「業を背負う」は「自分が過去に犯した悪行の報いを身に受けつつ生きる」ことを意味する言葉です。仏教用語を由来としているため少々難解に感じるかもしれませんが、使い方が理解しやすい例文や言い換え表現などを使って、わかりやすく解説します。

【目次】

業を背負うとは、少々古風な響きの言葉です。
少々古風な響きの言葉です。

「業を背負う」を理解するための「基礎知識」

■読み方

「業」という文字の音読みは「ギョウ」「ゴウ」。訓読み は「わざ」。「業を背負う」は「ごう-を-せお-う」と読みます。

■語源・由来

「業を背負う」の「業(ゴウ)」はもともと、仏教用語で、古代インドのサンスクリット語[karman(カルマン)]の訳語です。「人間の身・口・意によって行われる善悪の行為」や「前世の行いによって、この世で受ける報い」を意味します。仏教の教えでは、よい行いからはよい運命が導かれ、悪い行いからは悪い運命が導かれます。これが「因果応報」です。現在では「業」はネガティブな意味で使われることが多く、「自分が過去に犯した悪行の報い」として用いられます。「背負う」は「困難なものごと、重大な責任、迷惑な仕事などを引き受ける」こと。この場合の「困難な物事」は「業」、すなわち「自分が過去に犯した悪行の報い」です。

■意味

「業を背負う」とは、「自分が過去に犯した悪行の報いを身に受けつつ生きる」ことを意味する言葉です。自分が過去に行った裏切り行為や嘘などの悪行を認めているときや、背徳感や自責の念を感じているときに使われます。また、「自分は前世の報いを受けている」という意味で「業を背負う」と使うこともあります。

少しわかりにくいですね。使い方を理解するために例文をチェックしてみましょう。


【「業を背負う」の「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「何か悪いことが起こるたびに、身勝手で愚かだった若いときの自分を思い出す。この先もずっと、業を背負ったまま生きていくのだろうか…」

■2:「彼は友人もつくらず、仕事以外は外出もせず、世捨て人のような暮らしをしている。よほどの業を背負った人なのだろう」

■3:「たとえ業を背負った人間であっても幸せになれるというのが仏陀の教えと聞いた。そうあってほしいものだ」

■4:「自分が業を背負った人間であるという覚悟をもった人は強いものだ」

■5:「ここ数十年、わが家はたび重なる災難に見舞われている。先祖代々の業を背負っているのだろうか…?」


【「業を背負う」の「類語」「言い換え」表現は?】

■因果応報

仏教用語で「ある行いが原因となって、生まれ変わった次の世では、その結果としての報いを必ず受ける」という意味。ただし現在では「悪いことをすれば必ず報いがある」といった意味で使われるのが一般的。

■自業自得

仏教用語「自業自得果」の略で、「自分のした悪いことの結果を自分で受ける」という意味。「(悪い結果となったのは)本人の責任だ」という意味合いで使われることが多い四字熟語です。責任云々よりも「そういう運命だ」といったニュアンスを強調したいときは「因果応報」が適しています。

■悪行の報いを受ける

■悪い運命を受け入れる

■自分が犯した罪を背負う

■身から出た錆(さび)


【 「英語」で言うと?】

「業」に相当する英語は[karma]です。「業が深い」は[be deeply sinful]と表現できます。

・Man must live carrying the burden of his karma.(人間は業を背負って生きていかねばならない)

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仏教用語である「業」には「理性で制御できない心の動き」という意味もあります。こちらは「業を煮やす」というフレーズで使われ、「思うようにいかないことへの怒りや腹立ち」を意味しています。仏教の教えでは「よい行いをすればよい運命が訪れ、悪い行いをすれば悪い運命が引き起こされる」とされています。こう聞いて、ほっと胸をなでおろす人、背筋に冷たいものを感じる人…あなたはどちらですか?

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :