連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介している連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター教授の原田尚美さんに注目!

今年12月上旬に日本を出発する予定の第66次南極地域観測隊で女性初の隊長として、100人を超える大所帯を率いる原田さんの現場への想いについて、お話しをうかがいました。

原田尚美さん
東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター教授/第66次南極地域観測隊隊長
(はらだ なおみ)北海道生まれ。弘前大学理学部地球科学科卒業後、名古屋大学大学院在学中の24歳のときに第33次南極地域観測隊に、唯一の女性隊員として参加。’18年の第60次隊では副隊長を、3回目の参加となる第66次隊で隊長を務める。生物地球化学、古海洋学を専門とする地球科学者。’22年より東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター教授。

【Tokyo】3回目の南極で33年前のリベンジを!女性初の観測隊隊長の現場への想い

東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター教授であり、第66次南極地域観測隊隊長を務める原田尚美さん
東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター教授であり、第66次南極地域観測隊隊長を務める原田尚美さん。

12月上旬に日本出発する予定の第66次南極地域観測隊。100人を超える大所帯を、女性では初の隊長として率いるのが原田さんだ。

「私は地球化学、なかでも海の中の堆積物から過去の環境を復元していくのが専門分野です。ほかにも海洋物理の研究者や、プランクトンの専門家、生物、天文、工学と、さまざまな分野の研究者で、隊の半分くらい。もう半数は、設営系。約1年3か月、南極で生活を成り立たせないといけないわけですから、建設系、調理系、医療系の隊員、あとは天気予報が重要なので、気象庁からも。年に一度の補給の機会ですから、物量も大量です。隊長は、そういうことを全部理解して、チェックする役目…私にできるんですかね(笑)」

今回が3度目の南極。初めて行ったのは33年前、博士課程1年のときだった。研究室に来た募集を男子学生全員が断ったのを見て、「じゃあ私が行きます」と手を挙げた。

「女性隊員は私ひとりでした。それですごく話題になって、ただの学生だったのに記者会見までやっちゃって。2回目に行った6年前で1割くらい、今回は約25%が女性です。装備もすごく進化したんですよ。隊員のファッションもおしゃれになってうれしい(笑)」

南極には「音がない」のだと言う。

「初めて降り立ったときに驚きました。恐ろしいほどの静寂。なんともいえない感動がありました。そして、実はそのときの調査で、マリンスノーのサンプルを回収できなかったという心残りがありまして。今回は33年越しのリベンジを果たしたいと思っています」

南極は、地球の今と未来を教えてくれる。

「今回の調査では、やはり温暖化がひとつの重要なテーマになっています。南極の氷の減少スピードは想像以上に加速しています。20年後、30年後すら予想できないなか、100年後のシミュレーションをより正確にアウトプットするためには、今のデータがとても重要です。現場をしっかり観測してきます」

◇原田尚美さんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
南極行きが決まってからはジョギングを続けています。5〜6km走ります。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「元気そうだね」と言われるとうれしいです。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
仕事が「海」なので、趣味は「山」。夫と百名山制覇に挑戦しています。まとまったお休みがとれたら山に行きたいですね。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
新しく、ではないですが、15年ほど書道を続けています。とても気分転換になります。
Q.10年後の自分は何をやっている?
もう1回南極に? はさすがに無理でしょうが、何かしら海に関わる仕事をしていたい。
Q.自分を動物にたとえると?
33年前の失敗をリベンジしたいと思うくらいなので、しつこい動物かな?

PHOTO :
望月みちか
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子 ・木村 晶(Precious)