日本列島に長く居座り続けた夏がやっと過ぎゆき、本格的に「食欲の秋」「スポーツの秋」がやってきました。そして秋は「読書の秋」でもありますね! とりわけ10月27日から11月9日までの2週間は「読書週間」です。今回は「読書週間」が制定された経緯や由来、今年度の芥川賞・直木賞・本屋大賞受賞作をご紹介します。この秋の「積ん読リスト」に加えるだけでなく、お目通しいただければ幸いです。ビジネス雑談にも役立つはずです!
【目次】
【「読書週間」とは?「日付」と「由来」】
■「読書週間」とは?「いつから」ある?
「読書習慣」とは、良書の普及、読書の奨励を目的とした行事週間です。1947(昭和22)年、まだ戦争の傷痕がいたるところに残るなか、「読書の力によって、平和な文化国家をつくろう」という決意のもと、出版社・取次会社・書店と公共図書館、そして新聞・放送のマスコミ機関も加わって、11月17日から、第1回『読書週間』が開催されました。その反響は大きく、翌年の第2回からは期間が10月27日~11月9日と定められ、運動は全国に拡がっていきました。
やがて『読書週間』は、日本の国民的行事として定着し、日本は「世界有数の本を読む国民の国になった」と言われています。そして、1959年には、出版関係団体、日本図書館協会、全国学校図書館協議会からなる「読書推進協議会」が生まれ、現在、さまざまな催しが行われています。
■「由来」は?
「読書週間」の由来は、1924(大正13)年にはじまった「図書館週間」です。これが「図書祭」と改称されました。1939(昭和14)年からは日中戦争、第二次世界大戦などにより一時中止されていましたが、1947(昭和22)年に復活し、再改称されたという経緯があります。
■2024年の読書週間は「いつ」?
「読書週間」は毎年固定されています。日付の根拠は、「文化の日(11月3日)を中心にした2週間」。ですから2024年も、10月27日から11月9日までです。
【今年の読書週間の「標語」は?】
■最新(第78回)2024年の標語は…「この一行に逢いにきた」
2024年第78回読書週間の標語は、663人の応募者のなかから、中山実穂さんの「この一行に逢いにきた」が選ばれました。ポスターのイラストは、381点の応募のなかから大賞を受賞した熊 梨江さんのデザインです。読書週間には「こどもの読書週間」もあり、こちらの標語は「ひらいてワクワク めくってドキドキ」。読書の楽しさが詰まった標語ですね!
■第一回(1947)……「楽しく読んで 明るく生きよう」
戦後まもない時期には娯楽も限られており、読書は未来に向かって明るく生きるための指針であり楽しみであったのでしょう。第2回(1949年)は標語はなく、第3回は「おくりものにはよい本を」。そしてまた標語なしが何年か続いたのち、第11回(1957年)「みんなで 本を 読みましょう」「読書は人をつくる」と続きます。
■第32回(1978年)……「翔べ心! 本はその翼である」
標語がキャッチコピー的になってくるのが、1970年代後半から。第33回(1979年)は「燃えよ人生! 本とのふれあい」、第36回(1984年)は「秋です 本です 読書です」、第41回(1989年)になると「秋が好き。街が好き。本が好き。」と、「。(句点)」で終わる標語も登場します。1989年と言えば、日本はバブルの真っ只中。なんとなく、標語にも時代の空気が感じられますね。
■第54回(2000年)……「はじまりは1冊の本だった。」
2000年代になると、「夢中!熱中!読書中!」(2001年)、「ありますか?好きだといえる1冊が…」(2003年)、「本を読んでる君が好き」(2005年)、「君と読みたい本がある。」(2007年)「本に恋する季節です!」(2017年)など、共感を呼び起こすような表現となる傾向がみられます。
■第75回(2021年)「最後の頁を閉じた 違う私がいた」
青い空に続く長い階段。過去を振り返るようなポスターも印象的な作品でした。
【2024年の芥川賞、直木賞、本屋大賞受賞作は?】
■芥川賞は…
芥川賞の正式名称は、芥川龍之介賞。芥川龍之介の業績を記念し、1935(昭和10)年に創設された文学賞です。新人作家による純文学の短編~中編作品で、過去半年以内に雑誌で発表されたことが候補の条件となります。純文学とは「主に文章の美しさや表現方法の多彩さ(芸術性)に重きを置いた小説」のこと。2024年はふたつの作品が選ばれました。
『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋/新潮社
『バリ山行』松永K三蔵/講談社
■直木賞は…
