「端折る」と書くこの単語は「はしょる」と読みます。「省く」という意味で日常会話でもよく使うと思いますが、ビジネス的にはOKなのでしょうか? ということで今回はこの「端折る」について、使い方や由来などを解説します。

【目次】

上司に「ここ、端折っていいですか?」はOk? NG?
上司に「ここ、端折っていいですか?」はOk? NG?

【「端折る」はどういう意味?由来など基礎知識】

■読み方

「端折る」で「はしょる」と読みます。

■意味

「ある部分を省いて短く縮める」「省略する」という意味です。「詳しい説明を端折る」というように使いますね。

■由来

「端折る」の語源は「端を折る」で、「はしょる」は「はしおる」の音変化したもの。「端を折る」とは、女性の着物の裾を折り上げて帯に挟むことを指します。時代ドラマなどで、足さばきがいいように裾の端を折り上げて帯に挟んで働く女性の姿を見ることがあると思いますが、あれがそもそもの「端折る」という状態です。

着物になじみがある人なら「おはしょり」を連想するかもしれませんね。高貴な人の着物や袴は裾を引きずるほど長くつくられたことに由来しますが、そんな着物では日常生活に不都合があります。そこで庶民は身長に合わせた引きずらない着物を着ましたが、女性は敢えて長くつくり、ウエストのあたりでたくし上げて帯紐で縛って止める仕様が一般化しました。これが、帯の下に7~8cm出る「おはしょり」です。この余分な長さがあるために、ある程度までなら体型の違う人でも同じ着物を着ることができたり、傷みやすい裾を数センチ切って仕立て直したりなど、日本人は昔からエコな生活をしていたというわけです。ちなみに、男性用は着用時にくるぶし程度の長さになる対丈(ついたけ)の着物を着ます。

ちょっと長くなりましたが、「着物の裾を折り上げて帯に挟む」から「着物の裾を引きずらない長さにたくし上げて止める=おはしょり」となり、物事を省略したり簡潔にすることを「端折る」というようになったのです。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「前回ご説明しましたので、特性については端折らさせていただきます」

省略すること自体が失礼に当たる場合があるので、「端折る」はかしこまったシーンでは不適切な言葉ともいえます。この場合のように「~させていただきます」と敬語表現をつけてギリギリOKです。

■2:「このプレゼン台本だけど、もっと前振り部分を端折ったほうが、効果をダイレクトに伝えられるんじゃないかな」

■3:「頭の回転が速い人は説明を端折りがちなので、理解するのに苦労する」

■4:「プレゼンシートが膨大になってしまいました。どこを端折ったらいいかアドバイスをいただけますか?」

■5:「時間オーバーになりそうなので、〇〇さんの挨拶は端折ってもいいですか?」

親しい目上の人なら4や5はOKですが、そうでない、気を遣う相手には言い換え表現のほうがいいでしょう。次章で類語などを確認してください。


【ビジネスシーンで使える「類語」「言い換え」表現】

・要略(ようりゃく)

必要な点だけを取り、まとめあげる。あらまし。

・省略(しょうりゃく)

簡単にするために一部を取り除くこと。

・省約(しょうやく/せいやく)

省いて簡単にすること、省いて短くすること。

・概括(がいかつ)

内容などのあらましを、大ざっぱにまとめること。要点を捉えてまとめること。

・割愛(かつあい)

惜しいと思うものを、思いきって捨てたり手放したりすること。「紙数の都合で割愛する」

・かいつまむ

物事の必要な点だけを取り出して簡単にまとめる。概括する。


【英語で「端折る」は?】

[leave out ][omit][short][skip/skip over]など、「簡潔」や「省略する」という意味をもつ英語で言い表せます。

・As it is a long story, I will leave out parts of it.(長い話だから端折ってしまおう)

・Can I omit this item?(この項目は省略してもよいですか?)

・To make a long story short…(端折って話すと…)

・You may skip (over) the unrelated parts.(関係のないところは端折ってよい)


【「端折る」の使用上の注意】

省略したり割愛するのは失礼にあたる場合もあります。目上の人や気遣いが必要なシーンでは「端折る」とは言わず、「前回説明させていただきましたので今回は割愛させていただきます」などと、その理由を述べつつ言い換えるのが得策。また、「わたくしからの説明は省略いたしますが、資料に詳しい解説がございますのでお時間のある時にお目通しください」など、端折ること、省略することを相手に不安に思わせないひと言を添えるのが“大人の語彙力”というものですね。

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「端折る」は着物から発生した言葉だなんて、意外だったのではないでしょうか? 態度を改め気持ちを引き締めることをいう「襟を正す」、行動を共にした人と別れたり関係を断つことは「袂を分かつ」、相手をおろそかにして冷淡にあしらったり邪魔者扱いすることは「袖にする」というなど、着物の部位を用いた言葉はたくさんあります。ぜひ、インプットしてビジネス雑談に役立ててくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :