スイーツを味わうのは至福のひととき。とりわけ一流パティシエの手がけたものは、舌だけでなく目も楽しませてくれますよね。
ただ、盛り付けが美しい一皿ほど、「これどうやって食べたらいいの?」と戸惑ってしまうことも……。そのまま食べるとボロボロになってしまったり、中身が飛び出たりしがち。品格ある大人の女性たるもの、芸術品のようなスイーツをがさつに食べちらかすような失態は、避けたいところです。
そこで今回は、マナー講師の瀬尾姫民さんから「スイーツをいただくときにやってはけないこと」を教えていただきました。ケーキ、パンケーキ、シュークリーム、パフェ、メロンについて、合計13のNGマナーをご紹介します。
■1:ケーキのフィルムを「手で」はがす
ケーキの側面のフィルムを手ではがすのは、基本的にはマナー違反。正しくは、フォークにフィルムをはさみ、ケーキやクリームのついたほうを内側にして、くるくると巻き取ります。
「ただし、T.P.Oしだいでは、正しいかどうかよりも、周りへの気配りを優先させましょう。たとえば、目上のかたとのティータイムで、相手が手でフィルムをはがしているのであれば、それに合わせるのが最良のマナーです。
正しいやり方にとらわれすぎると、かえって相手に恥をかかせることもあります」(瀬尾さん)
■2:ショートケーキのトッピングの「イチゴを真っ先に」食べる
トッピングのイチゴはただおいしいだけでなく、真っ白なショートケーキに彩を添えてくれるもの。主役のイチゴを先につまんでしまうと、見た目的に寂しくなってしまいます。
「ショートケーキは左のほうから順に一口ずつ食べていって、イチゴのところまできたら、イチゴを食べるようにしましょう。モンブランの栗も同様です。
また、ケーキ上のイチゴにフォークを強く刺そうとすると、ケーキの形が崩れたり、倒れてしまうことがあります。まずは、フォークをイチゴに軽く刺した状態で、いったんお皿に移し、安定したお皿の上でイチゴをしっかり刺し直して、口に運ぶといいでしょう」(瀬尾さん)
■3:フォークをスプーンのように使う
お箸と違って、フォークは刺して食べるのがマナー。フォークの腹にケーキを乗せて食べるなど、フォークをスプーンのように使うのは非常に不安定で、乗せたものを落としやすいのでおすすめできません。
「フォークの腹ですくおうとすると、こぼすまいとして、ひじを張るような姿勢になってしまいます。フォークは刺すほうが安定感もあり、食べる姿勢が美しく見えますよ」(瀬尾さん)
■4:ミルフィーユをパイ生地とクリームに分解して食べる
ミルフィーユは、ケーキのなかでもエレガントに食べるのに苦労する難敵。パイ生地がバラバラになったり、お皿の上でパイ生地がちらかったりしやすいので、大好きなのに、人前で食べるのははばかられる…という人が多いスイーツ。しかし、倒して食べればいいそうです。
「ミルフィーユに限らず、食べにくいケーキ、倒れやすいケーキは、先に倒してしまってもかまいません。ナイフとフォークではさみ、お皿の手前に持ってきて、奥にそっと倒しましょう。倒したら、フォークを当てて支えながら、左端からカットしていくときれいに食べられます」(瀬尾さん)
■5:フルーツタルトの「タルトをフルーツの後」に食べる
フルーツタルトも食べにくいケーキのひとつ。底のタルトがうまく切れないので、先にフルーツやクリームだけ食べて、底のタルトをあとから……なんて食べ方をしていませんか? 本来、フルーツタルトはフルーツ、クリーム、タルトのハーモニーを楽しむものなので、分離して食べるのはNG!
「ショートケーキなどやわらかいケーキの場合は、フォークを横向きにして入れますが、底に固いタルト生地がある場合は、まずはフォークを縦に入れます。一度刺してから、フォークを倒して横に切るのが、きれいに切るコツです」(瀬尾さん)
■6:プレートのソースをケーキの生地で拭い取る
ケーキやデザートの盛り合わせで、プレートのデコレーションのソースはどんなふうにいただいていますか? あのソースはケーキに添えるためのものですが、ケーキの生地でプレートのソースを拭い取るのはNGなんです!
