「四納言」は「しなごん」と読み、「4人の納言」を意味する言葉です。平安時代の中期、一条天皇の時代には、「一条朝の四納言」と呼ばれる公卿が活躍しました。今回は話題のNHK大河ドラマ『光る君へ』の配役と共に、その基礎知識を解説します! ビジネス雑談にぜひお役立てください。

【目次】

4人の「納言」を表します。では、「納言」とは?
四納言とは、4人の「納言」を表します。では、「納言」とは?

【大河ドラマ『光る君へ』にも登場した「四納言」とは?「読み方」「意味」】

■「読み方」

「四納言」は「しなごん」と読みます。「よんなごん」ではないことがポイントです。

■「意味」

「納言」とは、大納言、中納言、少納言の総称です。つまり「四納言」は、「4人の納言」という意味です。

「納言」とは「(天皇に対し)物申すつかさ(官)」という意味で、大臣ともども政務を審議したほか、天皇の側で奏上・宣下(そうじょう・せんげ。用件を申し上げることと、お言葉を下へ伝えること)に関わりました。ただし、公卿(閣僚)というVIPな地位である大納言・中納言に対し、少納言は、格がだいぶ下がります。大納言は大臣の代行が可能なのに対して、中納言は不可であり、少納言はさらに下がって実務官僚という差がありました。

一条朝の四納言とは?

ここでは、大河ドラマ『光る君へ』の配役とともに「四納言」をご紹介しましょう。「あー、なるほど!」と腑に落ちるはずです。

一条朝の「四納言」とは、一条天皇の時代の4人の公卿、藤原公任(きんとう:町田啓太さん)・藤原斉信(ただのぶ:金田哲さん)・源俊賢(みなもとのとしかた:本田大輔さん)・藤原行成(ゆきなり:渡辺大知さん)を指しています。

1009(寛弘6)年2月、中宮・彰子(見上愛さん)が産んだ第2皇子である敦成親王に対する呪詛が発覚し、藤原伊周(これちか:三浦翔平さん)が失脚します。その後、3月に行われた臨時の除目(じもく。大臣以外の官職を任命する朝廷の儀式)で、藤原公任と藤原斉信は権大納言に、藤原行成は権中納言となります。

権大納言、権中納言の「権(ごん)」には「仮に、臨時の」といった意味があり、定員外に任命した役職であることを示す語です。そしてこの源俊賢と、藤原公任、藤原斉信、そして藤原行成の4人が後世に言う「一条朝の四納言」となったのです。彼らは、政務の実力や和歌・書などの見事さで名を馳せました。「寛弘の四納言」とも言われます。

「あれ?藤原実資(さねすけ:秋山竜次さん)は?」と思うかもしれませんが、このとき大納言だった実資は、のちに右大臣になり、四納言より格上の存在です。


【ビジネス雑談に役立つ「四納言」「四天王」にまつわる「雑学」】

■「四納言」の「由来」は?

「四納言」という言葉は、鎌倉時代中期の教訓説話集『十訓抄(じっきんしょう、じっくんしょう』に由来します。漢の高祖の時代に実在し王朝樹立に重要な役割を果たした「四皓(しこう)」という4人の長老になぞえられたとされています。

■似たような言葉で「四天王」は何に由来する?

「四天王」はもともと、仏教の言葉で、 帝釈天(たいしゃくてん)に従い、須弥山(しゅみせん)の中腹に住む四天の守護神を指します。四天とは、持国天(じこくてん)・増長天(ぞうちょうてん)・広目天(こうもくてん)・多聞天の(たもんてん)という4人の神さまの総称で、それぞれ東、南、西、北を治め、仏法を守護し、国家を鎮護するといわれています。ここから転じて、「四天王」は、臣下や門弟、またはある特定の方面で「最も優れた四人」を表す言葉になりました。

例えば「織田四天王」と言えば、柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、明智光秀、「徳川(三河)四天王」と言えば、徳川家康の家臣の酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、井伊直政。「ものまね四天王」と言えば、コロッケさん、清水アキラさん、ビジーフォーさん、栗田貫一さんです。

■「4人組」と言えば、誰を連想する?

「4人組」と聞いて連想するのは、少し上の世代なら、「ビートルズ」でしょうか。世界的に超有名なロックグループですが、活躍したのは1960年から70年までの10年間。ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは亡くなっていますが、リンゴ・スターとポール・マッカートニーは健在です。現代の日本に目を移すと、Mr.Children、GLAY、ウルフルズ、エレファントカシマシ、スピッツ、BUMP OF CHICKEN、Official髭男dismと、数多くの音楽グループが思い浮かびますね。「忌み数」とも言われがちな「4」ですが、以外に安定感のある数字なのかもしれませんね!

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ドラマ『光る君へ』では、時の権力者である藤原道長を中心に、「四納言」と称される4人が顔を揃え、意見を交わすシーンがたびたび演出されています。上地雄輔さん演じる藤原道綱(道長の義兄)が「四納言」に入らなかったのは、やはり実務者としての能力と、和歌や漢詩などの知識や才能に、かなりの差があったためなのでしょう。

11月も半ばを過ぎて、ドラマもいよいよ佳境を迎えます。私たちに平安文化への扉を開いてくれた物語の行く末を、もうしばらく見守っていきましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『平安 もの こと ひと 事典』(朝日新聞出版) /NHK大河ドラマ・ガイド『光る君へ 完結編』(NHK出版) :