季節の区分法のひとつである「穀雨」は、現代の日本では4月20日ごろから約15日間を指しますが、どのような季節なのでしょうか? この連載でたびたび登場する二十四節気(にじゅうしせっき)についても、さくっと解説します。

【目次】

4月は前月からの「春分」に続き、「清明」「穀雨」と季節が移ろいます。
4月は前月からの「春分」に続き、「清明」「穀雨」と季節が移ろいます。

【「穀雨」とは?「読み方」「意味」そして「二十四節気」もおさらい】

■読み方

「穀雨」「は「こくう」と読みます。「こくあめ」ではありません。

■意味

「穀雨」は二十四節気のひとつで、穀物を育てる雨を意味する時期です。期間は新暦(現代使われている暦)の4月20日ごろから約15日間を指します。この時期は、前年の秋に種をまいた穀物の成長を促してくれる雨が降り、稲に育っていくころ。農耕に関わる人々にとっては恵みの雨の季節なのです。

■「穀雨」の由来

冬から春へと大きく変化していた気候が安定し、暖かな雨が降って田畑を潤す「穀雨」。穀物が成長し、種まきにも適した時期ですが、名前の由来は「雨生百穀(うりゅうひゃっこく)」にあるといわれています。この言葉には「春の雨が百穀を生む」という意味があり、地上にある食物に水分と栄養が貯め込まれる時期とされるため、昔から種まきや田植えは「穀雨」を目安に行われてきました。

■二十四節気をおさらい

古代中国でつくられた季節の区分法。黄道(地球から見て太陽が移動する天球上の経路)を基準に、1年を24等分して気候の推移を示したもので、12の正節(せいせつ)と12の中気(ちゅうき)からなります。私たちにもなじみが深い春分、夏至、秋分、冬至も二十四節気のうちのひとつです。そして各節気の期間は約15日。今から二千何百年も昔の中国黄河流域の気候に基づいて定められたものなので、11月23日ごろの「小雪(しょうせつ)」や、12月8日ごろの「大雪(たいせつ)」など、現代の日本の気候とはそぐわないものもあります。

■2024年の「穀雨」

2024年の「穀雨」を正確に示すと、4月19日の23時から「立夏(りっか)」を迎える5月5日の9時10分まで。二十四節気はこの約15日間のことを表しますが、初日を指していうこともあります。


【「使い方」がわかる「手紙での使用例」2選】

■1:「拝啓 穀雨の候、○○さまにおかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます」

手紙の書き出し例です。「頭語+時候の挨拶(この場合は「穀雨の候」)+安否を気遣う言葉」で始めると、スマートな大人の手紙文になります。

■2:「拝啓 穀雨の候、貴殿ますますご発展のこととお慶び申し上げます」

こちらはビジネスレターの書き出し例です。「穀雨の候」を、「穀雨のみぎり」や「穀雨の折」に置き換えて使うこともできます。目上の方への手紙や新作発表会の招待状、格式を重んじたい改まったお礼状などに使ってみてはいかがでしょう。


【「穀雨」にまつわる雑学あれこれ】

■「穀雨」の時期は「春土用」

夏の土用は知られていますが、「春土用」は知らない人も多いのでは? 年に4回、立春、立夏、立秋、立冬を迎える前の約18日間を「土用」と言います。土用は季節の移行時期。体調を崩しやすいので、滋養のあるものや縁起物を食べるといいといわれています。

■「穀雨」に何を食べると良い?

「春土用」には「い」のつく食べ物や白い食べ物を食べるとよいのだとか。例えばイカは「い」がつく「白い食べ物」ですから、縁起度はかなり高いといえますね。

そして「穀雨」の時期に旬を迎えるのは、タケノコ、春キャベツ、さやえんどうにアスパラガスなど。魚類では鰆(サワラ)、鰊(ニシン)、目張(メバル、目春とも書く)、鰹(カツオ)などがおいしい時期です。関東で「初鰹」はもう少しあとの初夏のころのイメージですが、鰹の消費量日本一の高知では3月後半から初鰹が獲れることから、春告魚(はるつげうお)として知られているのだとか。

■穀雨茶

中国の南方エリアでは、「穀雨」のころに茶摘みをした穀雨茶として飲む風習があるとか。この時期の新芽を摘んだ新茶は柔らかく、鮮やかな色と清々しい香りが特徴とか。また、うまみ成分であるテアニンも豊富だそう。

■「穀雨」の時期の春の雨には…

「穀雨」の時期に降る春の恵みの雨には、さまざまな呼び名があります。程よい時期に降って草木を潤し育てる雨という意味の「甘雨(かんう)」、3月から4月にかけて降る長雨は「春霖(しゅんりん)」。また、木の芽の萌える時期に降る雨を表現する「木の芽雨(このめあめ)」、「穀雨」とおなじように穀物などの生育を助ける恵の雨を指す「瑞雨(ずいう)」もあります。さらに、「穀雨」の時期に長引く雨は「菜種梅雨(なたねづゆ)」とも言います。どれも風情があって、覚えておきたい表現ですね。

***

雨が続くと憂鬱になりがち…という人も多いかもしれません。でも、「穀雨」の雨は温かい恵みの雨。感謝の気持ちを抱きつつモチベーションをあげ、雨だからこそのファッションや過ごし方を楽しんでみるというのもすてきですよね。

関連記事

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) :