! こればかりは「後悔、先に立たず」にならないように、日々の積み重ねが大切です。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『故事成語を知る辞典』(小学館) /『すぐに使える! 教養の「語彙力」3240」(西東社) :