連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、出版社「クオン」の代表取締役、ならびに東京・神保町で韓国書籍専門の書店「チェッコリ」を営む、店主の金 承福さんにインタビュー!

代表取締役を務める出版社ではいち早く、ノーベル文学賞を受賞した女性作家ハン・ガンさんの本を4冊刊行するなど、ますます注目が高まる韓国文学の世界で、次に金さんが掲げる目標とは?詳しくお話しをうかがいました。

金 承福さん
出版社「クオン」代表取締役、韓国書籍専門書店「チェッコリ」店主
(Kim Seungbok)ソウル芸術大学文芸創作科卒業後、来日。日本大学芸術学部文芸学科で学ぶ。1997年に東京の広告会社に就職し、’00年にweb制作関連会社の社長に。’07年出版社「クオン」設立。’11年、日本で翻訳・出版される韓国書籍の情報発信をする「K-BOOK振興会」を発足。’15年にブックカフェ「チェッコリ」開店。

【Tokyo】ハン・ガン作品を日本にいち早く紹介、韓国と日本を文学の力でつなぐ

出版社「クオン」代表取締役、韓国書籍専門書店「チェッコリ」店主の金 承福さん
出版社「クオン」代表取締役、韓国書籍専門書店「チェッコリ」店主の金 承福さん

東京・神保町のビルにある韓国書籍専門の書店「チェッコリ」。金さんが代表を務める出版社「クオン」が営むスペースで、こぢんまりした店内は、連日、多くの人で賑わう。近年ブームが続いていた韓国文学は、女性作家ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞を機に、いっそう注目が高まっていて、金さんも「昨秋はすごく忙しかった」と笑う。

「私たちはハン・ガンさんの作品をこれまで4冊刊行しています。’07年に出版社を立ち上げて、『新しい韓国の文学シリーズ』の第一弾として彼女の代表作である『菜食主義者』を出版したのが’11年でしたから、先見の明があった…っていうわけではなくて(笑)、とにかく、文学が好きな人に刺さるものを紹介していく、と創業当初から決めていたから」

韓国南部の街で生まれ育ち、ソウル芸術大学で現代詩を学び、卒後後、1991年に来日。日大芸術学部で学んだ。大学時代には留学生に声をかけて翻訳サービスを展開したり、卒業後も広告代理店でweb関連の新事業を立ち上げたり。

外国人であること、実績がないことなどハンデばかりで、「話をもっていった先でよく『どうしてそれをあなたがやるの?』って不思議がられた(笑)」けれど、「韓国や海外にはあるけれど日本にはないもの、あったらみんながハッピーになるものをつくるのは楽しいし、私は楽しいことが好きなので。韓国文学の仕事を始めたのも、子供の頃から本が好きで、おもしろそうだと思ったから。生きるって、その繰り返し。私はそう思います」

イベントや韓国へのツアーなども次々と発案し、実現させる。参加者が喜んでいる顔を見るのがなによりもうれしい。次の目標は、日韓の文化人の寄稿による文芸誌の創刊。

「日本と韓国の間に立っている者として、実現したい夢。ハン・ガンさんにもこれは以前から話してあって、始めたら10年間はやるよ、と約束しています。応援されて、応援して。人類はずっとそうやってきたでしょう?」

◇金 承福さんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
窓を開け、ベランダに出て、大きく体を伸ばす。気持ちがおおらかになります。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
お客さんからの「ありがとう」がやっぱりいちばんうれしい。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
ひたすら恋愛小説を読む。仕事の情報収集のためではなく、感情移入しながら読書に没頭したい。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
人前で楽器を演奏しながら歌えるようになりたいので、ギターを練習したい。
Q.10年後の自分は何をやっている?
今と変わらず、楽しいと思うことをしている。
Q.自分を動物にたとえると?
ライオン。だから肉食。みんな私に「健康のために野菜も食べろ」って言うけれど、野菜を食べるライオンなんていないでしょう?(笑)。

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PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
剣持亜弥