「ケーキの生地で拭い取ると、ソースがお皿にひろがって、お皿が汚れてしまいます。プレートのソースは、ソーススプーンで取って、ケーキにつけるようにしましょう」(瀬尾さん)
■7:食後に下敷の銀紙を「放置する」
見た目も味も一級のケーキをいただいて、すっかり満足! ここで気を抜いて、下敷の銀紙をひろげたまま放置するのはNGです。食べ終わりまで美しいのが真のマナー美人。下敷の銀紙は小さくたたんで、フィルムと一緒に奥にまとめておきましょう。
■8:パンケーキを口いっぱいに頬張る
フワフワの生地を何枚も重ね、さらにフルーツやクリームをたっぷり乗せたパンケーキ。その食べ方でNGマナーはあるのでしょうか? 瀬尾さんによると、「一気にナイフを入れてはダメ」とのこと。
「ボリュームのあるパンケーキは、上から下まで一気にナイフを入れようとすると切りにくいですし、また、一口のサイズが大きくなりがちです。いっぺんに切ろうとするのではなく、まずは上から半分くらいまでナイフを入れて、あくまで一口におさまるサイズに、少しずつ切り分けるようにしましょう」(瀬尾さん)
パンケーキは、少しずつナイフを入れて食べるようにしましょう。
■9:シュークリームを「手づかみ」でかぶりつく
自宅で誰も見ていないところなら、気兼ねない食べ方でも構いませんが、お店でナイフとフォークと一緒に提供されたシュークリームなら話は別。手づかみでかぶりつくのは優雅ではありません。
「フタつきのシュークリームの場合、まずはフタを取って、一口分ずつ中のクリームをフォークでつけながら食べましょう。下側はフォークで左から、一口分ずつをカットしていくという、基本の食べ方でOKです」(瀬尾さん)
■10:パフェで自分の好きな具を「底から探る」
最近のパフェでは混ぜながら食べるものもありますが、お店側からそのような提案がなければ、パフェは上から順に食べて行きましょう。
「箸のNGマナーでも”探り箸”といって、器のなかのものを探るようにかき混ぜるのはお行儀が悪いとされています。パフェを食べるときのスプーンも同様で、自分の好きなものを探そうとするとスプーンの汚れにもつながりますし、見た目が美しくありません。スプーンですぐ届く範囲のものから食べるようにしましょう」(瀬尾さん)
■11:パフェのアイスクリームを「後回し」にする
アイスクリームを後回しにすると、ドロドロに溶けてしまいます。スプーンの届く範囲にアイスがあれば、なるべく優先して、溶ける前においしくいただきましょう。
■12:一口で食べきれないフルーツの食べかけを「器に戻す」
パフェに添えられているフルーツのなかでも、イチゴやサクランボは一口サイズですが、メロンやパインなどは、大きめにカットされた状態のことが多いですよね。一口で食べきれない場合に、食べかけを器に戻すのはNGです。
「大きめサイズのフルーツは、食べかけを器に戻さず2口、3口で食べきるようにしましょう。なお、メロンの皮やサクランボの枝など食べられない部分は器の中ではなく、お皿の上へ。紙ナプキンで隠すようにすればよりエレガントです」(瀬尾さん)
■13:メロンを「真ん中」から食べる
高級デザートの代名詞でもあるメロンの食べ方でNGマナーはあるのでしょうか? 瀬尾さんは、「おいしいところから食べるのはよくない」と言います。
「メロンは真ん中がもっとも甘いとされていますが、おいしいところから先に……と真ん中から食べるのはマナー違反です。メロンはまず、左端をフォークで固定し、右から皮と果実の間にナイフを入れて切り離していきます。
皮と果実を完全に切り離すのではなく、左端は少し残しておきましょう。そのうえで、メロンの皿を180度回転させて、左端から切り分けて食べていくのが正しいマナーです」(瀬尾さん)
なお、スイーツのビュッフェスタイルでは、味の濃厚なものから食べるのはおすすめできません。自分の好きなものから食べたい人が多いかと思いますが、ただ、好物だからといって、真っ先に濃厚なチョコレートケーキからいくと、より繊細なデザートの味がわからなくなってしまいます。
まずはゼリーやムース類など、あっさり系からいき、チョコレートやクリームの味が濃厚なものは後回しにするほうが、より多くの種類のデザートを楽しめるでしょう。
おいしいスイーツは本当に幸せな気分にさせてくれるものですが、ただ自分が満足するだけでなく、一緒に食べる人にも気分よく味わってもらいたいですよね。今回ご紹介したNGマナー、正しい食べ方マナーをしっかり押さえつつ、また、会話を楽しむためにも一口ずつを心がけて、お店のスイーツを堪能しましょう。
『お食事から身につける美しい日常』瀬尾姫民・著 中日新聞社刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美