季節の変わり目のなかでも特に冬から春にかけては、寒暖の差が激しく心身に不調が現れやすい時期。来るべき新年度をベストコンディションで迎えるためにも、温泉でじっくり自分を労りたいと考えている人は多いのではないでしょうか。

そこで、冬の名残を惜しむのにも好適な東北の名宿を温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、岩手県花巻市にある「藤三旅館・別邸 鉛温泉 心の刻 十三月」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

レトロとラグジュアリーが融合した湯宿で希少な足元湧出温泉を満喫する

岩手県花巻市・奥羽山脈の中腹に佇む「鉛温泉 藤三旅館」。開湯から600年以上の鉛温泉の湯を独占し、宿自体も200年以上の歴史を誇る老舗で、全国から湯治客が集います。今回ご紹介するのはその別邸にあたる「心の刻 十三月」。全14室が源泉かけ流しの露天風呂を備えたラグジュアリースイートの湯宿です。

「心の刻 十三月」の玄関
「心の刻 十三月」の玄関。
「心の刻 十三月」の外観
全室が60平米以上のリバーヴュー。清流・豊沢川のせせらぎや四季折々の景観にも癒される。

「『藤三旅館』は、名物『白猿の湯』が日本一深い岩風呂として知られる湯自慢の宿。本館と別邸は廊下でつながっていますが、レトロな本館とモダンシックな別邸とがまるで別世界なのが何ともユニークです。別邸の客室で優雅に寛ぎつつ、日本屈指の名湯が待つ本館にも自由に行き来できるのは得難い貴重な体験だと思います」(植竹さん)

「白猿の湯」
日本一深い岩風呂として知られる「白猿の湯」。職人たちが人力で造り上げた建築美も必見。

「本館の『白猿の湯』は、湯船の深さが平均1.25メートルもある立居浴専用の岩風呂。高い吹き抜けの風情のある湯屋も圧巻ですが、湯も秀逸です。といういのも、『白猿の湯』は足元から湯がこんこんと湧き続ける全国でも希少な足元湧出温泉。一度も空気に触れていない生まれたてのピュアな温泉に立ったまま入浴するというレアな体験で湯の鮮度に感動しました」(植竹さん)

桂の湯
別邸のゲストは本館にある4浴場とサウナを利用可能。写真は露天風呂「桂の湯」。
サウナ
宿にゆかりのある宮沢賢治の世界観をモチーフにしたサウナ。

「客室の温泉で、人目を気にせず湯浴みできるのも贅沢の極み。こちらも源泉かけ流しで、新鮮で肌なじみのよい湯にしみじみと癒されます。雰囲気が大きく異なる本館と別邸で湯巡り気分を堪能できて心身のリフレッシュを十二分に叶えることができました」(植竹さん)

客室の一例
客室はそれぞれ間取りやインテリアが異なる。ベッドは「シーリー」製。
客室の露天風呂
客室の露天風呂。

湯上りに至福のひとときを!2か所のラウンジで心身を解きほぐす

「心の刻 十三月」には、ゲストが無料で利用できるラウンジが2つあります。まず、本館の一角にある「藤時(フジ)」は、川のせせらぎや鳥のさえずり、移り行く季節を身近に体感できるスペース。清流・豊沢川に迫り出すような造りは、現在では河川法の定めにより建築不可だとされていますが、本館の旧広間をリニューアルすることで独特の空間美が実現しています。

ラウンジ「藤時」
川に迫り出すように作られた「藤時」。

もうひとつの「ロビー・ラウンジ」は、ソファやテーブルがデザイナーズ家具で揃えられスタイリッシュなムード。夜はピアノの生演奏があり、グラスを傾けながらムーディーな寛ぎ時間を過ごすことができます。

ロビー・ラウンジ
シックな「ロビー・ラウンジ」。

「14の客室数に対して、ラウンジが2か所あるのはきめ細やかなおもてなし。15時から18時の時間帯にお酒とソフトドリンクのフリーフローのサービスがあるのもうれしいポイントです。湯上りなどに気ままに立ち寄り、優雅な非日常気分にひたることができました」(植竹さん)

夕食
夕食は日本料理の伝統を礎に、季節の厳選素材で腕を揮う彩り鮮やかな会席料理。
朝食
品数が豊富な朝食。メインの「ひっつみ(小麦粉を練った生地、肉、野菜を煮込んだ汁物料理)」は栄養バランスがよく、おいしさと健康を兼ね備えた郷土料理。

以上、「藤三旅館・別邸 鉛温泉 心の刻 十三月」をご紹介しました。源泉かけ流し露天風呂付きのラグジュアリースイートに滞在しつつ、希少でレトロな足元湧出温泉の魅力にもひたりたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)