際立っている人や物を「いさいを放つ」と形容しますね。この「いさい」とは「異彩」です。では、この「異彩」って何のことだかご存知ですか? 今回は、「異彩を放つ」の正しい使い方や同音で違う意味の言葉など、さくっと解説します。

【目次】

「異才」ではありません、「異彩」です!
正解は…?「異彩」です!

【「異彩を放つ」の基礎知識】

■読み方

「異彩を放つ」で「いさい-を-はな-つ」です。

■意味

「異彩を放つ」は「普通とは異なった色どりや光を出す」という意味ですが、転じて「際立って見える、優れた様子が見て取れる」ことを表す慣用句です。「異彩」とは「異なる」「彩り」で、「放つ」は見えていることや発信されている様子を示します。「異彩が見える」や「異彩を感じる」ではなく、「異彩を放つ」と表現します。

このように他人より優れている様子や才能で目立つことを「異彩を放つ」と表現するわけですが、集団のなかで特に目立っていること、例えば奇抜なファッションや、他人とは大きく違った考え方を発信する人に対して使用する例も見聞きすることがあるかもしれません。しかし他者と違うということだけでは「異彩を放つ」とは言いません。

■「異彩」と「異才」の違い

ほかより優れていることを表すのなら「異才」なのでは? という意見があるかもしれませんね。人並みでない優れた才能やその人のことを指すのが「異才」で、際立って見える、優れて見えることが「異彩」です。「音楽界の異才」と「異彩を放つ音楽家」というように使い分けます。ちょっと難しいでしょうか。次の例文で、「異彩を放つ」の使い方をチェックしてくてください。


【「正しい使い方」がわかる「例文」5選】

「この絵は異彩を放っている」とか「彼はクラスのなかで異彩を放つ存在だ」というように使われます。ビジネスシーンでの使い方なども例文でチェックしてください。

■1:「今回のプレゼンでは、御社の企画が異彩を放っていました」

■2:「社員研修のときから異彩を放つ新人がいた」

■3:「異彩を放っていながら協調性や自己犠牲の精神もあるなんて、どんなに優れた人なんだ」

■4:「彼女の演奏は子どものころから異彩を放っていたらしい」

■5:「プロアスリートには、複数の競技で異彩を放つ人が少なくない」


「異彩を放つ人」の特徴

「異彩を放つ」と評される人は他者より何かが優れているわけですが、この慣用句を正しく使用するために、そういう人が醸し出す特徴を理解しておきましょう。

■人目を引く

その才能が目立つだけでなく、当人にも独特のオーラがあって気になる存在です。

■自分の価値観をしっかりもっている

異彩を放つ人には、他者の意見に左右されない己の価値観があります。


【「異彩を放つ」の「類語」「言い換え」表現】

■異色

ほかとは異なる特色があること。また、その様子。「異色な作風」。

■水際立つ

ひときわ目立つ、鮮やかに際立っていること。「水際立った演技」と「異彩を放った演技」は同義です。

■偉才を発揮する

優れた才能や、その持ち主を指します。「偉才を発揮する」などと使用しますが、「異彩を発揮する」とはいいません。

■ほかに類を見ない

ほかに並ぶものがないほど優れていること、異なっていることを表します。

■鶏群の一鶴(けいぐん-の-いっかく)

鶏の群れのなかでは1羽ごとの鶏は目立ちませんが、その中に鶴がいれば際立つということから、凡人の中に優れた人物がひとり混じっていることをたとえたことわざです。


「対義語」はどうなる?

ほかより際立つことを指す「異彩を放つ」の反対の意味はどうなるでしょう。突出しているのではなくほかと同じような…ということを表す慣用句には、「どんぐりの背比べ」や「五十歩百歩」などがありますね。


【「異才」「偉才」「委細」…「異彩」の同音異義もしっかりチェック!】

通常は慣用句や熟語として理解したり、あるいは前後の文脈で判断したりできますが、同音で意味の違う日本語はたくさんあります。今回の「異彩」もしかり。「異彩を放つ」を正しく使用して正しく書くためにも、同音異義の単語を改めて確認しておきましょう

・異彩:普通とは違った彩り、際立って優れた様子。

・異才:人並みではない優れた才能。その持ち主。

・偉才:優れた才能。その持ち主。

・委細:細かく詳しいこと、詳しい事情、詳細。副詞的に用いて、細かいことまですべて、万事。「経緯を委細に報告せよ」などと使います。

【「英語」で「異彩を放つ」を言うと?】

「異彩」を「傑出する」や「目立つ」ととらえると、当てはまるのは[stand out][conspicuous]です。

・He stand out among contemporary musicians.(彼は現代音楽界で異彩を放っている)

・He distinguished himself in the film world with his avant-garde movies.(彼は前衛映画制作で映画界に異彩を放っていた)

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「異彩を放つ」ほどの才能に恵まれなかった…と嘆くことなかれ。社会は異彩を放つ人ばかりでは成り立ちません。すべての人に価値があり必要だということが共通認識である社会であってほしいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :