連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、スペインでハモン(生ハム)をカットする専門の職人として活躍するラケル・アコスタさんにインタビュー!

女性初の全国大会優勝者となり、一躍有名人となったラケルさんが次に掲げる目標とは? じっくりお話しをうかがいました。

ラケル・アコスタさん
ハモン切り職人、「ハモンバー ペカド・バケイラ」経営
シェフを目指して仕事を探すなかで、ハモンの産地サラマンカの専門店に就職。ハモン切り職人の国内チャンピオンを師匠として4年間修業した後、独立し、マドリッドに拠点を移す。インスタグラムをきっかけに注目を集め、現在はハモンに特化したバルを経営するなど経営者としても活躍。国内外のガストロノミー関連受賞経験も豊富。

【Madorid】「生ハムを切り、世界を旅する」職人として、経営者として、挑戦は続く

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ハモン切り職人であり、「ハモンバー ペカド・バケイラ」を経営するラケル・アコスタさん

スペインにはハモン(生ハム)をカットする専門の職人がいて、コンクールも開催されている。ラケルさんは女性初の全国大会優勝者となった有名人だ。ナイフを自在に操り、大きな骨付きブロックからハモンをスライス、皿に並べていく。存在感のある佇まいとエレガントな動きに、誰もが惹きつけられる。

「マラガ出身のデザイナーにオーダーしたオリジナルのユニフォームを着ています。肩を強調したデザインで、腕の動きが象徴的なシルエットを生むように考えられているんです。盛りつけの美しさも、切る速さも重要ですが、私と他の人との最大の差別化は “女性である” こと。ユニフォームに身を包んだ女性がハムを切る。そのインパクトです」

ハモン切り職人=コックコートやホールスタッフの制服を着た男性、というイメージを大きく変えたラケルさんは、’23年に会社を立ち上げ、次々と挑戦を続けている。

「社員を抱えた以上はイベントがないから仕事がないというわけにはいかないので、今、新しいプロジェクトを立ち上げています。高級スキー場のバケイラ・ベレーにハモンバルをつくっているんですよ。かつては『大好きなハモン切りをしてお金までもらえるなんて!』と、筋金入りのワーカホリックだった私ですが(笑)、働き方についてもいろいろと学びを得て、去年とうとう、スタッフのシフトやイベントをうまくマネージメントすることで、『土日休み』という飲食業界では贅沢な夢を実現することができました。今後は学校経営も考えています。この業界全体にもプラスになることをやっていきたい」

女性たちを励ましていきたい、とも語る。

「この仕事のいちばんの魅力は、旅をしてさまざまな人々と接することができること。私もスペイン国内だけでなく、ヨーロッパ各国、中国や中南米にも何度も旅をしました。生ハムを切ることをきっかけに、女性もどんどん世界へ出て、学んでほしいと思っています」

◇ラケル・アコスタさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
起きてすぐ走ったりジムに行ったりして体を動かした後、読書をする。朝は頭の中が真っ白な紙の状態なので、その時間を大切にしている。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたからインスピレーションを受けた」
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
実家に帰って、家族と過ごす。兄弟姉妹15人で、私は上から2番目です。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
ワインについて学びたい。
Q.10年後の自分は何をやっている?
地元で “ハモンバー” を開き、モデルケースをつくって、ほかの都市にも広めていたい
Q.自分を動物にたとえると?
妹とお揃いでアリのタトゥーを入れています。自分の体重の10倍の重さも運ぶことができるアリのように強くなりたい。

PHOTO :
Javier Peñas
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、木村 晶・喜多容子(Precious)
取材 :
Yuki Kobayashi