思いつくままに話して相手を疲れさせたり、言葉足らずで誤解されたり……。伝わる話し方って難しいですよね。話し上手な女性と出会うと刺激を受けて「何とかしたい」と思うものの、なかなかパッと真似することはできません。一体どうすれば、短い言葉で的確に伝えることができるのでしょうか?
今回、相手の心に響く話し方を「話し方研究所」会長である福田 健さんに教えていただきました。周囲から一目置かれるような賢い人は、以下の4つを習慣にしているそうです。周りとよい人間関係を築いていくためにも、これらの話し方を真似してみましょう。
■1:話す対象をよく「観察」し、考え抜く
会話の中で「この人、私のことをよく見てくれているな」と思うことはありませんか? どんな言葉をかけられるかによって、受け取る側の気持ちや行動は変化します。
ある日、福田さんが飲み会に参加した帰り、電車の中で立っていたところ、目の前の座席に座っていた女性が「よろしかったらどうぞ」と席を譲ろうとしました。しかし福田さんは、「まだそんな年齢でないのに……」と、一度は「結構です」とお断りしたそうです。
断られた場合はお互いに気まずくなるものですが、その女性は「お酒を召し上がっているようですので、遠慮なさらずにどうぞ」と言葉を変えて、再び声をかけたのです。そう言われた瞬間、福田さんは気持ちよく「ありがとうございます」と席を譲ってもらったといいます。
「その場の状況や、相手の気持ちに寄り添ってものが言えるのは、相手をよく見ているから。彼女の行動からも、話す対象をよく観察して、考えていることがわかります。このように賢い対応ができる女性は、職場でも周囲に一目置かれていることでしょう」(福田さん)
話すときには「これを言ったらどう思われるだろう」「相手に嫌な顔をされたら困るな」などと自分に意識を向けるのではなく、周りをよく観察し、相手について考えることが大切になるとのこと。家族や友人、職場の同僚と話すときも同じ。普段から、話す相手をよく観察をすることを習慣にしましょう。
■2:問題の「本質」は何かを考える
話をわかりやすく、短く表現するためには、核心となる一番大事なことを把握していなければなりません。
そこで日頃から「この問題の本質は何だろう」「一番大事なポイントはどこだろう」と考えてみるとよいそうです。例えば「挨拶をしよう」という当たり前のことでも、「なぜ挨拶は必要なのか」「挨拶はどんな意味があるのか」という本質を考えてみましょう。
「挨拶の本質とは、人と人が関係をつくるきっかけであると私は考えています。最初は誰でも警戒心を持っているものですが、その警戒心を和らげて、親近感を育てていくために挨拶があると思うのです。このように、日常的なことも流さずに少し立ち止まり、この問題の何が大切かを考える習慣を身につけましょう」と福田さんはアドバイスします。
例えば、部下がミスをしたとき、ただ責めるだけでは、また同じミスを繰り返しかねません。なぜ彼女はそのようなミスをしたのか、問題だったのかを考えるようにすると、問題の本質がわかるようになり、具体的な対策も立てることができるようになるでしょう。
■3:内容を論理的に「整える」
「結局、何を伝えたいの?」と言われた経験はありませんか? 頭に浮かんだことをそのまま話し始めると、話があちこちに飛んだり、一貫性がなかったりで、相手に話の内容が伝わらないことが多いでしょう。
「話が端的にまとまらないのは、考えがまとまっていないから。その原因は、『これが言いたい』という中心の考えが不明確であるか、言いたいことの裏打ちがしっかりなされていないため、根拠不十分の状態にあるかのどちらかです」と、福田さんは指摘します。
例えば、会議や打ち合わせ、部下に指示をするような場面では、内容をきちんまとめてから話をすることが求められるもの。短くまとまりのある話をするためには、頭に浮かんだことを紙に書き出し、整理することが有効な方法だといいます。
「あるセミナーでは、発表の前に、自分の言いたいことをホワイトボードに一行で書き出してもらいました。すると話の途中で行き先がわからなくなっても、ホワイトボードに書いた主題をちらっと振り返ることで、自分が言いたいことを確認できて、話を戻すことができたのです」(福田さん)
考えていることを紙に書き出すことで、重複している部分などがわかり、頭の中を整理することができ、簡潔でわかりやすい内容になっていくそうです。そして実際に言葉に出した時にも、要点を短く的確に伝えられるようになるといいます。
毎日ではなくても、会議や打ち合わせ、人に説明するといった大事な場面の前には、紙に書き出し、自分の考えを整理してみましょう。
■4:「1分間」で要約する
職場で説明を求められる際に、「一言で」「手短に」と注文をつけられることはありませんか?
しかし要点を短く話すのは、なかなか難しいもの。第1の理由として、話している本人が内容をよく理解していないことが挙げられます。理解していない話ほど長くなり、くどくなってしまうのです。
そして第2の理由は、一言で説明する機会が少なく、訓練ができていないこと。よくわかっている内容だとしても、実際に話してみると、言い慣れていないため、長引いてしまうそうです。要点を手短に伝えるためには、1分間で要約をする練習をしてみましょう。
福田さんのコミュニケーションセミナーでは、グループを組み、他の人の話を1分間に要約する練習を行うそうです。最初は相手が話した内容をそのままなぞるだけで、要約ではなく、反復・再現になってしまう人が多いといいます。しかし何度か練習することで、話し手が一番言いたいこと、それを補強するポイントを、かいつまんで話せるようになるとのこと。
「他人の話を要約できるようになれば、自分が話すときも要点を手短に話せます。『私は話が苦手だからうまく言えない』と言っているだけでは、進歩しません。1分間で要約する練習をすることで、大事なことを簡潔に話せるようになるでしょう」(福田さん)
他人の話だけでなく、普段から、自分の考えていることや、新聞やテレビのニュースなどを1分間で要約するトレーニングをしてみましょう。
言葉ひとつで、相手に与える印象は大きく変わります。相手の心に響く話し方を習慣にすれば、「この人、頭がいいな」「仕事ができるな」と周りから好感を持たれ、信頼度もアップするはず。ぜひこの機会に話し方のコツや練習法を実践し、仕事でもプライベートでも、一目置かれる女性を目指しましょう。
『ちょっとしたことで“心が伝わる”話し方』福田健・著 三笠書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 椎名恵麻