「寒露」は二十四節気のひとつで、「霜になりそうな冷たい露」の意。秋もいよいよ深まって暦の上では「晩秋」を迎えます。残暑が厳しかった2024年も、さすがに日々、秋の気配が感じられるはず…! 季節の言葉についての豆知識を蓄え、ビジネス雑談でお役立てください。

【目次】

秋も深まり「冷たい露が草木に降りる頃」。
秋も深まり「冷たい露が草木に降りるころ」。

【「寒露」とは?「読み方」と「意味」】

■「読み方」

「寒露」は「かんろ」と読みます。

■「意味」

「寒露」は二十四節気のひとつです。「寒い露」と書くように、「冷気にあたり、霜になってしまいそうな冷たい露が草木に降りる頃」という意味があり、秋の深まりを思わせる言葉です。俳諧 (はいかい) では秋の季語。晩秋から初冬にかけての、肌寒さを感じはじめる時期にあたります。


【2024年の「寒露」はいつ?】

■どうして固定された日付ではないの?

「寒露」は陰暦9月の節で、現在の暦では10月8、9日ごろにあたります。日付が定まっていない理由は、太陽の軌道が一定ではないため。二十四節気は太陽の動きに合わせて1年を24等分して決められるので固定されておらず、1日程度前後することがあるのです。天文学的に言う「春分」や「秋分」をはじめとする二十四節気は、国立天文台により毎年2月に、翌年の日付が定められます。

■2024年の「寒露」はいつ?

「寒露」という言葉は「寒露に入る日」を指す場合と、次の節気である「霜降」前日までの「寒露にあたる期間」を指す場合があります。2024年の「寒露」は10月8日。期間で言えば10月8日~10月22日です。


【「食べ物」など「寒露」にまつわる「雑学」5選】

■「二十四節気」をおさらい!

二十四節気とは、古代中国でつくられた季節の区分法です。1年を春夏秋冬の4つに分け、それをさらに6つに分けて24等分にすることで、気候の推移を示しています。秋は「立秋」に始まり、「処暑」→「白露(はくろ)」→「秋分」→「寒露 」→「霜降 (そうこう)」と続きます。つまり、「寒露」は「秋分」の約15日後ということになりますね。ご存知の通り、「秋分の日」は「昼と夜の時間の長さがほぼ同じになる日」。「寒露」を迎えるころになると「日が暮れるのが早くなったな〜」と実感する人は多いのではないでしょうか。「寒露」の次の節気は「霜降」で、冷たい露が霜へと変わるころ。暦上ではこの2つの節気が「晩秋」にあたり、次に巡ってくる「立冬」になると、季節は冬へと移っていくのです。

■「寒露」のころの風物詩は?

晩秋を迎えた「寒露」のころには、秋の虫が鳴き止み、菊の花が咲き始めます。北国では初氷、標高の高い山では初冠雪のニュースが聞かれることでしょう。秋の収穫もピークを迎え、農家は忙しい時期ですね。このころ、奈良・春日大社参道脇の鹿苑(ろくえん)では「鹿の角切り」という伝統行事が行われます。また、伊勢神宮では、例年10月15日~17日に「神嘗祭(かんなめさい)」が行われます。神嘗祭は年間1500回に及ぶ神宮の恒例のお祭りのなかでも、最も重要なお祭り。その年に収穫した新穀(しんこく)を天照大御神に捧げ、御恵みに感謝します。天皇は皇居の神嘉殿にて皇大神宮を御遙拝され、日本各地の神社でも神嘗祭遥拝式が斎行されます。

また、現在では新暦9月9日に行われることが多い重陽の節句ですが、本来の旧暦9月9日は新暦では「寒露」の頃。2024年は10月11日にあたります。重陽の節句は五節句のひとつで、陽数(奇数)が重なるめでたい日。奈良時代に中国から伝わった風習が、平安時代には宮廷行事として定着しました。菊を浮かべた酒を飲む会を開いたり、そこで詩歌をつくったり、管弦の遊びをしたりしたそうです。江戸時代以降は秋の収穫祭と結びつき「お九日」として庶民にも広まりました。

■「十三夜」

「十三夜」とは、一般に陰暦9月13日の夜を指します。「十五夜」に次いで月が美しく見える夜と言われていますよ。2024年の「十三夜」は10月15日です。新月から数えて13日目の、満月には少し欠ける月が夜空を美しく照らします。

■「寒露」に旬を迎える食材

「寒露」のころに旬を迎える食材と言えば、松茸やしいたけ、まいたけなどのきのこ類。旬のしいたけは香りがよく、肉厚なのも特徴です。春と秋に旬を迎えます。野菜では、かぶ、栗、さつまいも、チンゲンサイなど。果物では柿や石榴が旬を迎えます。また、魚でぜひいただきたいのが、ししゃも。卵を蓄えるメスは「子持ちししゃも」と呼ばれ、焼いて食べれば、濃厚で歯ごたえのある卵の食感が味わえます。

■「甘露」のころの「季節のご挨拶」は?

「甘露」の時期にあたる10月8日から10月22日まで使える、時候の挨拶をご紹介しましょう。

・甘露の候、○○さまにはご健勝のことと存じます。

・甘露のみぎり、いかがお過ごしでしょうか。

・甘露を迎え、いよいよ秋も深まってまいりました。

・秋たけなわのこのごろ、いかがお過ごしでしょうか。

・秋雨前線が去り、秋の風が心地よい季節となりました。

・北からは徐々に紅葉の便りが聞こえる季節となりました。

・柿の実も色づき、秋らしい風情となってきました。

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「寒露」を迎えると、いよいよ本格的に秋が深まり、「秋の夜長」を感じるころとなります。澄んだ空気により月が美しく輝いて見えるのもこの時期で、10月15日は「十三夜」。また、重陽の節句を迎えるこのころの晴天は「菊日和」と呼ばれるそうです。なんとも風流ですね! 食欲の秋を楽しみつつ、秋の深まりを五感でじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。

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参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) :