日本では8月中旬に夏季休暇や夏季休業を設ける企業が多いですね。俗に「お盆休み」とも呼ばれます。この「お盆」とは「旧盆」のことなのですが、お盆の「旧」って何? 「新盆」って? 地域による違いも? 今回は8月の「お盆休み」にあたる「旧盆」を中心に、お盆のあれこれについてさくっと解説します。
【目次】
【「旧盆」「新盆」とは?「お盆の基礎知識」】
企業などが「お盆休み」として休暇にあてる8月のお盆は「旧盆」のこと。「旧盆」と「新盆」について、正しく理解していますか? まずは「お盆のいろいろ」について整理してみましょう。
■「お盆」とは?
「お盆」は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」のこと。「盂蘭盆会」とは、陰暦7月15日に先祖の霊を祭る仏教の行事です。今でもお寺で先祖供養や供養のための法要や儀式を執り行ったり、自宅でご先祖様や亡くなった家族の霊を迎えたり、お墓参りをして過ごすための期間となっています。
■旧盆(きゅうぼん)
8月15日ごろに行われる「お盆」を「旧盆」と言います。「8月盆」や「月遅れ盆」とも言います。
江戸時代までは、旧暦の7月13日から15日か16日までの3、4日間がお盆期間でした。そして、1872(明治5)年に新暦(現在採用している暦)が採用された際にカレンダー上では約30日ほど日付が前倒しになったので、旧暦の7月15日は新暦の8月15日にあたり、8月のこの期間に行うお盆を「旧盆」と言います。
■新盆(しんぼん)
対して、現在の7月15日前後に行うお盆を「新盆」と言います。これは「しんぼん」と読み、「7月盆」とも言います。新暦を採用した明治政府のお膝元であった東京や神奈川などの都市部では「新盆」が推奨されたため、この地域で定着したようです。
【「旧盆」と「旧暦盆」は違う!?】
旧暦の7月13日から16日を、その年の暦に当てはめた期間に行うお盆を「旧暦盆(きゅうれきぼん)」と言います。つまり、「旧盆」と「旧暦盆」は別のものです。ちょっと紛らわしいですね。
2024年の「旧暦盆」は8月16日から18日ですが、2023年の「旧暦盆」は8月28日から30日でした。そして2025年は9月4日から6日、2026年は8月25日から27日と、年によって日付が異なります。
【初めて迎えるお盆は「新盆」?「初盆」?】
亡くなった方の四十九日を過ぎて初めて迎えるお盆のことを「初盆」と言います。読み方は「にいぼん」や「はつぼん」。「新盆」と書いて「にいぼん」と読ませる場合はこの「初盆」と同義です。「新盆」は読み方で意味が異なるので、しっかり認識しておきましょう。
・初盆(にいぼん・はつぼん)/新盆(にいぼん・あらぼん):四十九日を過ぎて初めて迎えるお盆のこと。
・新盆(しんぼん):新暦の7月13日から16日に行うお盆。
【「沖縄盆」って?地域による「お盆の日程」】
「旧盆」「新盆(しんぼん)」「旧暦盆」を解説しましたが、それとは別に地域性によるお盆の日程を採用している場合もあります。代表的なものをふたつ紹介します。
■沖縄県
行事を旧暦で行うことが少なくない沖縄では「旧暦盆」を採用しています。「沖縄盆」とも呼ばれ、先祖を迎える盆の入りを「ウンケー」、中日(ちゅうにち)を「ナカビ」や「ナカヌヒ」、先祖を送り出す沖縄盆の最終日を「ウークイ」といって3日間で執り行います。2024年は8月16日がウンケー、18日がウークイとなります。
■東京都多摩地区
小金井、小平、調布、八王子など多摩川沿いの丘陵地帯は、かつて桑畑が広がる養蚕が盛んな地域でした。「東京盆」とも呼ばれていた7月中旬のお盆の時期は養蚕農家にとって繁忙期。そのため半月ほど時期をずらし、7月末から8月頭にかけて「小金井盆」を行っていたとか。現在は主流ではありませんが、7月中旬の「新盆」、7月下旬の「小金井盆」、8月中旬の「旧盆」と、お盆のための商品を3回販売する店舗もあるようです。
【知っておきたい「お盆」の雑学】
■「お盆」のやり方
地域や宗派によって多少の違いはありますが、一般的なお盆の内容をおさらいしましょう。
1)仏壇の掃除:日常から清浄にしておくべきですが、お盆前日までに仏壇内部までしっかり拭き掃除したり、お位牌や仏具を柔らかい布などでぬぐって清めます。
2)お盆飾りやお供え物、盆花などの準備:盆灯籠は、四十九日が過ぎて初めて迎えるお盆(「新盆」や「初盆」と言います)だけは白地(無地)を用います。また、「ご先祖さまが早く帰ってきてくれるように」という願いを込めた精霊馬と、「ゆっくりお帰りください」という意味の精霊牛をキュウリとナスでかたどったものを飾り付けたり、そうめんを供えることも。いずれも仏具屋などで揃いますが、故人が好きだった果物や菓子、花を供えるということだけでもいいでしょう。
3)初日の迎え火・最終日の送り火:「迎え火」と「送り火」には、「おがら」(皮をむいで乾燥させた麻の茎)、焙烙(ほうろく:おがらを焚くための素焼きの丸い皿)、マッチやライターなどの着火具、消火用の水を準備します。
家の玄関先や庭、集合住宅ならベランダなどで行います(住居規定や地域自治体の火器扱いのルールを要確認)。新聞紙などの上に焙烙をのせ、燃えやすいよう積み重ねたおがらに火をつけます。すべてのおがらが灰になるまで火元を離れず見守ります。
■「お盆」に食べるもの
・おはぎ、赤飯:“お盆におはぎ”は定番ですが、お赤飯を食べる地域もあるようです。いずれも魔除け効果があるとされる小豆をいいただくわけです。
・そうめん:細く長く幸せが続くようにという願いを込めて食べるという説や、ご先祖様が戻る際にお供え物をくくるひも代わりだという説も。
・かいのこ汁:鹿児島で食べられる、夏野菜や大豆などをたっぷり使った汁もの。この呼び名は「粥の子」がなまったものといわれています。8月14日と15日の朝につくり、ご先祖さまにお供えしてからいただきます。
・ウンケージューシー、ウサンミ:沖縄県では、豚肉としょうがの葉を用いた炊き込みご飯の「ウンケージューシー」や、豚の三枚肉の煮つけや魚のてんぷらなど、複数を詰め合わせた「ウサンミ」と呼ばれる重箱料理を準備します。
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全国から人が集まる都市部では、お盆の習慣もそれぞれです。東京だからと、一斉に7月に行うわけではなくなりました。8月の「旧盆」時期に夏季休暇をとる企業が多いのは、お盆の行事や墓参り帰省のため。帰省や墓参りなどをしない場合でも、この時期はご先祖様へ感謝の気持ちをもって過ごしてみてはいかがでしょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) :