「愚鈍」という単語を辞書で引くと、「判断力・理解力が鈍(にぶ)いこと。頭が悪くのろまなこと。また、そのさま」とあります。かなり強い意味なので、使うシーンやタイミングに注意が必要です。今回はこの「愚鈍」を、間違いなく使うためにチェックをしていきましょう。
【目次】
【「愚鈍」の基礎知識 】
■読み方
「愚鈍」は「ぐどん」と読みます。
■意味
判断力や理解力がにぶいこと、頭が悪くのろまなこと、またそのさまを表す名詞・形容動詞です。「愚鈍さ」という形でも使用します。「愚」という字は、知能の働きが鈍いことを意味し、「愚かさ」や「馬鹿なさま」を表します。さらに、「愚弄(ぐろう)」のように「馬鹿にする」「騙す」という意味と、「愚見(ぐけん)」のように自分の意見や考えの謙遜を表すことも。そして「鈍」は、心の働きの鈍いこと、愚か、間抜けという意味が。このふたつの漢字による「愚鈍」が、いかにダメな様子を表すかわかりますね。
【「愚鈍」の使い方がわかる「例文」6選】
■1:「慣れない仕事とはいえ、あまりの理解力のなさに思わず愚鈍だな…って思ったよ」
■2:「彼は愚鈍なところがあるけれど、愛嬌があって憎めない」
■3:「先鋭ばかりのチームに配属されて、自分の愚鈍さを実感する毎日だ」
■4:「愚鈍な人間のように振る舞っているが、実は利発で、こちらを油断させる狙いなのでは?」
■5:「愚鈍な上司の尻ぬぐいばかりで、本来の仕事に支障を来すなんて本末転倒だ」
■6:「そんな質問は愚鈍だと言われた。愚問って言えばいいのにね(笑)」
例文を見てもわかるように、本人に向かって「愚鈍だ」とは言いません。第三者との会話や、自虐的に自分のこととして使用します。それだけに、ビジネスシーンでは使用するタイミングに注意が必要なのです。かなり強い意味の言葉なので、たとえ本人がいなくても、取引先の人などがいるような場での使用は適切とは言えません。
【「類語」「言い換え」「対義語」】
「愚鈍」は使い方に気を使うべき言葉なので、会話の中ではうまく言い換えたいもの。類語や言い換え表現、対義語など、関連語を知っておくとよいでしょう。
■類語
・愚劣(ぐれつ):愚かで劣っていること。ばかばかしいこと。また、そのさま。「愚劣極まりない話」「愚劣な行為」
・遅鈍(ちどん):知恵のまわりが遅くて鈍いこと。また、そのさま。「いかに遅鈍な私といえども」
・虚仮(こけ):思慮の浅いこと。愚かなこと。また、その人。「虚仮の一念」「虚仮おどし」
「鈍重(どんじゅう)」という似た言葉もありますが、こちらは動きが鈍いことを表します。頭の働きが鈍いのは「愚鈍」、動作が鈍いのは「鈍重」と使い分けましょう。
■言い換え表現
本人に向かって「あなたのその愚鈍さ、改善できないかな」はNG! この場合の「愚鈍」を言い換えてみましょう。
「あなたのそのペースを、ほかの人に合わせられるよう頑張ってほしい」
「あなたの仕事をレベルアップさせるための方法を考えてみよう」
■対義語
・利発(りはつ):さとく賢いこと。才知があって頭の回転が速いこと。また、そのさま。「利発な子ども」
・鋭敏(えいびん):感覚などの鋭いこと。才知が鋭くさといこと。また、そのさま。「鋭敏な聴覚」「鋭敏な頭脳」
・才気(さいき):才知の優れたはたらき。ものごとの動きに対し、適当な判断を下せる精神能力。「才気煥発」
【英語で「愚鈍」は何て言う?】
「愚鈍」は[stupidity]や[imbecility][foolishness]でも表せます。
・He is stupid as a donkey.(彼はロバのように愚鈍だ)
・a foolish action(愚行)
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「愚鈍」は悪口になってしまう言葉である――ということを覚えておきましょう。本人がいなくても陰口と捉えられかねません。言いっ放しではなく期待感や改善してほしい旨を付け加えた文脈で使用するよう心掛けたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :