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「ドン ペリニヨン」ソサエティでの「été」との特別なコラボレーションコースの1品から。

繊細さと大胆さ、知性とセンシュアリティ――。相反する性質を併せ持ち、なおかつエレガントで奥深さを感じさせるのが「ドン ペリニヨン」の大きな魅力。グラスを手にするたび、まるで虹色の迷宮に迷い込んだような、そんな感覚を覚えます。造られるのはヴィンテージ(単一年)のシャンパーニュのみで、その年の天候などの自然が優美に表現されているのが特徴。

たとえば、最新ヴィンテージ「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2015」は、醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏曰く温かく乾燥した年で、味わいにはどこかエキゾティックな印象も。爽やかな柑橘とバラや芍薬のフローラルなアロマの奥にスパイスやハチミツのニュアンスを感じさせ、その香りにうっとり。豊かな果実味には清らかな酸が美しく溶け込み、グラスを手にする人を一瞬にして幸福に誘います。

「2015年らしいブドウの甘やかさ、メロウなニュアンスを楽しんでいただけると思います。また、感じていただきたいのが滑らかな泡のテクスチャー。これもまた、ヴィンテージの特徴を表すものだと思っています」とシャプロン氏。

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庄司シェフがシャンパーニュで最も注目するのが泡。「ドン ペリニヨン」の泡は細やかでなめらか。

この美しいシャンバーニュ「ドン ペリニヨン」の世界観を、著名なシェフやソムリエたちとともに追求し、さらなる高みへ昇華することを目的として5年前に結成されたのが「ドン ペリニヨン ソサエティ」です。年に何度か世界中からメンバーが集まり、シェフたちの料理とともに「ドン ペリニヨン」を楽しみつつ、ディスカッションを行うというもの。最高のマリアージュへ導くための素材の選び方や生かし方、シャプロン氏からのシャンパーニュのレクチャー、そして未来のために今なすべきことなど、その題材は多岐に渡ります。「ドン ペリニヨン」から生まれる究極の美食を探究しつつ、新しい世界を構築することが理念の軸となっています。

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ドン・ピエール・ペリニヨン修道士のレリーフ。今もシャンパーニュ造りの達人として、現地でも尊敬を受ける存在。彼のワインは評判で、ルイ14世のもとにも届けられていた。

メゾンが庄司夏子シェフを「ドン ペリニヨン ソサエティ」に招聘したのは、なにより、シャプロン氏が庄司シェフの芸術的なまでに美しい料理に「ドン ペリニヨン」との共通性を見出したことが大きな理由でした。

「世の中には、その人でなければ表現できないアートがあります。私は、それを彼女の料理の中に見出しました。しかも、彼女の料理からはインテリジェンスが感じられた。芸術的でありながらも、フランス料理としてオーセンティックで、素材を生かしていた。彼女となら、将来のファインワインとは何か、ガストロノミーとは何かを語り合える、ともに高みを目指せると確信したのです」とシャプロン氏。

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醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏。1999年に「モエ・エ・シャンドン」入社、2005年に「ドン ペリニヨン」チームの醸造家補佐に。2019年より現職。大の親日家でもある。

では、メゾンからこのオファーを受けた時の庄司シェフの心境はどんなものだったのでしょう。庄司シェフは柔らかな笑顔でこう語ります。

「実は、『ドン ペリニヨン』は一番好きなシャンパーニュでしたので、『やった!』と心の中でガッツポーズを取りました(笑)。料理人として働き始めた頃からドン ペリニヨン一筋でした。その大きな理由は”オリジナリティ”です。ブドウの作柄がよい年にしか造られず、ボトルの中にはドン・ピエール・ペリニヨン修道士の哲学が今も生きている。ソサエティの一員に加えていただいたことはとても光栄で、感謝しています」。

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「été」オーナーシェフ 庄司夏子氏。2014年、パティスリー「Fleur d'eteをオープン、芸術的に美しいスイーツで脚光を浴びる。15年、レストラン「été」オープン。20年に「アジアのベストレストラン50」で日本人女性初の「アジアの最優秀ベストリーシェフ賞」、22年同賞で「アジアの最優秀女性シェフ賞」受賞。

また、庄司シェフがシャンパーニュを開ける際、最初に注目するのが”泡の強弱”だと言います。

「私は、シャンパーニュの泡にはカリスマ性があると考えています。その泡が強いか、柔らかいかでマリアージュの方向性が決まります。泡が滑らかで柔らかければ、すべての料理の質感に合い、料理全体を包んでくれる。『ドン ペリニヨン』の泡はテクスチャーも滑らかなので、開けた瞬間から自然に料理とマリアージュしてくれます」と庄司シェフ。この言葉を受けて、シャプロン氏はこう語ります。

「泡の数はボトルの中の圧力によって変わります。ですが、そういった数学的なものより、泡が与えてくれるセンセーションや感性のほうが大切と、私は思います。彼女の泡はカリスマ性があるという言葉には100%賛成です(笑)」。

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庄司シェフのシグネチャーともいえる「フルール・ド・エテ(マンゴー)」。とろりとした食感は、庄司シェフの食材を見極める目があってこそ。

ここで思い浮かんだのが、庄司シェフの代表作ともいえるバラの花を模ったマンゴーをフラワーボックスに仕立てたスイーツ「フルール・ド・エテ(マンゴー)」でした。完熟マンゴーの繊細な甘さととろりとした食感が、シャプロン氏の言葉であるセンセーションや感性が五感を通して理解できるのです。そして気づくのか、庄司シェフの美しい料理をいただいた後に自分の中に華やいだ感情が生まれてくること。最高峰のシャンパーニュと優美で麗しい料理のマリアージュはファンタジーに満ちて、お姫様気分を味わわせてくれます。そして、このファンタジーを生み出したのは、シャプロン氏と庄司シェフの素材を見極める目と素材に対する敬意にほかなりません。

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オーヴィレール大修道院。かつて、ここでドン・ピエール・ペリニヨン修道士は神に祈りを捧げながら、ワイン造りを行っていた。修道院は一般見学可。 (C)James Bort

かつて、シャプロン氏はこんな話をしてくれました。

「ワイン(シャンパーニュ)は、宇宙と大地の間に生まれる最も美しい飲み物だと、私は思います。私たちは常に自然に敬意を払い、自然の声を聞きながらシャンパーニュを造らなければいけないと思っています」。

そして今回は、こんな素敵な言葉も。

「ラグジュアリーの価値観は時代によって変わります。今の時代は、自然を深く理解し、自然に寄り添って生きることが、最もラグジュアリーな生き方なのではないでしょうか。私にとって『ドン ペリニヨン』を造ることは、自然と人間とのハーモニーを探究する永遠の旅路のようなもの。私たちは、これからもより高みを目指して、輝く星に手を伸ばし続けていきます。その思いを未来に繋ぐことこそが『ドン ペリニヨン ソサエティ』の使命だと思っています」。

日常において美味しいマリアージュを体験することは多々ありますが、哲学的な美しさを感じさせるマリアージュに出合えることはなかなかありません。大人だからこそ理解できる特別なものだからこそ、大切な友人や志を同じくする仕事仲間と楽しんでみたくなります。「ドン ペリニヨン」と庄司シェフの料理のマリアージュは、きっと新しい美食の扉を開いてくれることでしょう。

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「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2015」。ジャスミンや菩提樹などの華やかなアロマの中にアニスやカルダモンのスパイス。繊細かつ芳醇な果実味と透明感に満ちた酸味。750ml ¥39,820(ボックス付き)

安齋喜美子さん
ワイン&フード ジャーナリスト
ワイン専門誌やファッション誌などでワインやレストラン、ホテル、旅、お取り寄せなど幅広く執筆。海外のワイナリーや星付きレストランの取材も多数。著書に『葡萄酒物語』(小学館)、『ワイン迷子のための家飲みガイド』(集英社)。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。“お洒落系ワイン女子”を増やすべく、日々奮闘中。

※掲載商品の価格は、税込みです。

問い合わせ先

MHD モエ ヘネシー ディアジオ

TEL:03-5217-9777

WRITING :
安齋喜美子