お酒のつまみにも洋食のつけ合わせにもぴったりな、ポテトサラダ。ときどき無性に食べたくなることがありませんか? お店のメニューにあると「とりあえずポテトサラダ!」と、つい注文してしまう人も多いはず。

そんなふうに日本人にとって馴染み深く、また、いつどこでどんなふうに食べても安定感があるため、ポテトサラダについて深く考えたことのある人は、あまりいないかもしれません。でも、実は「これおいしい!」と感じられるポテトサラダにはいくつか特徴があり、また、その味わいをより堪能するには食べ方にもコツがあるのです! それを知らないままポテトサラダを食べるなんて、人生の半分は損しています。

タベアルキストでポテトサラダ学会会長でもあるマッキー牧元さんから、最高においしいポテトサラダを食べるための条件を教えていただきました。おいしいポテトサラダの特徴と食べ方という2つの観点から、合計6つの条件をご紹介します。ぜひ、今までのポテトサラダのいただき方を見直しましょう!

■最高においしいポテトサラダの3つの条件

(1)芋の香りや味わいが生きている

やっぱり芋が主役
やっぱり芋が主役

ポテトサラダの主役は、なんといっても“芋”。芋の香りや味わいが生きていることが、おいしいポテトサラダの第一の条件です。

素材の芋の種類によって、ポテトサラダの趣も変わりますが、どれをおいしいと感じるかは各人のお好みしだい。スタンダードな男爵芋はほくほく、メークインならねっとり食感で、それぞれのよさがあります。また、お店によっては、男爵芋とメークインをMIXしたり、さらに、さつまいもを加えたりで、一皿でバリエーションを楽しめるように工夫を凝らしていることも……。

ちなみに、今の季節には新じゃがいもが多く出回っていますが、ポテトサラダの素材としては、新じゃがよりも普通のじゃがいものほうが「甘みがある」という点で、おすすめなのだそう。そして、ポテトサラダには、ポテトのゴロッとした食感を残したものと、マッシュポテトのようにしっとりなめらかなタイプがあり、どちらがおいしいかは意見が分かれるところ。

「私はどうしても、こっちのタイプ!」というこだわりがなければ、全体的にはなめらかでありつつ、一部にポテトの食感を残したポテトサラダで、“しっとり”と“ゴロッ”の両方を味わうといいでしょう。

(2)マヨネーズなどの味つけが、お店の雰囲気とマッチしている

お店ごとに個性豊かなポテサラ
お店ごとに個性豊かなポテサラ

芋の香りや味わいが生きているポテトサラダがおいしい……ということは、マヨネーズや塩こしょうなどの味つけは控えめなほうがいいかというと、一概にそうとは言い切れないようです。

「味つけは何がいい悪いかというより、お店の雰囲気と合っているかどうかが大事。たとえば、庶民的な居酒屋で食べるのであれば、味付けが濃くて、ジャンクな感じのポテトサラダがおいしいでしょう。他方、洋食屋のポテトサラダでは、自家製のマヨネーズを使うなどして、上品に仕上げているものもあります」(マッキー牧元さん)

お店の雰囲気と一緒に味わうというのも、ポテトサラダの醍醐味といえそうですね。

(3)芋「以外の具材」がそれぞれの役割を発揮している

ポテトと卵との相性は抜群
ポテトと卵との相性は抜群

ポテトサラダに必須の具材といえば、まずはきゅうり。塩もみして余分な水分を抜き、薄切りにしたきゅうりは、ポテトサラダにアクセントを加えてくれます。玉ねぎもきゅうり同様、食感をプラス。他方、にんじんは彩り担当。いちょう切りのにんじんは、ポテトサラダの見た目を華やかにしてくれますよね。そのほかに、ポテトサラダに欠かせない具材といえば……?

「個人的にはみじん切りにしたゆで卵も好みの具材です。黄身と白身それぞれの味わいが、ポテトサラダのおいしさをより引き立ててくれます」(マッキー牧元さん)

ぜひポテトサラダを食べるときは、芋の香りや味わい、マヨネーズなどの味つけ、芋以外の具材について、事前に確認してみてくださいね。


■最高においしいポテトサラダの3つの食べ方

では、上記で紹介した“最高においしい”条件を満たすポテトサラダの味わいを、より堪能するためにはどうすればいいのでしょうか?