直木賞の正式名称は直木三十五(なおきさんじゅうご)賞。芥川賞とともに、1935(昭和10)年に創設されました。芥川賞との大きな違いは、中堅〜ベテラン作家による短編~長編の大衆小説がその対象であること。賞金・賞品は、芥川賞と同じで、懐中時計と100万円です。芥川賞と直木賞のダブル受賞はありません。
『ツミデミック』一穂ミチ/光文社
■本屋大賞は…
本屋大賞の運営は、書店員有志で組織する本屋大賞実行委員会。書店の店員(オンライン書店も含む)が「おもしろかった」、「お客さまにも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び、投票します。順位がついているのも特徴。2024年のベスト5をご紹介します。
・本屋大賞『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈/新潮社
・2位『水車小屋のネネ』津村記久子/毎日新聞出版
・3位『存在のすべてを』塩田武士/朝日新聞出版
・4位『スピノザの診察室』夏川草介/水鈴社
・5位『レーエンデ国物語』多崎礼/講談社
【「読書週間」「読書」にまつわる雑学】
■「読書週間」の初日は「文字・活字文化の日」
読書週間にまつわる記念日が、「文字・活字文化の日」。出版文化の推進を目的に、2005(平成17)年に「文字・活字文化振興法」が制定されたことから、読書週間の初日となる10月27日が「文字・活字文化の日」として制定されました。
■読書にまつわる記念日はほかにも!
・「本の日」
11月1日は「本の日」です。全国各地の老舗書店で結成された「書店新風会」が制定し、日本記念日協会によって認定・登録されています。読者に本との出会いの場である書店に足を運ぶきっかけの日としてもらうとともに、情操教育の一環としての「読書運動」の活性化が目的だそうです。日付には、11と1で数字の1が本棚に本が並ぶ姿に見えることと、想像、創造の力は1冊の本から始まるとのメッセージが込められています。
・「まんがの日」
公益社団法人日本漫画家協会と出版社5社が制定した、「まんがの日」は11月3日です。この日は「マンガの神様」と呼ばれる手塚治虫さんの生誕日。日本の漫画を文化として認知してもらうことを目的に、2002年につくられました。マンガの英語訳は[comic]が一般的ですが、今や「manga」は世界で通用する言葉となりました。
■日本人は平均で年間何冊本を読んでる?
日本人の読書傾向は、すでに「年間何冊?」という質問がほとんど成り立たない段階へ足を踏み入れています。文化庁の国語に関する世論調査(2023年度)によると、「月に1冊も本を読まない人」の割合は62.6%、実に6割を超えていることがわかったのです! 文化庁では、2008年から5年ごとに「1か月に読む本の冊数」を尋ねるアンケートを実施しています。そして前回の2018年度は「1冊も読まない」人が47.3%、その前は46%台でした。この5年で15.3ポイントも増えたことになります。「月に1、2冊読む」人は 27.6%、「3、4 冊読む」のが 6.0%、「5、6 冊」が 1.5%、「7冊以上」と答えた人は、1.8%。つまり月に3冊読めば、日本人の10%にも満たない「読書家」の仲間入りということに。実際、読書をする時間が短くなるのに比例するように、スマホを見ている時間が増えていることを自覚している人も多いのでは? 本を読まない人ほどスマホを見ている時間が長いという傾向にあるようです。
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「最近、おもしろかった本は?」と聞かれて、あなたは答えられますか? 現代は、スマホひとつで大抵の「疑問」はさくっと解決できてしまう時代ですが、読書することで得られるリラックス感や読後の満足感は、何ものにも変えがたいもの。「紙」の本はかさばる、読みにくい、重い…などと考える人もいるかもしれませんが、電子書籍もありますよ。過ごしやすい季節、オープンテラスのカフェや公園でのんびり物語の世界に浸る、というのもぜいたくな過ごし方です。一冊読み終わると「次は…」と、興味が広がっていく楽しさを、ぜひ再体験してみてください!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『図書館情報学用語辞典 第5版』〔丸善出版〕 /公益財団法人 読書推進運動競技会(http://www.dokusyo.or.jp/jigyo/jigyo.htm) /令和5年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(文化庁)https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/94116401_01.pdf :