「鶏口牛後」を知っていますか? 「とりくち…」「けい…?」…そもそも読めるでしょうか。今回はこの熟語について、意味や使い方、言い換え表現などをわかりやすくさくっと解説します。
【目次】
【「鶏口牛後」とは?「読み方」から「由来」まで基礎知識】
■読み方
「鶏口牛後」は「けいこうぎゅうご」と音読みします。
■意味
大きな組織の末端にいるより、小さな組織のトップになれ、という意味です。「体の小さな鶏」は「小さな組織や団体」、「口」は「口先」から「トップ」を、そして「体の大きな牛」は「大きな組織や団体」、「後」は「尻尾やお尻」、つまり「末端」を表しているのですね。
■由来
「鶏口牛後」の由来は、中国初の通史『史記』のなかの「蘇秦伝(そしんでん)」にあります。蘇秦(そしん)とは中国戦国時代の政治家のひとり。秦以外の6か国(韓・魏・趙・楚・燕・斉)の王に対して「大国である秦に従うより、独立国として連合して秦に対抗すべきだ」と説き、同盟を組ませて秦の侵略を防いだという策士です。その際、韓の宣恵王(せんけいおう)に「むしろ鶏口となるも、牛後となるなかれ」と説得したことから、「鶏口牛後」という四字熟語が生まれました。
【「正しい使い方」がわかる「例文」5選】
■1:「人生はチェレンジが大切。鶏口牛後の気持ちで独立を決意しました」
■2:「新規事業の立ち上げを提案したり、立て直し案件に積極性を見せるなどして、組織の中にいても鶏口牛後を実践することは可能だ」
■3:「大手ではなく小規模なスタートアップ企業に就職したことで、早くから自分の実力が発揮できたと思う。これが鶏口牛後というものだね」
■4:「教授や先輩から、これからの時代は鶏口牛後で個々のスピードで成長していくべきだとアドバイスされた」
■5:「少数精鋭で結果を出し続けている御社であれば、私が目指している鶏口牛後が実現できるのではないかと志願いたしました」
「鶏口牛後」は、就活や転職を話題にする際によく使われる熟語だということがわかりますね。ただし、会話の相手が「鶏口牛後」の「鶏」に当たる場合は、ストレートすぎないように注意したいものです。
【「鶏口牛後」をわかりやすく言うには? 対義語も!】
突然「けいこうぎゅうご」と言われるとピンとこない人もいるでしょう。同じ意味で、音で聞いてもわかりやすいことわざがあるのでご紹介します。
■鯛の尾より鰯(いわし)の頭
高級魚の鯛のしっぽより、雑魚といわれる鰯のトップのほうが良い、ということわざです。これは音で聞くだけでもよくわかりますね。
「鶏口牛後」の反対の意味を表すことわざも紹介しましょう。
■寄らば大樹(たいじゅ)の陰
身を寄せるなら大木の下が安全である、という意味のことわざ。頼るのなら、勢力のある人や組織のほうがよいというたとえです。
■犬になるとも大所(おおどころ)の犬になれ
「大所」を「大家(おおや/たいか)」とも言います。これも、どうせ下につくなら大きな権力の元が安全、ということですね。
【「英語」にも同じような格言はある?】
「鶏口牛後」は、中国の『史記』に記された格言が四字熟語として使われているものでした。
英語では[Better be the head of a dog than the tail of a lion.]が同じ意味に。直訳すると「ライオンの尾より犬の頭が良い」となります。鶏と牛、鰯と鯛、犬とライオンなど、比較するものが違っておもしろいですね。
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動物を用いた格言や熟語はたくさんあります。今回の「鶏」で言うなら「鶏群の一鶴(けいぐん-の-いっかっく)」も覚えておきたいことわざです。これは「凡人の中に際立って優れた人物が混じっている」という意味。「掃き溜めに鶴」も同義ですが、「鶏群の一鶴」のほうが美しいのでおすすめします!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『使い方のわかる 類語例解辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/ :