(1)「はじめのひと口」はポテトをしっかり味わう

まずは芋の風味を確認
まずは芋の風味を確認

まずは、お皿を手に取って、顔に近づけて芋の香りを確かめる。それから、はじめのひと口は芋の部分だけを取って、ポテトの風味をしっかり噛みしめましょう。

(2)「ふた口目」からは、ほかの具材とのハーモニーを楽しむ

どんな料理やお酒とも合うポテトサラダ
どんな料理やお酒とも合うポテトサラダ

ポテトの香りや味わいを確認したあとは、食べ方は基本的には自由。ただ、できればひと口分にポテトときゅうり、玉ねぎ、にんじんといった具材がバランスよく混じるように箸にとり、万遍なく食べ進んでいくのが望ましいです。

(3)食器にポテトサラダが一切残らないように、最後はスプーンで食べる

最後まで残さず食べ尽くしたい
最後まで残さず食べ尽くしたい

3つめのポイントは、これぞポテサラをこよなく愛するマッキー牧元流! ポテトサラダはお皿の表面がきれいになるまで余さず食べ尽くしましょう。

「ポテトサラダはどうしても食器にくっついて残ってしまいますよね。そのくっついた部分は、僕は指で拭って食べるんです。女性の方には、スプーンやフォークを使ったり、あるいは、西洋料理で皿に残ったスープやソースを拭うのと同じように、パンで拭いとったりすることをおすすめします」(マッキー牧元さん)

言われてみれば、“フタの裏についたアイスクリーム”っておいしいですよね。T.P.O.にもよりますが、器に残された部分まで、ポテトサラダを味わってみては?


■最高においしいポテトサラダが食べられる名店3軒

さらに、マッキー牧元さんから、イチ押しのポテトサラダが食べられる東京都内のお店も教えていただきました。

(1)青山ぼこい[表参道駅]

創業が昭和43年という割烹・小料理屋「青山ぼこい」のポテトサラダは絶品。芋の香りを楽しめるオーソドックスなタイプのポテサラですが、市販のマヨネーズに卵黄を加えたり、炒めたベーコンの油を隠し味にしたりなど、細部までこだわりが効いており、グルメ雑誌で“世界一のポテトサラダ”と絶賛されたこともあるほど。

(2)シャンクス[参宮橋駅]

参宮橋駅近くのバー「シャンクス」の「スモーキーポテトサラダ」は、大人味のポテサラ。いぶりがっこ(燻製乾燥した大根を使った秋田名産の漬物)と燻製したポテトチップスを加えることで、その名の通りスモーキーな風味と独特な食感を楽しむことができます。基本的に、ポテトサラダはどんなお酒とも合いますが、特にこちらのポテサラはモルトウイスキーとの相性が抜群!

(3)花とら[代々木公園駅]

代々木公園界隈にある居酒屋「花とら」で提供している「いも芋サラダ」は、いわば二刀流ポテサラ。じゃがいもとさつまいもの両方を使っているのです。もともと冗談で出したところが、反響がよく定番メニューになったのだそう。複数の芋を使うことで少し甘みのある複雑な味わいを楽しむことができ、ビールや日本酒との相性も最高!

名店の紹介でも少し触れたので、最後にポテトサラダに合う飲み物や食べ物についても尋ねてみました。

「ポテトサラダは、ビールに日本酒、ワイン、ウイスキー、どんなお酒にも合う懐の広い食べ物です。また、料理についても、ご飯以外なら何でもありだと思います。強いて挙げるなら、レタスに巻いたり、薄切りハムに巻いたり、パンに乗せたり……。あとは、ポテトチップスやトルティーヤチップスなど、パリパリ食感のものに合わせると、コントラストが楽しめると思います」(マッキー牧元さん)

どんなお酒や料理とも合うという点もまた、ポテトサラダの魅力だといえるでしょう。家庭的でほっこりするものもよし、目からウロコが落ちる斬新な創作系もよし、これからもポテサラの進化から目が離せませんね。

マッキー牧元さん
ポテトサラダ学会会長
(まっきー・まきもと)音楽制作会社在籍中から食べ歩きを始め、現在はフリーランスの「タベアルキスト」。『味の手帖』をはじめ、多くのグルメ雑誌で執筆を手がける。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)などがある。
『ポテサラ酒場』マッキー牧元・監修 辰巳出版刊
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美