「日本百名山」や「名水100選」「三大名湯」に「三大珍味」…日本にはさまざまな「〇〇と言ったらこれ!」というものがあります。そのなかで、今回取り上げるのは「日本三景」。日本全国に景勝地は多々あれど、そのトップ3に数えられるのはどこ? なぜそこが? 誰がいつ決めたの? ビジネス雑談に役立つ「へぇ~」な話を、7月21日の「日本三景の日」にちなんで解説します。

【目次】

松島、天橋立、厳島…一度は訪れたいですよね! さて、何県のどこにあるかわかりますか?
松島、天橋立、厳島…一度は訪れたいですよね! さて、何県のどこにあるかわかりますか?

【7月21日は「日本三景の日」。なぜ?】

■いつから?

「日本三景の日」は、日本三景がある宮城県松島町と京都府宮津市、そして広島県廿日市(はつかいち)市でつくる「日本三景観光連絡協議会」により、2006平成18)年に7月21日と制定されました。

■7月21日の由来

江戸時代の儒学者として有名な林羅山(らざん)の三男で、「日本三景の父」ともいえる林鵞峰(がほう)の誕生日が1618年(元和4)年5月29日で、これは新暦の7月21日にあたります。制定にあたり「いつがふさわしいか」を一般募集したところ、「日本三景」に大きく関係する林鵞峰の誕生日に決まったのだとか。さて、林鵞峰がなぜ、「日本三景の父」かと言うと…。次に続きます。


【「日本三景」とは?基礎知識】

林鵞峰は儒学者で江戸幕府に仕える儒官でした。そして、全国を行脚した経験から『日本国事跡考』を執筆。そのなかで、宮城県の松島、京都府の天橋立、広島県の厳島(安芸の宮島)を、卓越した3つの景観「三処奇観」と記しました。これによって松島、天橋立、厳島が「日本三景」と呼ばれるようになりました。

日本三景である、松島、天橋立、厳島は、いずれも海に囲まれた日本らしい景勝地。古くから歴史の表舞台に登場したり、その美しさは和歌や文学にも綴られてきました。自然景観が見事なだけでなく、親しまれていた時期が長いという点でも、まさに日本を象徴する絶景といえるのです。

■「松島」はこんなところ

 

松島は、宮城県中部に位置する、松島湾の湾岸と湾内260余りの島々の総称。こんもりと群生する松で覆われた小島と静かな海が織りなす景観は、日本三景随一ともいわれます。伊達政宗が創建した本堂をもち、奥州一の禅寺である瑞厳寺(ずいがんじ)や、こちらも伊達政宗が再建した五大堂などの史跡があり、平安時代から歌枕の地としても名を馳せました。俳人 松尾芭蕉も、松島のことを「島々や千々に砕けて夏の海」と詠んでいます。

■「天橋立」はこんなところ

 

天橋立​は、京都府北部、日本海に臨む宮津湾西岸から対岸に向かって南西に延びる、全長約3.3キロメートル、幅40~100メートルの細長い砂洲のこと。室町時代に水墨画家、雪舟が晩年に描いた『天橋立図』(国宝)でも知られています。端から端まで徒歩で渡ると約50分、気持ちのいい散歩ができそうですね。股の間から顔をのぞかせると、まるで天空に橋が架かっているように見える傘松公園の「股のぞき」は、悪ふざけをして人が転倒…というニュースも記憶に新しいところです。

■「厳島」はこんなところ

 

「厳島」は、広島県南西部、広島湾西部にある島で「安芸の宮島」とも呼ばれます。原生林で覆われる島全体が神霊の地とされ、弥山(みせん)の北麓(ほくろく)に厳島神社が鎮座し、門前町を形成しています。海上に建つ社殿と朱色の大鳥居が織りなす神々しい景色はまさに絶景! また、「厳島」は瀬戸内海国立公園の一部でもあり、特別史跡・特別名勝にも指定されています。厳島神社の建造物群と前面の海、背後の森林は、1996(平成8)年に世界文化遺産として登録されました。もみじまんじゅうやあなご飯などが名物です。 


【ビジネス雑談に役立つ「日本三景」豆知識】

■島国ニッポンの豊かさ際立つ「日本三景」

海に囲まれている日本では、同じような景色でもそれぞれに特徴があります。東北の松島、近畿の天橋立、中国地方の厳島と、大きく場所が離れる「日本三景」もしかり。太平洋、日本海、瀬戸内海では景色も海の環境も大きく違い、文化も獲れる魚介類も異なるのです。日本三景を巡る旅をするなら、異なる3つの海を楽しむことになるというわけ。

■ほかにもいろいろ、「日本三大〇〇」

「日本三景」は「日本三大景色」のこと。ほかに「三大」と呼ばれるものを挙げてみましょう。

・三大祭:京都市の祇園祭(7月1日~31日、八坂神社とその周辺)、大阪市の天神祭7月24日・25日、大阪天満宮)、東京の神田祭(2年に1度、5月15日前後の数日間、神田明神や日本橋など)

・三大花火:大曲雄物川河畔で行われる秋田県の全国花火競技会「大曲の花火」(2024年8月31日(土))、信濃川河川敷で行われる新潟県の長岡まつり大花火大会(2024年8月2日(金)、3日(土))、桜川河川敷で行われる茨城県の土浦全国花火競技大会(2024年は11月2日(土))

・三大名泉:群馬県の草津温泉、兵庫県の有馬温泉、岐阜県の下呂温泉

三名園:茨城県水戸市の偕楽園、石川県金沢市の兼六園、岡山県岡山市の後楽園

・三大夜景:基準とするものによっていくつかあります。新しいところでは、2015年10月、夜景観光の事業団体である夜景観光コンベンション・ビューローが、国内外の夜景観光活性化を目指して北九州市、札幌市、長崎市の夜景を「日本新三大夜景」に制定しました。

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日本らしい景色や文化が残る「日本三景」は、生涯で行くべき旅先候補にリストアップしてもよさそうですね。そして「日本三大〇〇」を、ビジネス雑談に役立ててください。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館) :