仕事を進めるうえで、リスク管理を含めた「先」を予測して行動することはとても大切。なんらかのアクシデントが起こった際、心配する上司や同僚に対し、「これくらい、織り込み済みだから大丈夫!」と言ってくれる仲間がいたら、心強いですよね。「織り込み済み」は、先のことを予測して「もうちゃんと予定してありますよ!」と伝えるときに使えるフレーズです。株式市場では少し違った意味で使われているので、こちらもさくっと解説します。

【目次】

「織り込み済み」の正しい意味は?
「織り込み済み」の正しい意味は?

【「織り込み済み」とは?「読み方」と「意味」】

■「読み方」

「織り込み済み」は「おりこみずみ」と読みます。「折り込み済み」といった誤表記も多いようですよ。

「意味」

「織り込み済み」は、一般的には「ある事柄や条件などを、前もって予定や計画に入れておくこと」を指します。ビジネスシーンでの例を挙げれば、プロジェクトを進行させる際など、工程上生じる事態に配慮しつつ、プランを立てますね。このようなとき、「さまざまなリスクは織り込み済み」のように用いられます。

「織り込む」には「織物を織るときに、金銀糸など地質と異なる糸を混ぜて模様を入れる」という意味があります。柄のある布を織るためには、前もって色の違う糸を用意し、織機に準備する必要があります。ここから「ひとつのものごとのなかに、別のものごとを組み入れる。盛り込む。加味する」といった意味に「織り込む」が使われるようになったのです。一方、「折り込む」は、「折り込み広告」の例からわかるように、「折って中に入れる。中の方に折る」という意味。「別のものごとを組み入れる」という意味はありません。パソコンでは「おりこむ」と打つと、予測変換として、「織り込む」「折り込む」の両方が出てきますので、気を付けてくださいね。

ところで、株式市場における「織り込み済み」には、少々違った意味があるようです。続いて見ていきましょう。


【株式市場での「意味」は?】

外国為替証拠金取引(FX)市場や株式市場、商品先物市場などにおける「織り込み済み」は、相場に影響を与えるニュースなどの好材料や悪材料が、すでに価格へ反映されている状態を指します。一般的に金融相場や株式相場は、市場関係者により相場を動かす要因が予測され、正式な発表に先行して相場が影響を受けることが多いのです。そのため、経済指標や企業の決算発表などのイベントが発生したときには、すでに相場には反映された状態のため、正式なニュースが発表されても、結果的に相場が大きく変動することはありません。このような状態を「市場はすでに情勢を織り込んでいる」などと表現します。


【「使い方」がわかる「例文」9選】

■1:「リスクはすでに織り込み済みですから、計画変更の必要はありません」

■2:A「はい、資料。今日の会議に必要になると思って、用意しておいたよ」
   B「めちゃ、助かった! ありがとう! どうしてわかった?」
   A「これくらいのこと、織り込み済みだよ!」

■3:部長「今日は新規の大型契約が取れた祝いに、慰労会といこうか」
   部下「部長がそうおっしゃることは織り込み済みです。店の予約、取っておきました!」

■4:「受注生産において、一定のキャンセルが生じることなど、想定の範囲内。最初から織り込み済みだ」

■5:「今回のプレゼンで多方面から質問が来ることは織り込み済み。質疑応答の対策も完璧だ」

■6:「株価は総選挙の結果をすでに織り込み済みだ。乱高下は起こらないよ」

■7:「決算期を迎え、多くの上場企業が好決算を発表したが、株価の反応は限定的なものであった。株価はすでに好決算のニュースを織り込み済みだったからだ」

■8:「会社のトップが政治音痴なはずはないよね。事業計画には、今回の総選挙の影響は織り込み済みだと信じたい」

■9:「鉄道各社の株価は低迷している銘柄が多い。インバウンドなどの好材料が『織り込み済み』ととらえられている面があるためだ」


【「類語」「言い換え」表現】

「織り込み済み」の「類語」「言い換え表現」をいくつかご紹介しましょう。

・計算済み

・反映済み

・予測済み

・想定内

・念頭にある

・考慮した

・熟慮した


【「英語」で言うと?​】

「織り込み済み」は、英語でどのように表現できるでしょうか。「ある事柄や条件などを、前もって予定や計画に入れておくこと」という意味での「織り込み済み」は、「熟慮する」を意味する[consider]が使えそうです。

・He had already considered the cost before buying a new car.(新車の購入にあたって、彼は費用については織り込み済みだ)

・The issue is already considered to happen. (その問題は、すでに織り込み済みだ)

株式市場における「織り込み済み」は「baked in the cake」用いられます、また、「すでに反映されている」ととらえれば、[reflect]が適切です。

・This adverse factor has already been fully reflected into the market.
(この悪材料は市場にはもうすでに織り込み済みだ)

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ビジネスでは、取引先や上司が求めていることを予測して、プランや準備を進めることが、好評価につながることもあります。「ご安心ください。その件は織り込み済みです!」とにっこり笑える安定感は、周囲からの信頼も厚そうですね。ぜひ、ここぞという場面で、「織り込み済みです!」のフレーズを使ってみてください。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :