5月5日は「こどもの日」、そして「端午の節句」です。この連載を読んでくださっているほとんどの方は、生まれたときから5月5日を祝日として過ごしているはずですが、なぜ5月5日なのでしょう。そして「端午の節句」とはどう違うのでしょう。 今回はこの「こどもの日」の素朴な疑問について解説します。
【目次】
【「こどもの日」を正しく説明したい!基礎知識】
■「こどもの日」は「母の日」でもある?
5月5日の「こどもの日」は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨とした国民の祝日で、この日から5月11日までは児童福祉週間とされています。「こどもの日」が男女問わず、子どもを想うだけでなく、母親に感謝する日でもあるって知っていましたか?
■いつから始まった?「こどもの日」の歴史
5月5日が「こどもの日」になったのは1948(昭和23)年、「国民の祝日に関する法律」が制定されたときのこと。前年の2月に国会で議論されたのち、制定されました。
■なぜ5月5日?「日にち」の由来
この日は古来、男児の節句とされる「端午節(たんごせつ)=端午の節句」です。
古代中国の陰陽五行説では、一、三、五、七、九の奇数を「陽」とする思想があり、月日で奇数が重なる1月1日(のちに1月7日)の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午、7月7日の七夕(しちせき)、9月9日の重陽(ちょうよう)は大変おめでたい日とされています。ところがその反面「陰」に転じやすい、ということで、災いが起きないよう邪気払いを行う日でもありました。この風習が奈良時代に日本に伝わり、5月5日に「端午の節会(せちえ)」という宮中行事がなされるようになりました。邪気を払うと考えられた「菖蒲(しょうぶ)」を身につけたり、屋根を葺き替えたり、菖蒲の葉を編んでつくる薬玉(くすだま)を飾ったりして、無病息災を祈願し、男児の健やかな成長を願ったのです。
「こどもの日」の日付けについては、こどもに関する風習として3月3日の「ひな祭り」と5月5日の「端午の節句」があったため、これを合わせて5月3日とする案もあったとか。ところが5月3日は憲法記念日にすることとなったため、気候のよい5月5日が採用されたのです。
■なぜ休日に?
1948(昭和23)年の「国民の祝日に関する法律」で「国民の祝日は休日」と定められているのです。
【「こどもの日」と「端午の節句」との違い】
「こどもの日」は、こどもの人格を重んじて幸福をはかり、母親に感謝する日。一方の「端午の節句」は男児の健やかな成長を願う日。同日であるため「こどもの日=端午の節句」と勘違いしがちですが、このふたつはまったく異なります。ちなみに3月3日の上巳節は現代は「桃の節句」と呼ばれ、女児のいる家庭で雛人形などを飾り、白酒や菱餠、桃の花などを供えて祀る行事です。男児の端午節と同様、女児の幸福を祈るために行われます。
【5月5日は何をする日?準備は万端? 】
「こどもの日」であり「端午の節句」でもある5月5日は、いろいろやるべきことがあります。整理してみましょう。
■五月人形を飾る
「兜(かぶと)飾り」や「鎧(よろい)飾り」、「大将飾り」に「金太郎人形」や「武者人形」、「神武(じんむ)人形」に「鍾馗(しょうき)人形」など、五月人形にはいろいろ種類があります。「金太郎人形」は鎧兜をまとったかわいらしい男児の人形。知恵に優れ、人望のある人間に成長するようにという願いが込められているのだとか。神代の天皇である神武天皇をかたどった「神武人形」は武勇の象徴、中国の伝説上の英雄である「鍾馗」は病気を追い払うのだそうです。
■鯉のぼりを飾る
「鯉のぼり」が誕生したのは江戸時代。もともと武家では家紋付きの幟(のぼり)を立てる習慣があり、男児が生れると神様への報告として幟を立て、加護のお願いをしました。これを庶民が取り入れたのがこどもの日の鯉のぼり。人生で遭遇する難関を、鯉が滝登りをするように突破して立身出世して欲しいという願いが込められているのです。五月晴れの空に鯉のぼりがたなびく様子は、まさに5月5日を象徴する風物です。集合住宅の多い都会ではあまり見かけなくなりましたが、室内に飾るための鯉のぼりも種類豊富にあるようです。
■行事食を食べる
「こどもの日」の行事食と言えば、「柏餅」と「ちまき」ですね。
関東地方で主流なのが柏餅です。冬になっても葉を落とさず新芽が吹くころに落葉する柏を、跡継ぎを絶やさないことにたとえた縁起担ぎとして、神事に欠かせない餅を包みました。これは江戸時代からの風習で、跡継ぎを大切に考える武士の多い江戸を中心に東日本に広がったのだとか。当時から餅の中には小豆餡や味噌餡が用いられていたようです。一方、柏が自生しない西日本で食べられるのが「ちまき」です。ちまきを食べる風習は中国の古い歴史に由来、「忠誠心が高い象徴」とされています。そのため、忠義のある子に育つことを願い、こどもにちまきを食べさせたのだとか。関西や近畿を中心に西日本へ広がりました。
■菖蒲湯に入る
邪気を祓い、疫病を退治するといわれる菖蒲の葉を湯船に入れて入浴します。これは、勝負や尚武(しょうぶ/武道、軍事を重んずること)などの言葉に通じる菖蒲に、逞しく成長することを願うもの。菖蒲湯にはリラックス作用や血行促進が期待できるので、肩こりや腰痛予防にも効果があるようですよ。「こどもの日」に、こどもも大人も菖蒲湯で体を温めるのは縁起担ぎだけではないのですね。
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大人になると自分には関係ないと思う「こどもの日」かもしれませんが、新しい知識を得た本日は、お母さまに感謝し、柏餅やちまきを食べ、菖蒲湯に入ってゆっくり体をほぐす…そんな一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html/内閣府 https://www.cao.go.jp/ :